第3話 少年野球 その1
次の日エッちゃんを少年野球チームに入らないかと誘ってみた。エッちゃんはビックリしてしばらく口を開けたまま私を見ていた。
「……私、野球なんかしたことないし……」
やっと返事があった。
「私もやったことなかったで。最初に始める時ってやったことないんちゃう?何でも」
「でも女の子、スーちゃんだけやろ?」
「うん。だからもう一人おってくれたらうれしいねん。アカン?」
エッちゃんは、うーんと考え込んだ。
「黒川、チーム入んの?」
ハッタンが声を掛けてきた。黒川はエッちゃんの苗字だ。
「今誘ってんねん」
私が答えると、
「ええやん、入りいや」
ハッタンがエッちゃんを覗き込む。エッちゃんは真っ赤になってハッタンから顔を背けた。
「でも……へ、下手くそやし……」
エッちゃんが詰まりながら答える。顔は反対向いたままだ。
「下手でもええやん」
なあ?とハッタンがこっちを見る。
「うん。下手やから練習してんねん。そんなん言うたら私かって下手やで」
なあ?とハッタンを見た。
「明日土曜日やし、練習あるし見に来たらええやん」
ハッタンの言葉にエッちゃんはそろそろとハッタンの方を見てから、うなづいた。
やったあ。
「明日授業終わったら一緒に行こう」
エッちゃんにそう言うと、エッちゃんは笑って
「うん」
とうなづいた。
笑ってくれてホッとした。これで野球も辞めなくて良いし、エッちゃんも泣かんで良い。あー 良かった。
「女の子増えるし、良かったな」
ハッタンもニッコリした。
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