006 罪人学園、EXクラス所属、ラスカ・テリオン!
俺が監獄都市入りして約一日が経過した。正確に言うと監獄都市に来たのが一昨日。昨日は寝て過ごした。色々な事があったからな。俺をダウンさせるなんて相当だぜ。
そして今日、巨乳女に渡された生徒手帳とやら曰く、罪人学園の最初の登校日らしい。
「楽しみだな」
学園だ。学園と言うくらいなのだから、同級生とか教師もいるのだろう。
知ってるぜ。こういうのは最初が肝心なんだ。そこで舐められたら終わりだってじっちゃんも言ってた。
生徒手帳の導きに従いながら、自己紹介を考える。パンチの効いたヤツにしないとな。
寮を出て十数分、俺は教室のドアの前に立っていた。
――よし、開けるか。
「たのもー!」
教室の中には教卓が一つ、その前に机と椅子が3セットずつ並べられていた。
そして、ドアを開けた先には既に先客が二人いた。
一人は赤髪赤目の吊り目女。俺がドアを開けても我関せずって態度だ。
もう一人は緑髪緑目で俺の方を見てオドオドとしている男。
つまり、机の数的に俺が最後の一人だろう。
俺は教室に入り、ドアを閉めて自分の椅子――ではなく、教卓へと歩いて向かった。
――自己紹介は最初のインパクトが大事……。
俺は教卓をパンって叩いて言い放った。
「俺の名前はラスカ・テリオン! ラスカって呼んでくれ! 特技は剣術! 夢は英雄になる事だ!!」
ポカンとしている二人を見て俺は思った。
――決まったな。
あと、このままじゃ俺が痛いヤツみたいになってしまう。間髪入れずに畳み掛けないと。
「そこの緑男! 自己紹介!」
「ふぇっ、ぼ、僕はゼノン。特技は爆弾作りです……」
え、物騒。
「次、赤女!」
「……」
「次、お前、伝わってる??」
何だこいつ、無視しやがって。
「……レト・ラ・セララ」
「おいおい、特技は? 夢は? 自己”紹介”なんだからなんか言おうぜ。ほら、俺の夢は英雄になる事でな、ゼノンはどうだ?」
「え、僕は特に……」
「そうかそうか、まあ夢なんて悩んでなんぼだからな。レトはそういうの無いのか?」
かーっ、これだから気の強そうな女は苦手なんだ。やっぱり結婚するならお淑やかな女の子だよな。そんで――――
「……英雄って、バカじゃないの?」
「あ?」
「私達は罪人なの。現実が見えてないんじゃないの?」
「……なら、お前は見えてんのか? 自分が罪人って納得してんのかよ」
「……してるわけないでしょ! 私は!
――ハッ。
「良いじゃねーか。俺もサッサと刑期をゼロにして脱獄する気満々だぜ。そして英雄に――――グガッ」
「「あ」」
――痛っ。何が起きて……。
「おーす! ドアを吹き飛ばしてこんにちはー! 最初はインパクトが大事だからなー! あたしがこのクラスの担、任……あれー!?」
意識が落ちる寸前、聞こえてきたのは能天気な女の声だった。またかよ。
***
「いやー、まさか教卓の側に人がいるなんて思わなくてー。ちゃんと座っといてよー」
「……俺もドアを吹き飛ばしてダイナミック入室かまして来るヤツがいるなんて思ってなかったよ」
首がイテェ。なんでドアを蹴り破ってくんだよ。
「だ、大丈夫? ラスカ君」
「おう、あんま問題はねーよ」
「な、なら良かったよ。首が曲がっちゃいけない方向に曲がってたからどうなる事かと……」
えぇ。死にかけてね、それ。
「問題は無かった。いいね! じゃあこれから罪人学園について話をしまーす!」
なんだ、このチビ女。
「まず、私は君たち、EXクラスの担任になったレイレイでーす! ちなみに英雄認定されてまーす! そこそこ強いよー」
――あん?
「罪人の学園なのに英雄がいんのかよ」
「知らないの? この監獄都市は英雄と刑期をゼロにした悪人が公的事業を担当しているのよ。学園の教師とか、治安維持とかね。そんな事も知らずにココで過ごしてたの?」
赤髪女――レトが嘲笑ってくる。
「仕方ねーだろ。俺が監獄都市に来たのは数日前だぞ」
「……はぁ?」
「そうだよレトちゃん、今期の新入り罪人はラスカ君が最後なんだよー。つまり、君が来なければこのEXクラスは二人だけだったのでーす」
「そ、そのEXクラスって何ですか……?」
ゼノンが恐る恐る尋ねた。
「んー、今期の新入り罪人達の中でヤバそうなのをまとめてるんだよ。将来有望的な? 君達は同年代の中でも選りすぐりの罪人さんなんだよー」
「んな事言われても、微妙に嬉しくねーな」
「んふ、君たちはココを直ぐにでも脱獄したいんでしょ? なら、甘んじて受け入れると良いよー」
「……脱獄とソレがどう繋がるんですか?」
「まあ待ちたまへ。順に説明しまーす」
俺たちの担任――レイレイは説明を始めた。
「まず、忘れちゃいけないのが刑期についてでー、
それは知ってる。散々聞いている。あの門から中に入れるのは分かったが出方は分からない。何処かにあの門の逆があるのか、それとも別の何かがいるのかは不明だ。
「そして、刑期を減らす為の仕事を監獄都市から提示していてー、学園ではそのやり方とかを訓練していまーす」
レイレイはニッコリと笑いながら話し続ける。
「刑期を減らせる仕事はいっぱいあってー、例えば街の見回りとかー、例えば新しい技術の開発とかー」
なるほど、前世のタレントには色々な向き不向きがあると聞く、それに合わせた仕事を提示されるのだろう。
「――例えば、ダンジョンの攻略、とかねー?」
――マジかよ。
俺は驚きすぎて椅子から転げ落ちた。
ドッと笑いが起きたがそれすら気にならなかった。だってダンジョン、あのダンジョンだぞ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます