第17話 無限術人間の創造。

コーラルはファンとヌーイの前に立って、「父様、母様、ヴァンをお任せください。彼を無限術人間にしてしまいますが、お許しください」と頭を下げる。


「ヴァンをよろしくお願いします。コーラル様」

「てかコイツは本当なら死んでるんですから、気楽に構えてくださいね。まったく皆さんの手を煩わせるなんて悪い奴ですぜ」


コーラルは嬉しそうに「はい」と言いながらもヴァンの前に立つと深呼吸をして、「ユーナ、おかしかったら教えて。この中で貴方だけが模式を持った身。頼りにしてる」と言うと、コーラルは「グラス、貴方もアゲートを助けた時にこの気持ちだったかしら?会って聞きたかったわ」と呟くと、「我が名はコーラル・スティエット!スティエットの名の下に、必ずヴァンを助ける!」と宣言をした。


「心眼術!ヴァンを赤!記録版に術を流す!同じ色になったら取り込みなさい!そして施術が終わったら終わったと言って!」

コーラルの施術は丁寧だった。


丁寧にセレナを生み出したはずのユーナが、手抜きを疑われるほどに丁寧だった。

無限記録盤を取り込んだヴァンに、「私の術を全部あげる!だから起きて」と言ってコーラルは溜め込んだ術の全てをヴァンに送る。


だがここで問題が起きた。

ヴァンのポテンシャルがコーラルの予想を上回っていて、コーラルの限界が近付いても終わる気配がない。


顔をしかめて「まずい…」とコーラルが呟くと、ヘマタイトが「大叔母様!愛の証の魔水晶を!」と言って持ってきた愛の証の柄を持って、「アクィさん。ごめんなさい」と言って術を回収する。


それでも足りずに、ヘマタイトが「僕の術を使ってください!直接ヴァン君に送るのはダメですが、大叔母様を介してなら!」と言ってコーラルに術を送ると、「後は任せます」と言って力尽きる。


それでも終わらない施術に、シャヘルが「化け物だな」と言うと、「真式でない事が悔やまれる」と漏らしながら、「次の準備を、ペリドットは俺の後を頼む。ペリドットの次はセレナだ。ユーナは最後まで見守ってやってくれ」と言って術を送り倒れる。


それでもヴァンは起きない。


ペリドットが倒れると、ユーナが「セレナ、セレナは模真式だから先に俺が潰れる。コーラル、1人でやれるな?」と言い、コーラルが頷くとユーナは全ての力をコーラルに渡して倒れる。


その都度別室に連れて行っていたファンは、「マジかよ。ヴァンの奴、許せねえ」と言って腰を痛めながらユーナを連れて行く。


「コーラル!私の番!」

「ううん。ギリギリまでやる。本当にピンチになったらお願い」


コーラルの言葉を聞いたセレナの耳には、オルドスの「ごめんね。見守ってあげて」の声が聞こえてきて、大人しく見守ることになる。


コーラルはセレナが居るのに2人きりの感じで、「ヴァン、早く起きて?」と言って泣きながら術を送り続けて、「貴方のくれたサンゴの名前も珊瑚の髪飾りも全部宝物、貴方とこれからも居たいわ」、「ミチトお爺様とアクィさんを見て、私も16歳でミチトお爺様のような方に会えるかと不安だったけど、私には貴方が居た、お爺様の書物にあった、あの言葉の意味が今ならわかる。ヴァン、貴方の居ない世界は嫌。起きて、これからもずっと一緒にいて?」と話し続ける。


限界近いコーラルは、息も絶え絶えで気絶寸前になりながらも、「ヴァン、助けるからね」、「待っていなさい」と言い続けながら術を送る。


そして最後に「コーラルお姉さん。ありがとう」とヴァンが言った声を聞いてコーラルは気絶をした。

コーラルにはヴァンの声が聞こえただけで、施術が終わったと思い込んで気絶していたが、セレナは女の子みたいな話ぶりに危険を感じてファンを呼ぶと、「あぁ?クソ面倒臭え。縛り上げとけばいいだろ?女みたいになってたらチンチン切り落としてやる!」と言いながらヴァンを縛り上げると、「嬢ちゃんも疲れたろ?肉食おうぜ」と言ってコーラルを連れて別室へ行っていた。

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