プロローグ【伝統と変革】

 伝統武道――【弓道きゅうどう

 日本に古くから伝わる、弓を志す者の道。


 左手には身の丈より少し長い『和弓わきゅう』を持ち。

 右手には茶色いグローブのような『かけ』を着用する。

 服装は白い弓道衣、黒い袴姿。靴の代わりに白い足袋たびを履く。


 心・技・体——それぞれを鍛え、礼儀作法を重んじ、矢を放つ。


 凛とした空気の中、弦を引っ張ることで、反り返ってゆく和弓。

 的を狙い、風船が割れるようなその音を鳴らすため。

 放たれたその矢は、高らかな弦音を鳴らし、風をきる。


 従来の弓道において、その競技ルールは。

『動かない的に矢をつ競技であり、その的中てきちゅう数を競うもの』



 そしてこの時代、その弓道が変革へんかくしたものがある。

 それは『弓道 FPSエフ・ピー・エス』と呼ばれるもの。


 この競技は、弓と矢で戦う射撃戦であり。

 その対戦場所は仮想空間で行う。

 まるでゲームステージのような場所を走り回り、矢を射つ。


 変革した弓道において、その競技ルールは。

『対戦相手に、弓から発射した矢をてれば勝利』

『対戦相手の、弓から発射された矢にたれば敗北』


 かつての武道は『武芸』となる【弓道 FPS射撃戦


 そんな時代だからか、弓道に対する想いを忘れ。

 社会の歯車として、日々を過ごしていたその男。 

 弓道競技が変革する以前、凄腕の射手として呼ばれていた名は。


―― 弓の使い手 ――


 転職をきっかけにその男は。

 一風変わった性格をした、クセつよ少女達と出会う―――

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