第82話 課金とはなんじゃ?

 真弓高校は終業式を終え、夏休みとなった。インターハイの開催日まで、あと一週間程となった頃。

 真弓高校の弓道部員達と一緒に、弓道専用のアリーナへと来ている。


 最近は朝から夕方頃まで、よくここで練習している。

 基本的にはインターハイの競技ルールレギュレーションも、選抜大会と同じ競技ルールである。

 違うのは、戦うステージにある要素が加わる事だ。


 それは、機械的な仕掛けギミックだ――

 例えば、設置された仕掛けを操作すると。

・跳ね橋が開閉する

・水が放流される

・門が開閉する


 など、それはあくまで機械的な作動条件があり、自然現象的な要素は基本的にない。

 それに、それらは最初に説明されるため、隠し要素的なものもない。


 やはり魅せる競技というだけあり、観客は大いに盛り上がる。

 最近はもう邪道だとかは思わないが、やはり慣れていないと立ち回りに影響するので、色々と練習している。


 どんなステージで、どんなギミックなのか。

それは試合開始直前まで分からないが、似たようなステージは、弓道FPS台にも搭載してある。

 個人的にはいかに場数を踏むか、だと思っている。


「終わったようだな」


 俺はブース内にある、モニターを眺めていると、試合結果が出た。


 先程の試合は「藤原・妖狐」対「矢野・榊󠄀原・妹尾」である。

 勝利したのは「藤原・妖狐チーム」やはり、藤原はかなり強い。


 試合を終えた皆が、弓道FPS台から出てくる。

 各々互いに得意な事、不得意な事を教え合っている。

 時間的もいい頃合いなので、ここで練習の終わりを伝える。


 すると。


「妾は、もっと違うレギュレーションでやりたいのぉ。たまには、ゲームとしても、弓道FPSをやってみたいのじゃ」

「クックックッ、それは面白そうだな! さすがは鈴っちだ、名案だな!」

「あーそれだったら、あたし面白いレギュレーション知ってるぜ!! 今からやるか!?」


(おい、遊んでいる場合か? だけど、練習後だしなぁ〜)


 その言葉を聞いて、矢野はため息をつくと、私は帰るからと一言。

 妹尾もパーティーがあるので、帰ると言っている。


「わたくしは、お迎えを呼びますわ。矢野さんも、もしよければ、家まで送りますけど?」

「いや、駅でいい。すまないな、助かる」

「それじゃあ決まりですわね。皆さ〜ん、ごきげんよ〜〜」

「悪いけど、私もそうさせてもらう」


 そう言って2人はブースから出ていく。

 正直練習でないのなら俺も帰りたいのだが、この子たちの帰りがあるので、俺は帰れない。


(はぁ、仕方ないよな)


「このレギュレーションはだな、空を飛んで戦うんだぜ!」

「おお〜これもわるくないな!! ニャにニャに———ぅわぃ!? 課金ニャ〜」

「のうのう、おろちぃ、課金とはなんじゃ? 楽しい事かの?」

「クックックッ!! それはだなー…」


(ヤバい、逃げろ!)


「ちょっと、チャージしてくるわ、やってていいぞ」


 弓道FPS台に群がる3人にそう伝えると、俺はブースを出て、廊下を歩いていく。

 最近危険予知能力が向上したと思っている。我ながら的確な判断だ。


(使用時間の延長も、手続きしないとな)


 俺は受付けで申請を済ませた後、喫煙スペースへと向かったのだった。


〈ピコンピコン〉


「……………」


 俺は仕方なくスマホを取り出すと、アプリ『YUMI』を起動した。




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