第68話 スマホのアプリ、YUMI

〈ピコン〉俺はスマホでアプリを起動し、コミュニケーションツールである『YUMI』を起動した。


(グループ名、弓道部)


ーーーーーーー


おろちぃ

(先生、明日暇? 何か食べさせて〜〜お願いニャ!)


先生

(まったく意味がわからん、ヤダ)


おろちぃ

(あれぇ~ニャンで〜? そしたらあの秘密……喋っちゃうニャ! いいのぉ〜?)


先生

(またいい加減な事を言う、早く帰って寝なさい)


おろちぃ

(先生の秘密!)

(先生は〜すずっちと〜〜! ニャ〜〜♡)

(ねえ知りたい? 知りたい人ー!!)


ーーーーーーー


「藤原は、なんでそこで妖怪を登場させやがる。同じグループメンバーだろうに」


〈ピコンピコン〉


「ん?」


ーーーーーーー


まいちゃん!

(はーい! 知りたーい☆)


矢野

(わざわざココでやらないでよ……)


おろちぃ

(ウニョウニョ〜〜ピーーー!!)

(この前……キスしてたニャ♡)


まいちゃん!

(キャー!! どこどこ!?)

(もしかして………学校の屋上!?)


おろちぃ

(ブッブー!! 正解は〜〜………)

(ニャーーー!! ニャーーー!!)


先生

(おい宇宙人……疲れるんだけど……)


まいちゃん!

(大丈夫だって〜☆)

(皆おろちぃの嘘だって、知ってるよ!!)


先生

(いや、そこは心配してない)


ーーーーーーー


「はぁ……」


〈ピコンピコンピコン〉


「……………」


ーーーーーーー


狐の巫女

(おろちぃの言う事は本当ぞ?)

(わらわ、先生とチュ♡ したぞ?)


まんじゅう

(わたくしも見ましたわ! 驚きましたの……)


おろちぃ

(ほれ、真実であろう??)

(クックックックックックックックックッ)


まいちゃん!

(………マジデスカ?)


ーーーーーーー


「おいぃぃぃ! 妹尾と妖狐!!」


 顔を上げ、2人が座っていた場所へと体ごと振り向く。

 だが、その場所に居たはずの二人は、姿を消していた。


「あの2人、どこに行ったんだ?」


〈ピコンピコンピコン〉


ーーーーーーー


まんじゅう

(それは……放課後の弓道場…………)

(更衣室にて…………あぁ……)


狐の巫女

(わらわも、あれは正直驚いたぞ!)

(突然肩を掴まれ、無理やり……コンッ♡)


まいちゃん!

(オェ! オェェ〜〜!)


おろちぃ

(ねえねえ今どんな気持ち? どんな気持ち?)

(ねえ? ねえ? ねえ?)


先生

(………何が食べたいんだ?)


おろちぃ

(はい論破!)

(え〜とね~ニャにがいいかニャ〜〜)


先生

(論破の使い方違うだろ………)


ーーーーーーー


 そこから立ち上がると、スマホをポケットにしまう。

 道場の雨樋を閉め、俺は射場から下駄箱へと向う。

 そこにはもう俺の靴しかない。

 俺は玄関から外に出ると、鍵を閉める。


〈ピコンピコンピコン〉


「もうヤダ……………」


 俺はその場にしゃがみ込むと、絶望する気持ちでスマホを手にとった。


ーーーーーーー


まんじゅう

(はーい、わたくしも食べたいですわ!)


狐の巫女

(わらわも食べたいのじゃ!)


おろちぃ

(わーい! じゃあ何にするぅ?)


まんじゅう

(美味しいお寿司屋さんを知っていますわ!)

(あそこの赤身が、絶品ですのよ~)


おろちぃ

(はい決定★ もう決定★)

(まんじゅう←予約ヨロ!)


狐の巫女

(わらわは、いなり寿司が食べたいのぉ)

(ペロり♪ じゃ!)


先生

(絶対高いだろ? なあ?)


まいちゃん!

(くっそぉぉぉあたしも行きてぇぇ!)

(用事があるからいけねぇぇぇぇ!)


まんじゅう

(今確認したら予約とれましたわ!)

(人数ですけど、カサカサ娘は?)


矢野

(私も用事があるから無理)

(つーわけでよろしく、クラゲ女!)


まんじゅう

(!?)


まいちゃん!

(えぇ!?)


おろちぃ

(ニャ! ニャ!)


狐の巫女

(わらわは楽しみじゃ!!)


ーーーーーーー


 こうして、俺の夏のボーナスは、モンスター達の胃袋を満たすため、消え去る事となる。


「はぁ……急に姉ちゃんのお店ってのも、申し訳ないんだよな~~」


〈ピコン〉


ーーーーーーー


矢野

(ところで……さっきのは嘘の話でしょ?)


先生

(そうだ、俺は罠にはめられたんだよ)


おろちぃ

(じゃあ〜わたしとキスするか? ♡)


先生

(もう姉ちゃんの店、連れてかないぞ?)


おろちぃ

(お休みなさい!!)


ーーーーーーー



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