5人の弓道部員達

第67話 問題児達のステータス

 部活の片付けを終えた後、射場から矢道へと向いて座り、的中簿を見ていた。

 インターハイの開催まであと1ヶ月を切った頃、現在の部員達の様子はこうだ。


―――矢野やの 琴音ことね―――

 的中率は72%

 選抜大会を終えて、弓を少し強くしてからもグングンと的中率を伸ばしている。

 やっぱり口が悪いが、最近は後藤先生と呼んでくれるようになり、内心安堵している。

 性格はクールな奴ってポジションになりつつあり、当初と比べれば、怒る頻度も減少している。

 仮想空間での戦闘力も、かなり向上しているので、試合でも問題なく、活躍できそうだ。


学年:2年生

流派:正面打起し

髪型:髪型は、黒髪のショートヘアだ。


―――榊原さかきばら まい―――

 的中率は70%

 選抜大会を終え、少し的中率は低下した。だが最近は緩んで外すといった癖が無くなったので、技術的には向上している。

 最近気がついたのだが、わりと面倒見がいい所がある。妖狐に弓道用語を教えている姿を、よく見かけるからだ。

 仮想空間では藤原の技を習得すべく、練習をしている。


学年:2年生

流派:正面打起し

髪型:最近の髪型は、金髪のポニーテール。長さが背中くらいまで伸びたせいか、よく一本に縛っている。


―――藤原ふじわら ひとみ―――

 的中率は97%

 その的中率は文句なしのエースだ。相変わらずの宇宙人パワーで、その思考は極めて謎である。

 最近は何やら必殺技を考えているらしく、色々と試行錯誤しているようだ。

 選抜大会の結果もあり、皆も認めるリーダーである。


学年:3年生

流派:斜面打起し

髪型:髪型は紫色のミディアムウルフ。依然と、レンズのない眼鏡を掛けている。ちなみに、フレームの色は"こげ茶"


―――妹尾せのお 沙織さおり―――

 的中率は65%

 相変わらずのお嬢様っぷりだが、正射必中を掲げ、練習に励んでいる。

 選抜大会を終え、本人の希望により『並寸』から『伸寸』へと弓を変えた。

 的中率は下がったが、弓のリーチを長くした分、仮想空間での防御力を気にしている。最近は矢を弾く技を練習している。


学年:1年生

流派:正面打起し

髪型:髪型は、水色のストレート、長さは肩くらいだ


―――妖狐ようこ すず―――

 的中率は68%

 最近入部した少女だが、一難去ってまた一難とはこの少女の事だと思う。

 狐が好きらしく、練習でも狐耳をつけている。新しく黒い袴を頼んだのだが、赤色がいいらしく、たまに妖狐だけ赤色の袴を着ている。

 仮想空間ではその射形のせいもあり、遠距離が苦手だが、動きは速く、至近距離戦では結構強い。


学年:1年生

流派:斜面打起し

髪型:髪型は、狐色のショートボブ、外ハネした毛が特徴である



「はぁ……インターハイのメンバーを、どうするかだよなぁ〜」


『全国高等学校総合体育大会弓道競技』通称『弓道インターハイ』において、俺は初戦で戦うメンバーに頭を悩ませていた。


 妖怪巫女は除くとして、選抜大会を突破した4人の中から、誰を組むかである。

 藤原は入れるとして、残りの2枠をどうするか、悩みどころだ。


 部活の練習を終え、皆帰路につき、俺は1人道場に残った。そのつもりだったのだが……


「そうですの? それは大変ですわね。巫女の立場にも、色々と面倒な事がありますのね~参考になりますわ!」

「そうなのじゃ!! やはり持つべきは同胞はらからよの〜妾の苦労が分かるとは。そちのお嬢とやら立場が、いかに大変か……」


(はらからって……それ女子高校生が使う言葉か?)


 俺の隣では、仲良さそうに会話をする妹尾と妖狐がいた。

 明日が日曜日のせいか、やたらのんびりとしているようだ。


(まぁ、仲良くていいけどさ)


 あれから妖狐の事を色々と知ったのだが、どうも山奥にある神社で弓を引いているそうだ。

 わりと大きな神社らしく、秋頃には弓の神様をまつるべく、流鏑馬やぶさめといった行事も行うらしい。

 妖狐は馬に騎乗して、矢を射るという。


 妖狐はもともと、弓道部としての活動にはまったく興味が無かったらしいのだが、この前の選抜大会を見て、興味が湧いたとの事。


 そして閉会式前の納射で、俺の射を見たことから、それが入部の決め手となったらしい。

 つまりこの妖怪を召喚したのは、ある意味俺が原因となる。


(黙ってれば、わりと可愛いとは思うけど……)


 妹尾と楽しそうに話す、妖狐に視線を向ける。


 狐色の髪に、小柄な体型。

 童顔ではなく、どちらかといえば大人っぽい。

 身体は筋肉質だが、特にゴツゴツとした感じもない。 


(だけど、変わり者なんだよな。この子)


〈ピコン〉携帯が鳴ったので、俺はスマホを取り出した。


(なんだ、こんなタイミングで。すっげぇ嫌な予感がするぞ)


 そして、ここからしばらくツールでやり取りをするのだが……この時はまだ、この先に惨劇が待ち構えているとは、思いもしなかったのである。

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