第11話 惨敗。
ヴァン達には、どうやっても勝ち目がない。
イブとライブ。ただ2人にコーラル達は押されている。
コーラルがまだ耐えられるのは、愛の証のアクィが力を貸してくれていて、散々訓練をしたお陰でなんとか対処できている。
「コーラル!イブのその動きはフェイント!無視をしてライブにサンダーボール!殺傷力の強い術は溜めのタイミングで反応される!」
「はい!」
アクィの見せる動きに合わせて、イブの蹴りを無視して前に出て、ライブにサンダーボールを放つ。
イブが「かわした!?」と驚きを口にして、ライブが「ちっ!コンビネーションを見抜く!?何このアクィみたいな子!そこそこやるしアクィより胸があるし!」と言って顔をしかめる。
何とか間を埋めようとするヘマタイトを見て、イブは「ロゼとコードちゃんを合わせた動き?」と驚きながら剣で拳を弾き、ファイヤーボールを放つとペリドットが滑走連斬を打ち込む。
ライブの方はシャヘルを見て、「メロの動き…。でも甘いんだよ!」と言って迎撃に入ると、ユーナが「そのままだ!追撃する!」と言ってシャヘルの頭スレスレにファットチャイルドの一撃を叩き込む。
「くっ!ナハトの動き?タシアみたいな見た目なのに!」と言ってライブが守りきれなくなると、目の前に氷壁がそびえ立つ。
氷壁に阻まれたユーナがライブを見ると、「ありがとうライブ。代わるよ」と言って前に出たのはミチト。
それだけで場の空気が一気に凍りつき、ミチトは「中々やるね。本気の身体強化のライブなら余裕だけど、疲れちゃうからね」とライブに微笑んで頭を撫でると、「イブ、イブも下がってよ」と指示を出す。
イブは「むぅ。ミチトさんの完璧な術人間ならやれますよ?」と返すが、ミチトは「そうだね。でも俺自身何が起きてるかを知りたいし、皆の所に帰らないといけないから何とかしたいんだ。とりあえず何となく調子が悪いし…どこまでこの身体が動くか確かめたいんだよね」と言う。
調子が悪い?
ユーナたちは耳を疑ったが、イブは「そういうことなら仕方ないです。やっぱりミチトさんは器用貧乏で、器用貧乏はとても怖い言葉です」と言って下がりながら、コーラル達に「さっさと負けを認めて引き下がるべきです」と言って、ライブと一緒にアクィの元に行くと、「アクィさん!あのアクィさん似の子!見ましたか?」、「アクィより胸あったよ!」、「ライブ!うるさいわ!私の動きにあんなものは邪魔なだけよ!」とかしましく話して笑い合っている。
だがこっちは必死だった。
「ふざけんな。本気じゃないだと?調子が悪いだと?」
「こっちも先まで考えたが8割は出してたぞ?」
「やるしかない」
「ヴァン、大変だが撤退の筋道を探してくれ」
「引けない!戦う!」
ユーナは先日のミチトからボコボコにされた経験を活かして、「先手は俺だ!」と言って前に出ると、ファットチャイルドを構えて「チャイルド!」と声を上げながら斬りかかる。
3ヶ月前からしたら驚異的成長を遂げたユーナの一撃。
「タシア?ナハトに近いな…。ナハト…無事か?」と言ったミチトは、鉱石を取り出すと一瞬で手甲に作り替えて、「だが甘い!」と言ってファットチャイルドを打ち上げるとユーナの間合いに入って蹴り抜く。
追撃をさせまいとシャヘルがミチトとユーナの間にアイスウォールを張って、背後から「二刀剣術!ペリドット!」と声をかけると、ペリドットも「おお!滑走十連斬!」と言って左右から斬りかかる。
確かにシャヘルの二十四連斬とペリドットの十連斬は、拍子も速度も違う上にお互いに真横ではなく少し後ろ側からミチトを攻めていて位置取りはうまい。
