第4話 オルドスの対価。
ヴァンとコーラルがラージポットに顔を出した瞬間に、「おはようヴァン君。来てくれると思ったよ。で、どうしようか?」と、無限術人間真式オルドスは言った。
「おはようございます」と返したヴァンは、「どう?対価のいる話なんですね?」と聞いてから、「やっぱり悪い方ですか?」と続けた。
オルドスが困り笑顔で「そうだね」と言うと、ヴァンは「今世に手出しができないから、可能な限り根回しを行った?」と聞く。
「根回しって怖いなぁ。私はそんな人ではないよ?」
「俺だって色々考えちゃうんだから、オルドス様なら未来予知ばりに先が読めて、アレコレ考えちゃいますよね?ミチトさん達が死んで130年。きっとオルドス様は先読みをしながら様々な事を考えて備えてくれた」
コーラルはこのやりとりをゴルディナと共に見守っていて、口を挟みたいのに挟めない空気があって、動こうとするとゴルディナが首を横に振る。
ラージポットの主人、金竜のゴルディナもヴァンを認めている事がここでわかる。
「ヴァン君、君…読めてるのかい?」
「少しだけ。口にするのも怖い奴なら。だから対価が怖くても来たんです」
ここでコーラルが我慢できずに、「ヴァン?怖い?」と声をかける。
ヴァンはコーラルを見て困り顔で「うん。ユーナの時には外れたけど、オルドス様は俺に模式になれって言うんじゃないかと思ってるよ」と言い、コーラルが何を聞くかわかっているように、「コーラルの仲間が足りないんだ。ミチトさんにはイブさんやライブさん、アクィさんが居た。でもミチトさんはユーナ達を弱いって言っていたから、まだ仲間が足りない。国内のスティエットを探して、共に戦ってと言っても、皆が立ち上がっても足りない。だから俺かなって思った」と続けると、オルドスを見て「オルドス様、対価を教えて。模式は嫌だけど、まず何をすれば良いのか教えて」と言う。
「ヴァン君、君は本当に凄いね」
「凄くないですよ。砦でも役立たずなりに頑張ってきただけです。オルドス様の方が凄いですよ。本当なら身の毛がよだつ出来事でも、ニコニコとラージポットから動かないで、見守ってくれて最大限助けてくれる」
ヴァンの言葉に目を丸くしたオルドスは、「君…本当に見えてない?」と聞くと、ヴァンはシレっと、「見えてませんよ。さあ、対価を教えてください」と返した。
オルドスが指定したのは、ヴァンにヒールや簡単な術を覚えてもらう事で、ヴァンは模式にされなかった事に驚くと、「私も模式は良くないと思っているんだよ。ミチト君のように病を治し、命を繋ぐ結果の模式や、アクィさんのように絆に結ばれた関係なら良いけど、それ以外はね」と言い、さっさとオルドスが術知識を授けると、ヴァンはそれなりに使えるが、「俺って弱々ですね」と言って笑った。
そう、ヴァンの術は決して強く無かった。それこそ器用貧乏が本来持つ意味通りの内容だったが、ヴァンは休憩中に「それでも意味があると思う」と真剣な顔で言った後で、コーラルを見て「コーラルは強いね。術を知ると、改めてコーラルの凄さがわかったよ」と言って微笑んだ。
オルドスから話を聞く際に、ヴァンが一つの提案をした。
「オルドス様、言葉ではなく予言の書に記してください。それならもう一段上の事が書けますよね?」
オルドスは嬉しそうに目を細めて、「ありがとう。やろう」と言うと、予言の書を2冊取り出して、「国営図書館の方は、後でザップ君の所に返しに行ってくれるかな?」と言いながら渡す。
ヴァンは「はい」と言って受け取ると、ページを開く。
伝説にあった、オルドスの「ごめんなさい」で埋め尽くされたページを見て、微笑んでしまったヴァンは、最後のページを見ると肩を落として「やっぱり」と言った。
古代語の読めないコーラルは、不安げに「ヴァン?なんて書いてあるの?読めないわ」という。ヴァンはコーラルに優しく微笑んで、「うん。俺の予想通りだったよ」と言うと、オルドスを見て「オルドス様、俺が騒ぐ分には構わないですよね?」と聞くと、オルドスは優しく微笑んで「済まないね」と返す。
ヴァンは首を横に振ってコーラルを見て、「コーラル、敵が来る。敵は西のニー・イハオに生まれた、無限術人間真式だよ」と言った。
コーラルは驚きを隠せずに、確かめるように「無限術人間…真式?」と聞き返した。
ヴァンは「そう。コーラル達と同じ真式。オルドス様が危険視するくらいの敵、コーラル達が束になっても敵わないのか、模式の軍団を連れて攻め込んでくるのかは聞けないから、考えて備えるしかないよ」と言って西を見た。
コーラルが不思議そうに「聞けない?」と聞き返すと、ヴァンは予言の書を見せながら、「書かないと言う事は聞けない事。オルドス様は言える事は全部書いてくれる人だからね」と言った。
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