第12話 ヴァンの隠し球。

光斬術はヴァンとコーラルに向かって放たれる。

運が良かったのは、光斬術を3ヶ月前に見ていた事だった。


コーラルは足を震わせながら「動きなさい!ヴァンを守るの!」と自身に言いながら光壁術を放とうとしている。


「無駄だ。いくら真式でも、アクィ…模真式くらいの力しかないお前にはもう防げない」


ミチトの言葉にヴァンが前に出ると、「増幅術!光壁術!」と言って弱々しいが、光壁術を放つとコーラルと自身に向かっていた光の刃を受け止め切る。


コーラルが驚きの表情で「ヴァン?その力…」と聞くと、ヴァンはコーラルを見ずに、「隠し球だよ。その2を使うから今のうちにセレナに頼んで転移術でも滑走術でもいいから使って撤退だよ」と言う。


ヴァンが真剣な顔でミチトを見ると、ミチトは意外そうにヴァンを見て「術人間でもない人間が、俺の光斬術を受け止める光壁術?」と驚きを口にする。


そしてすぐに「そうか、クラシ君の魔水晶の貯め方か…。独自解釈か?クラシ君に聞いたか?一瞬で弾ける術のタイミングで光壁術を出したのか…。面白いな」と言うと「お前が器用貧乏なのは認めてやる。その弱い術でどこまで俺に迫る?」と言うと、「氷結結界」と言った。


ヴァンは起点に向かって弱いアイスボールをぶつけて無効化すると、ミチトは「面白い!アースランス!」と続ける。

ヴァンは必死な顔でウォーターボールを放ってアースランスを泥に変えてしまうと、ミチトは「やる!メロでも思いつかなかったのに!やるな!」と言って、更にヴァンに向かい術を放つ。


コーラルは必死に立ち上がり周りを見るとセレナが何とかユーナ達を回収している。

だが、やはり転移術は不発に終わり青い顔で首を横に振る。


セレナとコーラルのやりとりに気付いて、「逃すものか」と言うミチトに、ヴァンは「ミチト・スティエット!俺の唯一の術をうけてみてよ!」と言う。


ヴァンを見て警戒するミチトに「いいだろ?それとも怖いの?もう俺達に手はないよ」と続けると、ミチトは「イブ達に危害は?」と聞き返す。


「及ばないよ。いいよね?」

「やってみろ」


ヴァンは深呼吸をして「コーラル、俺だけだと術切れになるはずだから、俺に術を送って、それでもなんとかする。あとは俺が倒れたら、セレナと逃げるのをよろしく」と告げるとコーラルと手を繋ぐ。


ヴァンはそのまま「魂の概念は見てきた!召喚術!リナ・スティエット!」と言うと、眩い光と共にヴァンの横に身長の高い女性が現れると、「え?ここ…」と言って周りを見渡す。


ミチトは目を丸くして「リナ…さん?」と言った。


ヴァンが「ごめんリナ・スティエット、伝心術!」と言うと、リナは目に涙を溜めて「ありがとうヴァン。呼んでくれて助かったよ。トゥモにもありがとうを言わなきゃね」と言い、コーラルの所に行って「アクィを貸して」と言って愛の証を手に取ると、ミチトの前に行って「ミチト」と名を呼ぶ。


ミチトはリナを見て「リナ?本物?」と聞くと、リナは悲し気に微笑んで「そうだよ。何やってんの?」と聞く。


「何ってわからないんだ。目覚めたら周りには誰もいなくて、待てって声が聞こえてきて、待ってたらイブが来て、アクィが来て、ライブが来て、どうしたらいいかわからないけど、東に迎えって言われたから、来たら敵がいて、倒そうとしたら、リナさんが出てきたんだ」

ミチトは迷子の子供のような顔で説明をすると、優しく頷いたリナが「うん。ミチト、周りをよく見て。目を覚まして?」と言った。


「リナさん?」

「ミチトはまだ夢を見てる。イブもライブもアクィもだよ。でもね。アクィは居るよ。この剣に見覚えは?」


「レイピア?市販品…」

「違うよ。心眼術で見てご覧、ミチトがアクィの為だけに作った愛の証だよ。羽根の位置を直して怒られたよね?」


「うん。アクィは泣いていたんだ。これが愛の証?」

「そうだよ。ほら心眼術だよ」

リナの言葉でミチトが心眼術を使うと、「愛の証!?アクィ!?」と中のアクィに気がつく。


愛の証のアクィは必死に「ミチト!私たちは敵じゃない!味方よ!騙されてるの!」と声を送る。


「アクィ?何で?」

「ラミィに憑依術を作ってもらったのよ!私達の子孫に愛の証を遺したの!」

「ミチト、目を覚まして、大切なもの、ミチトが守ってきた全てを壊そうとしてるよ!」

リナと愛の証のアクィの言葉に、ミチトが混乱して呻き苦しみ出した時、アゲースが「『速く術者を殺せ!それは幻覚だ!』」と声を張った。


ミチトは苦しみながら「よくもリナを弄んだな!」と言うと、アクィやリナの制止も聞かずに一瞬で間合いを詰めてヴァンの身体を貫いた。


ヴァンが倒れればリナも消える。

リナが消えると「やはり幻…。リナ、待ってて必ず見つけるから」と言って、足元に落ちた愛の証を拾って、「これが愛の証であるはずがない!衝走術!」と言って愛の証を破壊した。


コーラルは一瞬の出来事に言葉を失っている間に、イブ達がミチトに駆け寄って、「一度退こう」「撤退だよ!」と言って西に帰って言った。


アゲースは「やれやれ、まあ落ち着いたら滅ぼしにくるよ。ヴァンは死んだから、君たちは怖くないや」と言うだけ言うと、ミチト達の後を追った。


「コーラルさん!コーラル!ヒールして!ヴァンが死んじゃう!」

セレナが駆け寄ってヴァンにヒールを送るが、コーラルは放心していて「アクィさん?ミチトお爺様が…ヴァンを…」と言って立ち尽くしていた、

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