第43話「強敵!? 海蛇の北条!」

 試合開始の合図により、動き始めた真弓高校。

 3人は周囲を警戒しながら、西校舎の一番西側を壁に沿って北進している。


 それに対して、二ノ宮高校の選手は散ってゆく。

 校舎近辺で足を止めると、それぞれ周囲を警戒している。

 どうやら偵察をしているようだった。


「相手のリーダーが見えたら、一旦後退しろ。どのみち、お前らの手には終えないだろう。あれは、私が仕留める」


 二ノ宮高校のリーダーである北条は、中庭の辺りで静止している。

 同じように、残りのメンバーも東西に分かれたまま、校舎沿いで周囲を警戒していた。


 真弓高校の選手らは、校舎沿いを半分程度進んだところで、その足が停まる。藤原だけ先行すると、矢野と榊󠄀原は矢をつがえた。

 ジリジリと、そのまま藤原は進んでいく。


 藤原と相手選手との距離は、およそ20メートル。

 藤原が矢をつがえ、弓構えた次の瞬間――声を上げた。


「校舎沿いの北側、一斉射撃ニャッ!!!」


――――バシュン!

   ――――バシュバシュバシュ!


 真弓高校から、多数の矢が放たれる。

 二ノ宮高校の選手は、すぐさま校舎に身を隠しつつ、中庭に居る北条に合図を送ったようだ。


「よぉし、各自予定通りやれ!! 相手は西側の校舎沿いだ、前田は後退しろ!!」

「来るニャッ!? 二人は先に行くニャッ!!」


 矢野と榊󠄀原は、校舎の南側へと移動していく。


 中庭に居た北条が、前田と呼ばれた選手と入れ替わるようにして、藤原と対峙する。藤原の姿を見るなり、矢をつがえ、乱れ射る。


―――バシュン―バシュバシュ!

―――パーンッ! バシュバシュバシュン!!


 互いの矢がぶつかり合い、弾けている。

 藤原は北条に対し、その場で矢を射ち続けている。


「待っていたよ! ふじわらぁぁ!!!」

「受けてたつニャ、北条!!」


 前田は、東側の校舎沿いに居た筒野と合流し、そのまま北の出入口から校舎内へと入っていく。

 矢野と榊󠄀原は南側の出入口より、西側の校舎内へと入った。


―――――バシュッバシュバシュ!

    ――――パリィン―パリィンッ!


 校舎の窓ガラスが次々と割れていく音が鳴り響く。

 中央にある中庭を、双方の矢が激しく飛び交う。


 *


 その光景に、アリーナの観客席が盛り上がっている。


「オオオ!! すげーすげー!! 窓ガラスごと矢を射ってやがる!!」

「いいぞー! やれやれーー!!」

「キャー!! 頑張れぇ~!!」


(危険だ。一歩間違えれば、大怪我だぞ)


「後藤。そっちにも、なかなか、面白い選手がいるようだなぁ?」

「武田。何楽しんでやがる!? 一歩間違えれば、大怪我なんだぞ?」

「どうせ仮想空間での話だろぉ? そんなんじゃ、ウチには勝てねぇよ」

「……っち」


 確かに武田の言う事にも一理ある。

 俺は返す言葉が見つからず、再び試合を注視した。


 *


 校舎の西側では、リロード時間となったのか、藤原が走り出す。

 後ろを警戒しながら、その場から南進していく。

 そしてその後を追うように、北条が追従してくる。


「逃がさねぇ! 逃がさねぇぞ……ふじわらぁぁぁぁぁ!!」

「ニャッハッハ!! やるニャあ!! だがここからニャッ!!!」


 校舎の南側を抜け、藤原はそのまま中庭へと飛び込む。

 北条も、追従の手を緩めない。


「いいかぁ!! こいつは私の獲物だぁ!! 手を出すなよぉ!! ハァーッハッハ!」

「いいかニャッ! そのまま上を目指すニャッ! こいつは、私に任せるニャッ!!」


 両校のリーダーは、そのまま中庭の中央へと移動する。

 リロード時間が終わり、藤原と北条は、互いに矢をつがえる。

 割れたガラスが飛散する中、互いに矢を射ち合う。


――――バシュバシュッ!

        ―――バシュン―バシュ!


 校舎内を飛び交う矢が、2階、3階へと上がっていく。

 割れていくガラスの破片により、その中庭の光景は、まるで雪でも降っているかのようだ。


 東側の校舎から、飛んでくる矢の数が減っている事に気がつく。

 だが気がついた頃には、東校舎1階の北側から、前田が飛び出してきた。


 前田の存在に、藤原が気がついたが、これでは2対1だ。

 だがその時にはすでに、前田は会に入り、藤原を狙っていた。


「そうかニャ……最初からこれが狙いかニャ!!」

「ほらほらぁ! よそ見してんじゃねぇぇぞ!!」


 西側の校舎、屋上へと上がっていく矢野と榊原。

 だが先に東側の屋上へと上がった筒野が、西側の屋上にある、鳩小屋の出入口を狙い、矢を乱射する。


――――バシュン―――バシュバシュ!


 筒野の矢によって、矢野と榊原は屋上に出る事が難しい。

 これでは、藤原の援護は難しいだろう。


――バシュンーバシュン!

―――バシュバシュバシュ!!

        カンッカンカンカン――――


 中庭を挟むようにして、相手選手2名から、猛攻を浴びる藤原。

 なんとか弓で矢を弾くも、北条を含む2対1ではさすがに苦しそうだ。


「あぁ~ハッハッハ!! 終わりだねぇ! ふじわらぁ!!!」

「ハァ……ハァ……」


 勢いよく動き回っているせいか、藤原の息が荒くなっていく。


 屋上には弓を構え、鳩小屋の出入口を狙い射る筒野。

 狭い出入り口では、榊原が弓を振り回す空間はない。

 その時だった。


――――ガッシャ――ン!!―――


 西側の校舎、場所は3階。窓枠に刺さった2本の矢が、中庭へと落下していく。そのまま落下するとしたならば、それは北条の頭上だ。


「ちぃ!! チョコザイな!!」

「ハハハ。助かったニャ………」


 北条は、頭上に落ちてくる窓枠へと狙いをかえる。

 落下してくる窓枠を目掛けて、矢を放つ。


―――バシュン―――バキィ!!


 見事に、その矢は窓枠をとらえ、落下してくる軌道を変える。

 その一瞬の隙をついた藤原は、中庭を北上し、前田を狙い射る。


――――バシュンッ!

        ―――パァーンッ!!


 その矢は見事、敵を貫いた。

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