第7話 本来の器用貧乏。
オルドスは穏やかな顔でヴァンを迎えると、「オルドス様、術使いとして意見交換は対価がいりますか?」とヴァンが聞く。
「いや、絶命術について教えてくれとかなら、禁術書を読むように言って断るけど、特定の術の名を出さずに聞かれれば答えるよ」
ヴァンはそれならと、いくつかの質問をして答えを求めると、「怖いなぁ。ヴァン君ならトライアンドエラーが許されたら、答えに自分でいけるよね?」と言われる。
ヴァンが困り笑顔で「無理ですよ。だって俺…」と言うと、最後まで言う前にオルドスが「器用貧乏だからかな?」と言った。
「え?俺は弱いって言うつもり…」
「いや、なんでもできるが、突出していないから何もできない、本来の器用貧乏の意味さ、ミチト君も初めはあれもコレもとやるしかなくて器用貧乏になったから、あれだけの力を持っても、器用貧乏と自分を位置付けた。今のヴァン君が1番ソレに近いよ。剣だって基礎の基礎だけだがファン・ガイマーデに習い、料理はヌーイ・ガイマーデに習った。術は私が教えたがどれも基礎のみで器用貧乏になっている。ミチト君みたいに器用貧乏と名乗るかい?」
「嫌ですよ。コーラルに怒られます。とりあえず助かりました。後お願いってしても許されます?」
「敵の内容は教えられないよ?」
「相手が身構えるからですよね。違います。いつ来るかを、緩く予言の書に書いてもらえませんか?」
「ソレはやっておくよ」
「後はドウコに行きたいからコーラルを呼んでもらえますか?」
「そうだね。ヴァン君にはコーラルが必要だね」
オルドスはコーラルを呼ぶと、ヴァンがどうやってラージポットまで来られたのかを気にするが、オルドスから「ヴァン君は器用貧乏を継ぐものだからさ」と言われる。
コーラルが言葉の意味を聞こうとしたが、ヴァンは「コーラル、俺をドウコまで連れて行ってよ。ラージポットまできたから術切れ近いんだ」と言うと、コーラルは「ヴァン、転移術を?でも見た感じそこまでの術量が…」と聞いてきたが、ヴァンは深く話さずに「まあ、やれたんだけどさ、ギリギリだから頼むよ」と言って誤魔化してしまう。
「それにドウコってなんで?」
「禁術書にオルドス様の受肉術があったけど、俺は真式じゃないからわからなくてさ、オルドス様に思案していいか聞いたら、好きにしなさいって言ってもらったんだよ」
「あれは使うべきではないわ!」
「うん。でも知りたい。皆の助けになりたいからさ」
コーラルが困ると、オルドスからは「コーラル、推薦したのは君たちだ。ヴァン君の成長を妨げてはダメだよ」と注意を受けて、コーラルは渋々ドウコへと飛んだ。
ドウコにはユーナ達も居て、セレナまで来ていてヴァンに手を振る。
「あれ?皆?オルドス様かな?」
ヴァンの耳にオルドスの「そうさ、北部料理はスティエットの味、きっと皆喜ぶよ」という声が聞こえてくる。
寺院はスティエットの再来と、伝説に近い模真式の登場に湧き上がる。
ヴァンの父、ファンは「んだよ。土産なしで来たのかよ?」とヴァンに言い、「仕事中だから仕方ないだろ?」とヴァンが返すと、ヘマタイトが「御父上、初めまして。僕はヘマタイト・スティエットです。こちらがこの1年間のヴァンの給金の半分、当初のお話にありました、ご両親の取り分になりますといって2000ゴールドが支払われる。
あまりの金額に目を丸くするファンに、「今年は様々な危険手当が付いたので、次回は少し目減りしてしまいますが」とヘマタイトが続けると、ファンは首を横に振ってヴァンの肩に手を置いて、「よくやった。お前を育てた元はとった。後は危険なところにガンガン行って危険手当つけて来い」と言う。
あまりのクソ親ブリに、ユーナ達は言葉を失うが、ヴァンは「わかってるよ。で、俺が死んだら俺の取り分も手に入ってウハウハだね。あんまり使ってないから貯まってるよ」と返すと、「よし、わかってりゃいいんだ」とファンも返してバカ笑いする。
その後でユーナを見て、「ペトラさんっていいお父さんだろ?」と聞くヴァンに、ユーナは「すまん」としか言えなかった。
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