第123話
町に着くと、その女の子を修道院へ連れて行く。
今日はエミリーが居る日なので、『念話』で門前まで迎えに来て貰う。
「その子ね?
食事は?」
「向こうを発つ前にパンをあげたけど、もっと食べさせた方が良いと思う」
「分った」
エミリーが女の子に微笑む。
「先ずはお風呂に入ろう。
その後でご飯にしようね。
私に付いて来て」
彼女がにっこりしながら手を差し出すと、女の子がおずおずとその手を握る。
エミリーに連れられて行く女の子を見ながら、俺は院長室へ。
俺だと分ったマルチナさんに歓迎され、お茶を出されて話をする。
「先ずはご報告から。
既にエミリーからお聞きだと思いますが、先日正式に彼女を妻の1人として迎え入れました。
今後とも宜しくお願いします」
「ええ、勿論です。
とても喜ばしい事です」
にっこりと笑いながら、そう言ってくれる。
「それから、先程ここに10歳くらいの女の子を連れて来ました。
他の村で両親を盗賊に殺され、たった1人で空腹に耐えていたので見過ごせませんでした。
申し訳ありませんが、こちらで保護していただけないでしょうか?」
「連れて来てくださって有り難うございます。
私共が責任を持ってお預かり致します」
「感謝します。
最近、運営上で何か問題はございませんか?」
「順調そのものですよ。
あなたのお陰で全てが楽になっております。
特にお風呂は本当に助かりました。
毎日入れるようになりましたから」
「予備の魔石はエミリーに持たせてあるので、魔石の魔力が切れたら遠慮なく言ってください」
「有り難うございます」
「・・それから、寄付としてこれを。
良い仕事に恵まれたので、そのお裾分けです」
金貨100枚が入った皮袋を、テーブルの上に置く。
「この間も多額のご寄付を頂いたばかりですし、毎月の収入まで保証していただいておりますから、そこまでお気を遣わなくても・・」
「ここも
礼拝堂のパイプオルガンも定期的にメンテナンスが必要でしょう。
基礎教養を学ぶための書籍もあった方が良いでしょうし、そうした際の費用に悩まれることがないよう、今後も協力させていただきたいと考えております」
「・・エミリーは、本当に良い方と結ばれました。
女神様に感謝致します」
俯き、涙を拭くマルチナさんを見ながら、俺は思う。
力や資金は、俺が大切だと考える人達のために使いたい。
向こうの世界と違って、こちらでは大金を持っているだけでは、それ以上増えない。
人に投資し、人を育てることで、その人物がやがて生み出す社会への利益を享受する。
それが、俺流の資金運用なんだ。
修道院を出て、ギルドに依頼達成の報告に行く。
その後、お昼休みになったエレナさんと共に、マーサさんの店へ。
2人でゆっくり昼食を取り、仕事に戻る彼女と別れてグルの町に跳ぶ。
ビアンカさんから奴隷解放に従わない商人がまだ居ると報告を受け、そいつらの家へ。
『従わないなら町を出ろ』と忠告し、それも無視した人物は、その場で首を刎ねて回った。
そいつらの全財産を没収し、家族は例外なく1人金貨5枚だけを持たせて追放。
1億6千万ギルという大金を得た一方で、町から過半数の商人達を排除することになり、この際だから、騎士団を使って商人達の分別を始めた。
彼らを1箇所に集め、集団面接を行い、赤く映る奴は全財産を没収の上、1人金貨5枚を持たせて追放。
無色の者は奴隷の不所持を確認し、従えば何もせず、逆らえば強制追放。
青く映った極少数の人間にその分野の取引の大半を任せ、もしそれで住民の生活が滞れば、何らかの善後策を考えることにした。
青く映った彼らに、他から没収した食料や資材などを貸し出し、利益を折半して彼らに売らせることにする。
その者達が力をつけ、町の商売を回していけば、やがてはもっと良い町になってゆくだろう。
一仕事終え、帰ろうとしたら、ビビアンから剣の稽古をせがまれる。
1時間程それに付き合ってやると、今度はビアンカから政策についての相談を受ける。
町の人口が1割くらい減りそうだと告げられたので、『戦争に使うつもりはないから全く問題ない』と答えると、苦笑いされた。
夕食の時間には間に合わず、訓練の時間にやっと自宅に戻る。
嫌な事があっても、自分の膝の上で嬉しそうに腰を振る妻達を見ていると、心が癒される。
風魔法はサリーも習得していたのを思い出し、ビアンカに頼みはしたが、やはりサリーから授けて貰おうと、訓練後に彼女を自室に呼ぶ。
表情と仕種、その内部の動きの3つで喜びを表現した彼女は、3時間かけて、ゆっくりと俺に『風魔法』を伝授してくれた。
お返しに3回放つと、四肢と唇、舌で幸福感を伝えてくれ、その喜びに浸りながら、彼女は深い眠りに就いた。
その後の大森林探索で、ドラゴンゾンビが3つ目の『毒耐性の書』を落とす。
『土の迷宮』でも、大地の乙女から超高濃度の魔石が7つもドロップし、グルの町ではうんざりもしたが、総合的に見れば良い日だと思えた。
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