打ち上げ花火
影神
見守る者達への
バン!バババン!
「うわぁ、綺麗。」
「君の方が綺麗だよ。」
浴衣を着た。嫁さんを見つめる。
嫁さん「後何回。そう、
言ってくれるのかしらね。」
バン、バンバン!
何回でも。だよ、
私達は久しぶりに開催された、
実家の花火大会へとやって来た。
「パパあれ買って?」
「うん。
もう少し、空いたらね。」
「ぅん、」
娘も大きくなって。今や花火の音よりも、
屋台の光る物の方が気になる様になっていた。
バン、バン!
時が経つのは早い。
ついこの間まで喋れなかったのに。
今や、上手に対話する様になっている。
バン!バン!バン!
夜空いっぱいに広がる花火を見て。
私は久しぶりにじいちゃんの言葉を思い出した。
じいちゃん「同じ"爆発"するもんでもなあ?。
人が暮らす真下に落とせば【悲劇】で、
人が見上げる空に上げりゃ【感激】ってな。
お前には、どっちが良いのか。
きちんと判断出来る大人になって欲しいなあ。」
バン!
娘「ねぇ、パパ?」
「なあに?」
娘「綺麗だね?」
「うん。」
目の前に居る妻や、腕の中に居る子供。
その他の人達は。
目の前の夜空の爆発を。皆、楽しそうに眺めていた。
同じ日に。
"決して繰り返してはならない惨劇"
が、あった事を。
私達は後、どれくらい。
後世に伝えていけるのだろうか。
核で脅され。
少しずつ大切なナニカを、奪われ続ける日々。
目に見えない戦争は音も無く続いていて。
場所が違えば。大切な人が目の前で息を引き取る。
戦争に。
どちらが正しいも無い。
人の命を奪う行為。
【戦争】
そのものが、間違いなんだ。
じいちゃん「今じゃ過去の出来事を。
面白可笑しく。まるで馬鹿にするかの様にする事が。
当たり前の様に、曲がり通っている。
どんだけ苦しかった事か。どれ程悲しかった事か。
私達が受けた傷は、"未来永劫"に。
癒える事はない。
だが。私達が受けた傷だからこそ。
私達だからこそ。
きちんと伝えていく必要がある。
それは亡くなった人達への。せめてもの。
私達が出来る【弔い】なのでは無いだろうか。」
そう、説教臭い話をするじいちゃんの話を。
皆はあまり聞かなくなって行った。
私は子供ながらに。それが、
何だか。寂しかった。
「どうして。
皆はじいちゃんの話を聞かないの?」
じいちゃんは優しく私の頭を撫でた。
じいちゃん「皆。自分が生きるのに必死なんだよ。
自分の事で精一杯で。
周りに目を配る事が出来ない。
いざ、周りに目をやったとて。
人の悪い所を見付けては叩く。
自分がやられたら、嫌なのに。な?」
「どうして。?」
じいちゃん「それは、自分が叩かれない様に。
そうやって、刃先が向かない様に。
一生懸命になって、振り回しているからなんだよ。」
「皆。弱いんだね。」
じいちゃん「そうさ。
でも、だからこそ。
人は助け合うんだよ。
意見が合わなくたって。
私達は動物じゃあ、無いんだよ。
言葉を使って。
話し合ったり、理解したり。
そうやって一緒に生きて行かなくちゃいけないんだ。
分かるかい?」
「うん。」
じいちゃん「いい子だ。」
バン!バババン!バン!
じいちゃんの奥さん。
ばあちゃんは。
戦争で亡くなった。
じいちゃん「おーい。
見てるか?。
綺麗だよな??
凄く綺麗だよ、。
お前と一緒に。
こうやって、見たかったよ。。」
夜空に向かって話すじいちゃんの目には。
哀しみの跡が、深く現れた。
娘「この人は、だあれ?」
「パパのおじいちゃんだよ?」
娘「この人は、?」
「パパのおばあちゃん。
会った事はないんだけど。きっと、
お空からおじいちゃんと見ているよ。」
バン!バババン!
娘「おじいちゃんとおばあちゃん。
お空から見てるかな、?」
嫁さん「きっと、ね?」
身体に温もりを感じる。
嫁さん「もう少し。早く来れたら、ね。」
ヒュー、、
3人で眺める夜空には、大きな花火が上がっていた。
バン!
「きっと一緒に見ているさ。」
私が出来るのは所詮こんな事。
こんな事しか出来ない。
けれど、誰かに伝わって欲しい。
戦争がイケナイ事だと言う事。
助け合い、分かち合えば。
もっとメリットがあるという事。
誰にもその人の【命】を奪っていい権利など。
『誰にも、無い』
事。
間違っている事は繰り返さない事。
正しい事は、国が違えど学ぶ事。
誰かを傷付けるくらいなら。
誰かを癒してあげよう。
人の力は。正しく使えば。
より、良い事が起きる。
それはやがて大きな力となり。
それが"絆"ともなりえる。
起きた事を忘れないで。
起きた事を繰り返さないで。
悲しみや苦しみは。
決して、、
消えないのだから。
やられたからやり返すのではなく。
起きてしまった事をきちんと伝えよう。
そうやって相手にもちゃんと伝えるんだ。
私達は、心で考えて。言葉を使って、話し。
相手を理解し、互いに助け合う生き物なのだから。
2度と繰り返さない様に、
打ち上げ花火 影神 @kagegami
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます