007 ダンジョン

 ダンジョン。そこは夢と希望で溢れた場所。富も、名声も、力も、全てが手に入る場所。

 ――じっちゃん曰く、英雄製造機。


 じっちゃんの英雄譚の中でも、そこそこの頻度で登場していたのがダンジョンであった。そこを攻略した人間は富を得て、力を持ち、名声すらも手に入れる。

 無論リスクはある。ダンジョンの中には強大な敵がいるのが鉄板だ。しかし、それ以上のリターンがあるのがダンジョンなのだ。


「ってな感じなんだが、俺の思ってるダンジョンと同じか?」


「んー、同じだよー。というか、ダンジョンについて知らないのー?」


「知らん。いや、知ってはいるけど知らない?」


「じ、じゃあラスカ君。ココ以外の五大都市にダンジョンがある事とかも……?」


「知らない」


 ――ココ以外の……? 監獄都市も五大都市とやらの一つなのか?

 

「あなた、ホントどうやって生きてきたの? 成人したらダンジョンに入れるようになるのだから、親御さんから聞いたりしてないの?」


「俺は孤児だ。親は知らん」


「そ、それはごめんなさい」


 構わん。


「……まあ、ダンジョンについての説明は後にするとしてー、刑期を大幅に減らせるのはダンジョン攻略でーす。

 ダンジョンにいる敵対者モンスターを倒して、ドロップしたアイテムを持ち帰るもよし。中にある異世界の資源を採取してくるもよし。成果を持って帰ってくるんだよー」


「ドロップアイテム……?」


「そそ、モンスターを倒すとね、アイテムが落ちたりドロップするの。主に魔石っていう石なんだけどー、コレが燃料としてバカにできなくてね?

 ほら、魔動車くらいは知ってるでしょー? アレの燃料が魔石なの。他にも色々活用出来るけどねー」


 スゲェ。


「てなわけで、持ち帰ってきた魔石とかを監獄都市に渡す代わりに、刑期を減らしたり、お金を君たちにあげるのでーす。そういう仕組みなの」


 え、それなら――――


「――それなら学園要らなくね?」


「え」


「勝手にダンジョンに行って勝手に魔石とか集めりゃ良いんだろ」


「そうね、むしろ時間の無駄じゃない? 学園この時間


「ふ、二人とも……? 先生目の前に居るんだよ……?」


 やっぱり要らないだろ。サッサと脱獄するにはダンジョンに潜りまくった方が効率良くね。


「――ふふ、面白いことを言うねー?」


 チビ女――レイレイがなんか荒ぶってらっしゃる。何故だ?


「学園では戦闘訓練とか、生徒限定の仕事を斡旋してるんだよ。監獄都市ここのダンジョンは世界最大だからねー? たまにモンスターが溢れてくるんだよ。だから仕事は多いし戦闘力が、腕っぷしが大事なの分かるー?」


 キレてね?


「特にEXクラスは期待の新入り罪人さんだからー。渡される仕事も難度が高いの。生半可な実力じゃダメ。このクラスに来るんだから、才能は素晴らしいんだと思うけどー? 今の実力じゃ全然足りてない」


 ――瞬間、俺の身体が落ちた。いや、椅子には座ってる。身体が重くなってる訳でもない。それでも、立ち上がる事が出来ない。この感覚、落ちているという言葉が一番合う。


「ラスカ君は知らなさそうだし、教師らしく授業でもしようかなー。

 前世から継承される才能は、大きく分けて四つあるの。

 一つ目は剣術とか、発明力とか、その身に宿った技術。

 二つ目は魔力を用いた術、魔術。

 魔力ってのはねー? 魔石と同じ成分で、魔力が固まったのが魔石なの。いわば万能燃料だね。

 そして、この二つは体系化された技術という区分になるからー、頑張れば誰でも身につけられてー?

 問題は後の二つ。

 三つ目は魔法。魔力を用いてるのは分かるけど、解明ができない理外の法則。私が今使ってるのがコレねー。

 四つ目は異能。コレは上の三つに含まれない、超常現象を引き起こす能力全般。その他ってヤツだよー」


 ――身体の感覚が元に戻る。


「とまぁ、ダンジョンとかはさ、こんなよく分からない能力を使ってくるモンスターもいるの。そういうモンスターに対応出来るのは同じレベルの能力を持つ人間だけ。つまり、そういうのに対処できるようになるまで、私が君たちを鍛えまーす」


 ――何だ今の。反応出来なかった。何もさせてもらえなかった。初見殺しってヤツだ。初見以外でもやられそうだが。


「……あなたみたいな英雄や罪人が、この都市には沢山いるの?」


「んー、私は割と強い方だと思うよー。でも、私以上も勿論いるかな。この都市を治めてる、五大英雄の一人でもある『不滅の魔女』とかねー。アレは無理だよー」


 コレが英雄。前世で偉業を成した、珠玉の才能の保持者。こんなのがこの都市には、この世界にはまだまだいんのか。ハハッ最高じゃねーか。

 ――全員、俺が踏み越えてやる。


「じゃ、今日はこれくらいかなー。最後に、君達にはダンジョンに潜ってもらいまーす。武器は支給するから、君達三人で、今からねー?」


 え、今から?

 

 俺達は簡単なダンジョン知識の説明と、武器だけ渡されてダンジョンに放り込まれた。急すぎだろ。

 


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