金髪ギャルと対決

第4話 おっさんだ、狩るぜ!

 古びた商店街を通り抜け、一番近い駅を目指し歩いていく。学校が街中にあるため、さほど時間は必要なかったようだ。

 そこから大通りにある横断歩道を渡り、大規模なゲームセンターへと向かう。その建物の入り口横にある、広告用の看板に目を向ける。


 そこには『新型弓道FPS台、増設しました』と、書かれていた。


 看板の隣にある駐輪場には、乱雑に置かれた数台の自転車がある。

 自転車のフレームに貼ってあるシールを確認すると、真弓高校と書かれていた。


「なんだか、嫌な予感がする……」


 ひとまずゲームセンター内へと入る。店内に掲示されている案内板を頼りに、様々なゲーム台が置かれた場所の間を奥へと進んでいく。

 階段を登りさらに奥まで進んでいくと、目的の台が置いてある場所が見えてきた。


「あそこだな。しかし、あの光景は柄が悪いな……」


 弓道FPS台の近辺には、チャラい髪型と服装をした青年や少女達がたむろっていた。周囲の迷惑もかえりみず、バカ騒ぎしている声が聞こえてくる。

 そしてその台の少し離れた場所には観賞用の大型モニターが設置してあり、ギャラリーであろう複数の人達がそのモニターを見ているようだ。


(なんかガテン系の人もいるし、やっぱ流行りってすげーな)


 どんなものかと、そのモニターの映像を観てみる。障害物に囲われたゲームステージのような場所で、弓を持つ人型のアバターが矢の射ち合いをしているようだ。


 銃撃戦をしているかのように動き回り、対戦相手を仕留めようと矢を射ちあっている。その中でも金髪の女性キャラが、対戦相手に次々と矢を的中させているのが印象的だった。


(この金髪キャラ、けっこう上手いな)


 毛嫌いしていた競技方法だが、こうやって見ていると案外面白いものだと思う。どうやら3対1で戦っていたようだが、勝利したのは1人で戦っていた金髪キャラだった。


 対戦結果が表示されると、はしゃぎ声が聞こえてきた。

 箱型の台から金髪少女が出てきたので、周囲にいた連中がチヤホヤし始める。


(あのギャルみたいな少女が、さっきの金髪キャラっぽいな)


 弓道FPS台の方へと向かうのだが、案の定チンピラみたいな連中が俺に絡んでくる。


「おいおいおっさん! まさかコレやりにきたのかよぉ?」

「マジ〜? いい歳こいて、ゲームすんのかよ!?」

「順番ってのがあるだろ、代わってくれよな?」


 俺の言葉にチンピラ共が下品に手を叩き、ケラケラと笑い始める。

 どうしたものかと思ったその時、金髪ギャルが喋りかけてきた。


「おっさん。このゲームやりたいなら、あたし達に使用料払えよな」

「なんで、お前らに使用料を払う必要があんだよ?」

「この場所は、あたし達専用だから。払うよな? 使用料をさ!」


 早速おっさんを狩ろうとするこの金髪ギャル。顔が可愛いからとえらい強気である。店員は何をしているのか……このチンピラ共の迷惑行為に対処しないとは。

 そこで、思いついた交換条件を突きつけてみる。


「俺と戦って、もし負けたら高額な使用料を払う。それでどうだ?」

「へぇ〜おもしそうじゃん!」


(よし、この金髪ギャルは食いついたようだな)


「舞はよ〜、弓道経験者なんだぜ? おっさんみたいな素人じゃ、絶対勝てないって!!」

「おい!! 余計なこと言うな!!」


 周囲に居たチンピラの一人が、耳よりな情報を教えてくれる。

 それにしてもこの金髪少女はやはり弓道経験者か。


「なんでもいいけどさ〜おっさんが負けたら、使用料5万だな!!」


(5万!? 最近の若者は、遠慮ってものを知らないようだな)


「……いいぞ、だが俺が勝ったらどうする?」

「ここを占領するのをやめるよ、それでどうだ?」

「わかった、それでいいよ。ただ、レギュレーションはこっちが決めていいか?」

「ああ、そのくらいのハンデはやるぜ。せいぜい頑張って!!」


 それにしてもこの金髪ギャル、口が悪い。

 最近の女の子は口が悪いのだろうか? 困ったものである。

 ひとまず交換条件が決まったところで、俺は台の中へと入った。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る