第34話 季 【side 季】
高校生になった。野口君と同じ高校。高木もいてる。三人ともクラスは別々だったけど高木のお寺でしょっちゅう集まって遊んでいた。お寺の行事がある時はあゆむちゃんも一緒だ。来年はあゆむちゃんもうちの高校を受験するので更に楽しみ。園芸部に入るって言うてたし。
私と野口君は高校でも園芸部に入った。中学の時と違って部員はたくさん居た。でもほとんどの人が部活に来ていない。2年生になったら部活動は個人の自由で、やってもやらなくても良いのだけど、ウチの高校は入学した最初の年、1年生の間は絶対に何かしらの部活に入らないといけないと決まりだ。
園芸部とか美術部とかは、活動する気はないけどとりあえず入部して幽霊部員になる、そういう人でいっぱいだ。中学時代のハッタンみたいに。
ハッタンは県内の高専に合格して今は寮生活をしている。卒業式で笑顔で別れてから一度も会ってないけど、またいつか会える日が来ると思う。会えなくてもずっと友達でいようって卒業式の日に約束したから。
高校は楽しい。中学より自由だし野口君や高木も居てる。でも二つだけ気掛かりな事があった。
ひとつは梅ちゃんの事。梅ちゃんは高木龍太のことが好きだ。だから高木のお寺の行事を一緒に手伝おうって中学時代から何度も誘った。最初は野口君が梅ちゃんに会ったら、野口君は高木に、私は梅ちゃんに、またやきもち焼いてしまうかなって心配したけど、野口君は高木と梅ちゃんが疎遠になったことを心配していた。梅ちゃんと高木が前みたいに仲良くして欲しいと思ってるみたい。もう、梅ちゃんを見ても心がチクチクしなくなったんじゃないかな。私も梅ちゃんと高木がまた一緒に遊べるようになって欲しいと思っていた。野口君も梅ちゃんにまた会わせてあげたい。だからお寺の行事がある度に梅ちゃんに電話した。でも梅ちゃんはいくら誘っても来なかった。
梅ちゃんは高木の事が好きだと、高木本人にバレるのが怖いって言う。嫌いな人に好きと勘違いされるのは困るけど、好きな人に自分が好きと思ってることが判ったら何でアカンのか良く判らないけど、梅ちゃんは嫌みたい。恥ずかしいのかな。でもホンマは高木と仲良くしたがってる。
素直になったら良いのになぁ、でもそれが梅ちゃんやからなぁ。だからとりあえず断られても毎回何か行事がある度に誘った。
二つめはあゆむちゃんのことだ。
あゆむちゃんは高木のことが好きみたい。小さい頃から遊んでて幼馴染みたいな感じやけど、あゆむちゃんを見てると高木のこと好きなんちゃうかなって思った。応援してあげたいけど、梅ちゃんも高木が好きやから……どうして良いのかわからない。
梅ちゃんのこともあゆむちゃんのこともどっちも応援したいけど、結局高木が決める事だからどうにも出来ない。
今は梅ちゃんは高木と全然会えてないから、とにかく梅ちゃんを高木に会える様にしてあげたかった。
高木はどう思ってるんやろう。
高木はあゆむちゃんにすごく優しいけど、多分お兄さんみたいな感じなんだと思う。彼女とか恋人とかそういう対象としてあゆむちゃんを見ていない気がする。あゆむちゃんもそれが判ってるから何も言わないんじゃないかな。切ないな……
あゆむちゃんのこともあるから、梅ちゃんを無理矢理高木に会わせることも出来なくて……高校生活は楽しいけどそんな感じでちょっと複雑だ。
高木が二人居たら良かってんけどなぁ……そしたら梅ちゃんもあゆむちゃんも全力で応援出来るのに。
はぁ、とため息が出た。
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