第16話 セレナが見たもの。

セレナがヴァンに見せたもの、それは自身がミチトに貫かれてからの出来事だった。


セレナの声掛けでコーラルは弱々しくヒールを使うが、とてもヴァンが助かるヒールには見えない。


「ユーナ!身体が辛くてもヒールして!」

セレナの声で、ファットチャイルドを杖代わりにしたユーナがヴァンの元に行くと、「退けコーラル!お前のヒールじゃ助かるものも助からん!」と言ってヴァンにヒールを送る。


セレナはその間にシャヘルとヘマタイトとペリドットを助けると、ユーナから「セレナ!愛の証を破片一つ見逃さずに拾え!」と言われて、真っ二つに割れた愛の証を拾う。


ペリドットが「おい!ここじゃあ助かるものも助からない!ラージポットに…」と言ったが、シャヘルが「オルドスは信用できない。ドウコにする。ヴァンもご両親に会いたいはずだ」と言って、そのままドウコに転移術を使う。


ドウコは騒然とした。

常勝無敗のスティエット家の末裔達がボロボロで、ヴァンは瀕死。


すぐに現れたファンとヌーイに周りには言わないで欲しいと伝えてから、敵がミチトを蘇らせている事を告げて、皆が口々にヴァンが居なかったら全滅だったと言い、今も泣いているコーラルが「助ける。私が助ける」と言い続けていた。


ファンは普段のろくでなしの顔から父親の顔になると、「よくやった。コーラル様達を守るなんて立派だ」と言ってヴァンの頭を撫でてから、「殴れば起きるんじゃね?」とろくでなしの顔で言うと、ヌーイが「それは起きたらにしなさいよ」と笑い飛ばす。



ヘマタイトが「シャヘル、ペリドット、セレナさん。僕も最大限努力します。大叔母様とヴァン君の為に力を貸してください」と言う。


「ヘマタイト?」

「大叔母様、ミチトお爺様に感謝をしましょう。今こそヴァン君専用の無限記録盤を使うんです。今から3時間、僕達は何が何でもヴァン君を死なせません。大叔母様は眠りについて限界値の更新をしてください」


「それってヴァンを…術人間に?」

「それしかありません。今もユーナがヒールを使ってくれていますが、傷が塞がる感じがしません。大叔母様、僕はヴァン君を失いたくありません。お願いします」


コーラルはわかったと言ったが、限界を迎えているのに眠れないと言う。

皆が困ると、ヌーイがコーラルの肩を抱いて部屋の隅に連れて行くと、壁際に座りコーラルを膝枕して、「リット、聞こえるのなら、コーラル様を眠らせてさしあげて」と言って子守唄を歌う。


「不思議、初めて聞くのに懐かしいです」

「リットの好きな子守唄ですよ。さあ、おやすみなさい」


コーラルはすぐにヌーイの膝で眠りに付く。


「ユーナ!私が代わる。皆は後半頑張って!」


セレナは「ヴァン!死なさないからね!私に生きる事を諦めるなって言うんだから、ヴァンも諦めないで!」と言いながらヒールを送る。


セレナがヘトヘトになると、ヘマタイトが「次は僕です」と前に出て交代すると、「君のお陰で僕達はここまで来ました。まだ途中です。離脱は認めません」と言ってヒールを使う。


その次がペリドットで、「死ぬなよな。お前が死んだらオッハーから出ないからな。早く終わらせてマ・イード観光しようぜ」と言う。


シャヘルは「お前1人の不在がこんなに心細いんだ。自分の価値を知って立ち上がってくれ」と言う。


セレナが「そろそろ3時間だね」と言いながらヴァンを見る。

ヴァンは今も傷口が塞がらないせいで、ベッドは血まみれだがヒールのお陰で今も顔色はいい。



「皆お待たせ」

起きたコーラルは真剣な表情で、手にはヴァン専用の無限記録盤を持っていた。

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