第18話 再施術。
ヴァンは目を丸くしながらセレナを見て、「ありがとうセレナ」と言う。
「えへへ。どういたしましてだよ」と返すセレナに、「俺は生きるよ。リットの分も生きる」と言うと、コーラルが「ヴァン?」と何があったかを聞く。
ヴァンは微笑み返すだけでファンを見て、「父さん、腰治してあげようか?大サービスで5ゴールドね」と悪い笑顔で言って、腰をさするファンが「クソガキ!金取る気かよ!」と文句を言う。
そのままユーナを見て「ありがとうユーナ。ユーナも怪我だらけなのにありがとね」と言うと、ヘマタイトを見て「倍くらい歳離れてるけど友達でいてくれてありがとうヘマタイト」、「ペリドットもありがとう。王都の魚料理行こうよ。イイヒート・ドデモが、アメジスト婦人の為に用意したお店に行こう」と言い、シャヘルには「シャヘル、気づいてないの?多分、今のシャヘルは真式になってるよ?ありがとね」と言葉を送る。
コーラルがもう一度「ヴァン?」と聞くと、ヴァンは照れた顔で「コーラル、俺もコーラルのいない世界は嫌だよ」と返してから、「セレナにコーラルの施術を見せて貰ったよ。ありがとう」と言うとコーラルは真っ赤になって「セレナ!?何やってんのよ!」と怒る。
セレナが「えへへ。だってコーラルとヴァンの仲が深まると、更に強い無限魔水晶が作れるんだよ?見せてあげなきゃ〜」と言ってニコニコとすると、ヴァンは「コーラル、ありがとう。俺は更にやる気になったよ」と言った。
ヴァンの言葉に顔を赤くするコーラルは「一個聞いて」と言う。
「何?」
「今までは私の中のリットさんが仲良くしたがってたの」
「うん」
「でも今私の中を見てもリットさんを感じない」
「うん。俺の所に来てズルをして飛んでいったからね」
「でも私は仲良くしたいって思ってるの」
「うん」
「うんって!」
「だってわかるよ。顔に書いてあるよ」
「わかるの?」
「わかるよ。だって器用貧乏なんだろ?」
ヴァンはベッドを降りると「母さんご飯」と言って、コーラルに「無限魔水晶作ってよ」と頼み、食事の間に「ちょっとだけ」と言って「召喚術…、リット・ガイマーデ」と呼ぶと、目の前にはコーラルと合わさって15歳になっていたリットが表れて、「お兄ちゃん、呼んだの?」と呆れる。
「来てくれてありがとう。記憶の継承が可能なのかと、術消費が知りたくて、お試しに使ってゴメン」
「もう、仕方ないなぁ」
ファンとヌーイはリットを見て「マジかよ」「リット!」と喜んでいる。
ヴァンはリットの背中を押して、「父さん、母さん、時間ないから適当に話して」と言うと、真剣な顔で集中する。
ペリドットが「ヴァン?」と声をかけると、「これ、集中力と術消費が半端ない。真式用の術だ」とヴァンが漏らす。
「なら俺たちがやるか?」
「ダメだよ。ユーナ達は強いんだから戦ってよ。俺向きの仕事だよ」
ユーナと話しているとヴァンの頭に拳骨が降りてきて、「ありがとよ!さっさとリットを寝かしてやれ!」と言われる。
ファンもヌーイも目が赤い。
多分泣いていた。
いい事をしたと思っているヴァンに、ファンが「お前の飯、リットに食わしたから」と言う。
「え!?なんで!?」
「久しぶりだからだな。自業自得だ」
ファンに言われてヴァンは肩を落とすと、「コーラル、無限魔水晶作りながらクッキー出してよ」と言う。
「まったく、天気予報だから可愛くないわよ」と言われて出てきたクッキーを食べ終わると、「リット、またね」と言って召喚術を終わらせる。
「うん。バイバイお兄ちゃん」と言って消えたリットを、ヴァンは再び呼ぼうとして、「ダメか、一度呼ぶと次に呼ぶまでは時間がかかるんだな…。思案したいのに無限記録盤が邪魔する」とボヤいて、「母さん、ご飯は無理でもなんか頂戴」と言ってテーブルに突っ伏した。
セレナとペリドットが呆れながら外に行って串焼きを買ってくると、それを食べて「生き返る〜」と喜ぶヴァン。
「まあ文字通り生き返ったしな。それにしてもミチトのアースランスをウォーターボールで防ぐとか、よくやるのな」
「本当!感動したよ!」
「にひひ。昔コーラルがサンゴだった時に使ったアースランスが見事だったから、中央室で使い方を見た時に対応策を考えといたんだよね。一瞬で雨の日みたいにするのがポイントだよ」
その後、コーラルが用意した無限魔水晶を受け取ると「サンキューコーラル!ありがとう!」と言う。
コーラルは微妙な顔をしているが、ヴァンは何も言わせないように「コーラル、ドウコの材料でケーキ作ってよ。お世話になったし、ベッドを汚したから信徒の人達にもプレゼントしてね」と言う。
「はぁ?」
「俺の飯、リットに食われちゃったしさー」
これにシャヘルとヘマタイトも、「じゃあやるか」、「そうですね」と言ってくれる。
ヴァンは「サンキュー」と言うとそのまま集中を始める。
「見ててね。ジーフー。あなたの考えは凄いよ」と言ったヴァンは、自身の掌を見て「心眼術!俺を白!無限魔水晶を俺の術で白くする!」と言うと真剣に術を送り込む。
「よし、同化する」と言ったヴァンは、「じゃ」と言って皆に手を振ると無限魔水晶の上に寝そべり同化をする。
「ぐ!?」と苦しげな声を上げたが、「お前も俺だし、俺の中にあるのはコーラルに貰った力だ。お前達もコーラルが俺のために生み出してくれた。共存だ」と言って集中しながら施術を行う。
ふとヴァンが声を上げなくなると穏やかな寝息を立てる。
「成功?」
「心眼術で見る限りは成功してますね」
「ならここは俺とセレナが居るからスイーツを作れ」
「ユーナってコーラル達と会って甘党になったよね」
ユーナの声に合わせてコーラル達が台所に向かうと、信徒達の感激する声が聞こえてくる。
ケーキが焼き上がる頃に、ヴァンは「いてて…無理しすぎたかな?」と言って起き上がり、ユーナから「無理?」と聞かれたが、「コーラルには内緒ね。友達だろ?頼むよ」と言われてしまい何も言えなくなる。
外に出てオルドスに声をかけると、「本気のコーラルが施術した模真式が、そのポテンシャルを全て使って単独で真模式になったんだ。体内の無限魔水晶が大きすぎて、貯まる術に身体が蝕まれている。相当な痛みのはずだよ」と返される。
血相を変えて「おい!ふざけるな!ヴァンは!」とユーナが言うと、オルドスは「真模式として、自身に何が起きているかは気付いているよ。でも勝つ為にはヴァン君が必要で、彼は止まらない。ユーナ・スティエット、君にできるのは彼の負担を減らして、彼をサポートする事だ。トレーニングに関しても、ヴァン君が考えているから彼に従うんだ」と言った。
ユーナは「わかった」と言い、憤りながら戻ると、ヴァンは「美味い!」と喜んでケーキを食べている。そこにはとても辛そうな姿はない。
体調を心配するペリドットに「バッチリだよ〜」と笑っていた。
「セレナ、ヴァンは強いな」
「うん。心眼術でも見せない徹底ぶりだよ」
ユーナはセレナと念話術で話しながら「勝てないな」と漏らした。
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