◉トーナメント準決勝

第42話 フィールド「夜の学校」

 招集場所と集まった俺は、武田と並行し向かい合いあっていた。

 その隣には、両校の選手達が整列している。

 そんな中、矢野と筒野は互いに睨みあっていた。


 次の対戦相手は『二ノ宮高校』

 顧問である武田は、口を開いた。


「ついにこの時が来ましたねぇ……ねぇ? 後藤葵。宣言通り、白黒はっきりとぉ……させようじゃありませんかぁ~」


 二ノ宮高校のリーダーである、紫色の短い髪をしている少女が喋り始める。

 だがその目は蛇のように鋭く、藤原を睨みつけていた。


「お前が、"毒蛇の藤原"だな? 私の名は、北条久美ほうじょうくみだ。通り名は……"海蛇ウミヘビの北条"……どうか、楽しませてくれよぉぉ」


『海蛇の北条』聞いた事がある。

 相手の精神を崩壊させるかのようなその戦い方は、狙われたら最後。

 苦しめられたのち、最後には倒されるという……

 捻くれた性格の持ち主だが、その技術は藤原と同じレベル。つまり、強敵だ。


 その言葉に、藤原は何も反応を示さない。

 むしろ相変わらず、レンズのないメガネの奥にある瞳は、いつも通りだった。


「武田智。戦うのは選手達だ、これだけは言っておく」


 冷たく、怒りの込めた言葉を武田にぶつける。

 武田は怖い怖いといった表情になると、不気味に微笑んだ。


「そうだな、私が"毒蛇の藤原"だ。"海蛇の北条"とやら、お前の事は知っている。ああそうだ、知っているとも。だからこそ、もう攻略法は出来ているぞ?」


 いつもの口調で、淡々と喋る藤原。

 その様子が気にくわなかったのか、北条は眉をピクリと動かし、眉間にシワを寄せた。


「面白い奴だ……まずはお前を葬ってやろう」

「望むところだな」


 両者、挨拶を終えたところで、それぞれ弓道FPS台へと向かう。

 俺と武田は選手達を見送り、アリーナ席へと向かった。


(頑張れよ、どんな結果になってもな)


 アリーナ席へと座ったところで、前方にステージが映し出される。

 場所は学校の校舎で、夜のステージである。


 この公式戦では、場合によっては視界の悪い夜のステージで戦う事もある。

 これもパフォーマンスの一種なのだが、やはり昼間と比べ、その雰囲気はガラりと変わる―――



 ステージの広さは、約70メートルの箱形。

 その中央部には、幅10メートル程の中庭があり、それを挟むようにして、東西に一般的な校舎が2つ立ち並んでいる。


 校舎の周囲には、中庭を除き、背の低い街路樹と照明が設置されている。


 校舎の階数は3階建てである。

 その高さは約12メートル。

 奥行きは約50メートル、およそ教室が6部屋ある程度だ。


 校舎内の両端には、それぞれ階段が設置されており、そのまま屋上に行く事が出来る。

 鳩小屋のような建物から屋上へと出たならば、そこに障害物は殆どなく、フェンスなどといったものもない。


 ステージの対角線、その両端に、両校の選手が試合開始の合図を待っていた。


 アリーナの観客席が、ザワザワとしている。


「おい。この試合、どうなると思う?」

「それは〜さすがに二ノ宮高校じゃねぇか? 昨年は、決勝戦まで行ってんだぜ?」

「わたしは、真弓高校を応援するわ〜〜頑張れ〜」


 観客席からの声に武田は反応し、イライラしている様子となる。

 独り言なのか、ボソッと、何かをつぶやいた。


『それでは只今より、〈二ノ宮にのみや高校〉対〈真弓しんきゅう高校〉のトーナメント戦、決勝戦進出をかけた、準決勝戦を開始します』


 ステージの上空に、対戦開始までのカウントダウンを表す、液晶パネルが降りてくる。


『3・・2・・1・・――試合開始!』


 準決勝戦、試合開始だ。


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