第37話「熱血魂、ガトリングアロー!!」

 試合開始の合図と共に、熱血高校が動き出す。

 スタート場所から、猛烈な速度で橋へと走り出す。


「速い……陸上選手かのような速さだ」

「ポッポッポ、日頃から、鍛えてますからな」


(そんな笑い方するんだ……ちょっと驚いたわ)


  *


「ゆくぞぉぉぉぉぉぉぉ!!!! 続けぇぇぇぇぇ!!!」


 相手リーダーである郷田が発するその声には迫力があり、ちょっとした小動物なら逃げ出すのではないかと思うくらいパワーがあった。


「ウチらも突撃ニャァ!!!」


 藤原も負けじと声を出しつつ、その場から走り出す。

 だが相手選手の移動速度が速く、このままいけば、中央は相手に占拠されてしまうだろう。


 同時に橋を目指していた真弓高校だが、相手の速さを理解したのか、藤原は一番手前の防護壁がある場所で立ち止まる。


「思ったより速い……やるニャ〜」


 3人は橋の上で散ると、それぞれ木製の防護壁に身を隠しつつ、弓に矢をつがえ、弓構えた。


――――バシュン―バシュバシュ!


 矢を放つも、相手はすでに中央の防護壁まで辿り着いている。

 体が隠れる程度の高さがある、防護壁に矢が刺さっていく。


       ――――パスパスパスッ!


 中央を占拠した熱血高校の選手は、体を休める間もなく、弓に矢をつがえた。防護壁の隙間から、各自矢を一斉射撃する。


―――バシュンッーバシュバシュバシュッ!


 ガトリングのように、勢いよく矢が飛んでいく。

 真弓高校の選手らは、背の低い防護壁に身を隠すも、射ち返す事は難しい。


「うにゃあ!! これはまずいニャ!!」


 熱血高校の選手は、3人でうまくローテーションしながら、矢を途切らす事なく射っている。

 最初程の連射力はないが、真弓高校の動きを止めるには、十分な矢数だった。


―――――バシュン――バシュ!

――バシュッ!


 その間を狙って、真弓高校が幾度か矢を打ち返す。

 だが。それはやはり、相手チームの防護壁に阻まれている。

 このままでは、いずれ防護壁が持たなくなるだろう。


 熱血高校のリーダーが、真弓高校に対して、揺さぶりをかけてくる。


「どうした? 真弓高校の選手達よ!! 隠れているだけでは、私たちに当てる事など、不可能と考えよ!!!」


 真弓高校は序盤の勢いを無くしたかのように感じられる。

 声は聞こえないが、矢野と榊原の話を、藤原が聞いている。


「さぁ、いつまで隠れているつもりだ! 女らしく戦えぇぇぇぇぇ!!」

「ま…まずいニャ。皆! 必死に耐えるニャ!!」

「もう一度やるぞ、熱血高校の魂を見せてやる。はなてぇぇぇぇ!! ガトリングアローーーー!!」


―――――バシュンッバシュバシュ!

―――バシュ!! ――バシュバシュ!


「うにゃぁぁぁぁぁぁぁーやめるにぁぁぁ!!」


 猛烈な勢いのある矢が、藤原達の隠れている防護壁に突き刺さる。

 所々木はえぐれ、このままでは持ちそうにない―――


 *


 アリーナの観客席が、ザワザワとどよめく。


「あちゃーーこれは勝負あったかなぁーー」

「一方的な防戦を見ていると、そう思いますよね〜」

「や〜ん、猫ちゃ〜〜ん、頑張って〜〜!!!」


「まだ希望はあるんだ、諦めるなよ……ん?」


 俺は防戦している藤原達を見ていると、ある事に気がついた。


「ポッポッポ、次のガトリングアローで、勝負はつきそうですな」

「いや……そんな事ない。なぜなら―――」


 アリーナの観客席から、子供の女の子の声が聞こえてきた。

 その小さき声は、歓声の中から高らかに聞こえてくる。


「ねぇ〜〜ママ〜〜あの猫ちゃん、どうして笑っているの〜〜?」


 まるでその少女の言葉が、聞こえたかのようなタイミングだった。

 その言葉に応えるかのように、藤原が叫んだ。

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