◉トーナメント2回戦

第36話 フィールド「橋」

 男子の部、トーナメント1回戦目が終わろうとしていた頃、俺は招集場所へと来ていた。


 対戦校は『熱血高校』

 過去の戦績にインターハイ出場の実績こそはないが、他の公式戦では断続的に入賞している。


 整列している相手選手の様子を伺う、皆女性の割には筋肉質だと感じる。

 相手のリーダーであろうその容姿は短髪で、赤色の髪をしている。

 他の選手も皆肩幅が広く、ゴツゴツした体つきだ。

 両校の選手が整列したところで、挨拶の準備が完了する。


「真弓高校、顧問の後藤と申します。よろしくお願いします」

「リーダーの藤原だ。正々堂々、戦おうではないか!」


 藤原にしては珍しく、まともな言葉を選んだと思う。

 続いて相手校の顧問、大柄なその男が口を開く。


「熱血高校、顧問の山王やまおうです。よろしくお願いします」

「チームリーダーの郷田ごうだだ。魂の熱さでは、誰にも負けない。よろしく頼む」


 挨拶を終えると、それぞれ弓道FPS台へと座り、試合の準備スタンバイをする。

 俺と相手チームの顧問も、所定の場所へと移動する。

 アリーナ席へと座ると、山王先生が声をかけてきた。


「先程は、ウマいコーヒーをありがとうございました。ですが、これは真剣勝負です。全力で行きます」

「ええ、こちらもそのつもりです。ご心配なく、これは勝負だと認識していますから」


 アナウンスが流れると、目の前に2回戦目のステージが映し出された。


 この公式戦では、勝ち上がっていくにつれ、ステージも変化する。

 つまり同じステージで戦う事は、基本的にないのだ―――


 そして次のステージは、大きな川を跨ぐように、巨大な橋が架かっているステージである。


 ステージの大きさは直径80メートル程度。

 橋の延長は約60メートル。その高さは川から20メートル。


 川はステージを横断しており、川を渡って対岸に行くことはまず無理だ。

 川を跨ぐ、コンクリート製の大きな橋を渡るしかない。


 その橋の幅は、車が4台同時に通行できる程度のものであるが、障害物が少ない。

 あるのは背の低い防護壁が15メートル感覚で設置されており、中央だけ背の高い防護壁になっているだけだ。


「頑張れよ、みんな」


 各選手が、それぞれステージの端部で準備をしている。

 そしてアナウンスが流れた。


『それでは只今より、〈熱血ねっけつ高校〉対〈真弓しんきゅう高校〉のトーナメント、準々決勝戦を開始します』


 ステージの上空に、対戦開始までのカウントダウンを表す、液晶パネルが降りてくる。


『3・・2・・1・・ー試合開始!』


 そして2回戦目、準々決勝戦の試合開始だ。

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