第15話 霊能力者、異世界幽霊と出会う。
ギルドで依頼の受け付けを済ませて場所を聞いて、やってきたのは屋敷だった。三階建ての屋敷で、周りにある家より二回りほど大きい。庭は屋敷がもう一つ入るほど広く、手入れがされているようで整っている。門を、ギルドで渡された鍵で開けて敷地に入り、屋敷の鍵も開ける。
「失礼します」
煌希は霊を見えるようにして屋敷へ入る。隣には栞が付き添っている。
『綺麗ですね』
栞が周りを見て言う。栞の言うとおり、床には埃一つなく、傷ついている所もない。
『今回もいつも通りですか?』
「何かしようとしてきたら即除霊かな。あ、こっちの幽霊は魔法とか使えるのかな」
『どうなんでしょうか? そういえば、ここに来てから幽霊を見てないですね』
「そうなの?」
煌希は進んで幽霊を見ようと思っていないので、家以外では幽霊を見えないようにしている。
逆に、栞は悪霊が煌希に近づいたときすぐに知らせることが出来るように常に周りを見て警戒している。
そんな栞が見ていないことに、煌希は首を傾げる。
『もしかしたらこの世界では幽霊の数が少ないのかもしれないですね。魔法や神様がいることですし』
「それはあるかもね。まあ、それは置いておいて、早く幽霊を見つけちゃおうか」
『それじゃ、私は上を見てきます』
「俺は一階を見るよ。見つけたら大声で知らせて」
栞は頷くと、天井を抜けようと飛んだところで止まった。
『いました』
「え、どこ?」
栞は入り口正面にある階段を指差す。
煌希は階段を見る。
階段が二階と繋がっている所に、幽霊はいた。しゃがんで手すりの隙間から煌希たちを見ている。
金髪を腰まで伸ばした小柄な女の子の幽霊。見た目は小学校卒業したばかりの子供のようで、愛嬌のある顔をしている。煌希たちを興味深そうに見ている。
『は、初めて幽霊が来た。……友達になれるかな』
幽霊の呟き。
煌希と栞はそれを聞いて、互いに顔を見合わせた。
「ぼっちなんだな」
『ぼっちですね。あの幽霊どうします?』
「悪意はなさそうだからちょっと観察してみようか。話せば分かってくれるかもしれないし」
煌希が地球で出会った幽霊は二種類に分けられる。善意か悪意。
人を傷つけようとは思わずただ驚かしたり、人を護ったりするのが善意の幽霊。栞はこちら。
対して、人を肉体的もしくは精神的に傷つけたりするのが悪意の幽霊。
煌希は幽霊をこの二種類に分類している。
地球で幽霊を除霊する時、悪意ある幽霊なら即除霊をしていたが、善意の幽霊なら話しをしていた。
善意の幽霊は話せば脅かすのを止めてくれることがあるからだ。幽霊といっても元人なので、消滅させるにはやや抵抗がある。それが、人に害をなさないものならなおさら。
『話しかけてもいいかな。でも、いきなり話しかけたら嫌な顔されないかな』
幽霊はもじもじしながら首を傾げる。
『初めて幽霊に会ったんだし、ちゃんと私から話しかけないと。じゃないと、誰も私の話聞いてくれなかったし。あ、なんか生きていた時のことを思い出してきた。でも負けない』
拳を握り、幽霊は一度頷く。
「やばいな。あいつの話しを聞いてると気分が落ち込む」
『本物なんですね』
「本物のぼっちだ」
同情する煌希と栞の元へ、幽霊はスーと飛んでくる。近づくごとに幽霊の顔が強張っていく。
『あ、ああああ、あ、の!』
緊張のせいか、幽霊はどもりながらも栞に声をかける。
「あー、そんなに緊張しなくてもいいから。君が悲鳴や泣き声で人を脅かしているの?」
煌希は出来るだけ優しく丁寧に喋りかける。
『……へ?』
幽霊は口をポカンと開けて目を見開く。軋む音が聞こえそうな程ぎこちなく顔を煌希に向ける。
煌希と幽霊の目が合う。
『……私が見えてるの?』
「見えてるよ」
『ぎゃぁぁぁあああ! 生きてる人間と話しちゃったぁぁぁあああ!』
幽霊は叫びながら壁の向こう側へと消えていった。
「え? 逃げられた。 何で!」
『それほど、煌希と話した事に驚いたんでしょ。彼女、ぼっちですし』
「そっか。いきなり生きている人間に喋りかけられたらああなるか。ぼっちだもんな」
『どうします? あの調子じゃまともに話せるとは限りませんよ』
「とりあえず、捕まえようか」
煌希と栞は幽霊が去っていった部屋へと走り出した。
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