だがミチトは勿論、妻達の誰もが慌てる顔もなく、戦うミチトを見てうっとりとしている。
ヴァンはそれに気づいて「だめだ!下がって!コーラル!アイスウォール越しに光線術!ヘマタイトは…シャヘルに光壁術!」と指示を出す。
その時ミチトは先に切り掛かったペリドットの十連斬を叩き伏せるように、手甲をナイフに変えると十連斬を放ち、追撃でペリドットを殺そうとしていたが、コーラルの光線術とシャヘルの二十四連斬がそれを阻害する。
ミチトはひと睨みで光線術を掻き消すと、「ちっ、ならこっちだ」と言ってシャヘルを連斬で斬り殺そうとしたのだが、ヘマタイトの光壁術がそれを阻んでくれた。
「2人は離れて!」「セレナはアースボールを乱射して!」
ヴァンの声にペリドットとシャヘルが離れて、セレナの泥の雨みたいなアースボールはミチトに近付くだけで霧散していた。
「危ねぇ、命の危険を感じた」
「本当だ。コーラル、ヘマタイト、助かった」
ユーナが立ち上がって構えを取り直した所で、セレナはアースボールをやめる。
「セレナ!ユーナといて。ペリドットはシャヘルと居るんだ。2人でいると思わないで、2人で1人だと思うんだ。コーラルはヘマタイトとだよ」
ヴァンの指示にコーラルが「ヴァンは!?」と聞くと、ヘマタイトが「危険です!」と言う。
ヴァンは首を横に振って「俺は後、隠し球を出すかもだけど、それしたら手がなくなるから、なんとか諦めて帰ってもらって俺たちは逃げるんだ」と言う。
ヴァンの言葉と目を見て、ユーナ達は何故かヴァンの言葉に従う気になる。
このチームの支柱は、伝説のスティエットでもなければ無限術人間真式でもない少年だった。
「あの目、あの顔、あの幹部とか呼ばれた奴…危険だ。敵にも器用貧乏がいる。アイツが相手ではロゼ達じゃ負ける。ここで俺が殺す」
ミチトの言葉に、アゲースは「ヴァンがやはり君達の頭だね」と笑っているが、イブ達には声すら届かない。
「俺は殺すときには殺す。光線術」
ミチトの光線術は一気にヴァンに向けて放たれるが、「やらせない!光壁術!」と言ってコーラルが前に出ると、「皆!お爺様を止めて!私の光壁術でも長時間は保たない!」と言う。その声に合わせてユーナとセレナが左から攻め込んで「二刀剣術なら!セレナ!ウインドブラストだ!」、「撃つよユーナ!」と言って剣を持ち替えて「二刀剣術!無限斬!」とユーナが斬りかかるが、ミチトは光線術を止めずにユーナを迎撃する。
「バカな!?光線術を維持しながら動く!?」
「甘いんだよ。俺はやるさ、器用貧乏だからな。無限斬は俺の技だ!お前の遅い無限斬を無限斬と呼ぶな!」
「セレナ!アイスウォール!」
セレナはヴァンの声に反応出来たからユーナの前にアイスウォールを張って直撃は防げたがユーナは直撃していたら一瞬で殺されていた。
それでも尽きない光線術を止める為に、シャヘルとペリドットとヘマタイトが前に出て三者三様の攻撃を加える。
だがそれもミチトは軽々と一蹴してしまう。
遠くではライブの「もう立つなって、ミチトは優しいから手加減してくれたんだよ?」という言葉が聞こえてくる。
コーラルはなんとか光壁術を張っていたが遂に力尽きる。
ヴァンがコーラルに寄り添うと、その姿を見たミチトは「なんかイラつく。君たちを見ていると、心の奥がモヤモヤするんだ」と言って光線術を止めると、「2人とも死ぬんだ」と言って光斬術を放った。
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