第7話 貴族として、男児として
庭に面したテラスの前で手招きしているラミリアの元へとジュリに伴われラフィが小走りに近寄る。
「もうすぐお昼ですが、その前に礼儀作法を覚えてもらいます」
「……はい」
「では、ジュリ。ラフィを講師の元へ連れて行ってもらえるかしら」
「はい、承知しました。では、ラフィ様。行きましょうか」
「うん」
「ラフィ!」
「あ、はい」
ジュリに対し「うん」と返事をしたラフィに対しラミリアから窘められたラフィは「はい」と言い直すとジュリに先導され講師が待つ部屋へと向かう。
「では、本日はここまでとします。予習復習をお忘れなきよう」
「……はい」
「まあ、そのお歳では気が進まないでしょうが、貴族として生活するのであれば最低限の礼儀作法は必要となりますのでご理解下さい」
「……はい」
礼儀作法の講師が部屋から出て扉が閉じられた瞬間にラフィは「ふぅ~」と嘆息する。
「お疲れ様でした」
「もう、貴族ってこんな面倒なこと覚えないとダメなの」
「ええ、そうですね。もう少しすると独特の言い回しを習うと思いますが……大変ですよ」
「え~」
「ふふふ、貴族の方は足の引っ張り合いが通常ですからね。ですので揚げ足を取られないよう言質を取られないように普段からの言動に注意が必要になります。なので私からは頑張って下さいとしか言えません」
「うん、ありがとう」
「では、もうすぐお昼なので……」
「うん!」
ジュリと一緒にラフィが食堂へと向かうとそこには既に親達三人が揃っていた。
「ラフィ、礼儀作法はどうだった?」
「疲れました……本当に必要なのかなと思いましたが、貴族として生活するのなら必要最低限の所作は身につけるべきと言われては何も言えません」
「そ、そうか。まあ、慣れるしかないとしか言えん。その内、呼吸をするように自然と身につくだろうさ」
「はぁ……」
「ラフィ!」
「は、はい! 父様」
「ラミリア、少しくらいは「いいえ、なりません!」……そうか。そういうことだラフィ。頑張るんだな」
「はい……」
ナッフィから妙な励ましがあったが、要は自然と出来る様になるまではガンバレということらしい。
「それで、庭では何をして遊んだんだ?」
「あ、特に遊んだ訳ではないのですが……」
「ふむ、では何をしていたんだ?」
「あの……」
ラフィは庭のガゼボでジュリに教わったことをナッフィに話すと、ナッフィは顎に手をやり「少し違うな」と言えば、横で聞いていたジュリが申し訳なさそうな顔になる。
「いや、違うというよりは説明が足りないようだな」
「足りない……ですか?」
「ああ、まず属性だが、ジュリが教えた七属性の他に『無属性』がある」
「無属性ですか?」
「ああ、そうだ。まあ、代表的なものとしては『身体強化』があるな」
「へ~」
「まあ、魔法については五歳になるまではダメだからな」
「え? そんな……」
「まあ、聞け。いいか、今のラフィは三歳だ。その歳で魔法が使えるとしてもだ。魔法を使って暴走した場合や、魔力切れを起こした場合には命に関わるからな。だから、五歳になるまでは待て」
「……はい。分かりました」
「後二年だ。五歳になれば色々することも増えるが、やれることも増えるから楽しみだろ。ん?」
「はい、五歳になるのが楽しみです。でも……」
「ふふふ、早る気持ちも分かるが、こればかりはしょうがない。それにお前はまだ三歳になったばかりだろ。ホントに三歳だよな?」
「は、はい。そうです三歳です」
ナッフィは顎に手をやりながらラフィをジッと見詰めている。
「三歳か……いや、どうも上の子達にも同じ様に説明したことがあるのだが、お前の反応がどうもそれと違う気がしてならんのだ」
「反応……ですか?」
「そう、それだよ! どこか子供らしくないというか、邪気がないのだ」
「旦那様、そこまでにして下さい。ラフィは少し他の子よりも大人びているだけです。今日も庭を走り回ることなくジュリと話を楽しんでいたくらいですから」
「ラミリアよ、そうはいうがな男児というのはこう「この子の性格ですから!」……そうだな。うん、ラフィは大人しい子なんだな」
「そうです!」
ナッフィは普通の男の子なら庭に出た途端に走り回ったり、転がったり、木に登ったりするもんだと言いたかったが、ラミリアが鼻息も荒く「ラフィは大人しい」と言い切るものだから、二の句が継げなかった。
最後の方はぐだぐだになったが昼食を取り終え、椅子から下りたラフィはジュリに対しさっきの続きをせがむ。
「では、お昼寝の時間も近いのでお部屋に行きましょうか」
「うん!」
「ラフィ!」
「あ、はい……」
ラミリアから窘められたラフィはジュリに対し返事し直すと二人で部屋の方へと向かう。
部屋に入るとラフィは直ぐに小さなテーブルに着くなりジュリに話の続きをせがんでくる。
「今、お茶を用意しますので少々お待ち下さい」
「そんなのいいのに……」
「そういう訳にはまいりません」
「分かったよ。でも早くしてね」
「はい、分かりました」
ジュリを待つ間にラフィは不意に隠蔽の途中だったことに気付くと目の前に半透明のステータスボードを表示させると『隠蔽』スキルを発動する。
「じゃあ、今の内にヤバい奴を……うん、こんなもんだろう」
ラフィはステータスボードの中でも他人に見られたら騒ぎになりそうな項目を全て隠すと改めてステータスボードを見直す。
名前:ラフィ・フォン・ティグリア 三歳 性別:男
取得スキル:【鑑定EX】【
加護:【一級神女神フィリア】【一級神女神サリア】【一級神女神ソニア】
称号:【一級神女神フィリアの使徒】
※【】内の項目が薄く表示されている項目だと思って下さい。
「うわぁ~何も持ってないことになったけど……マズいかな」
「何がマズいんですか?」
「え、何って……」
後ろから声を掛けられ、答えようとしたラフィは言っちゃマズいと思い出し慌てて両手で口を閉じる。
「どうしましたか、ラフィ様?」
「な、なんでもないよ! 気にしないで!」
「でも、先程から何か独り言を仰ってた様な……」
「なんでもないから! 本当に何もないから!」
「そうですか」
ジュリは不承不承な感じで納得しながらテーブルの上にお茶を用意すると、トレイを横に置き、自身も椅子に座るとラフィに話しかける。
「では、どこから話しましょうか」
「ダンジョン!」
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