第14話 天才の幽霊ライフ。
私は天才だ。天才魔法使いだ。
光以外の全属性が使えて魔力も普通の人の二倍はある。十になる頃には誰も成し得なかった呪文の短縮に成功し、十五になるころには様々な魔法を開発した。物体の状態を保持したり、人体を作る魔法なんかも編み出した。持てる知識を使って最高級の家を造ったりもした。それを真似して様々な魔道具が作られた。
私のおかげで魔法どころか生活水準も百年進んだとも言われている。
だが、私の研究の成果を独り占めにしようとした奴に殺されてしまった。しかもそいつは私の友達だった。初めから私の研究の成果を狙って近づいて来たのだ。
いくつかの成果は奪われてしまうだろうが、大事な物は秘密の部屋に隠してある。あそこに行く方法を知っているのは私だけ。状態を保持する魔法をかけてあるから力ずくで壁を壊してという方法では絶対に見つけられない。
それだけが救い。
意識を失った私は、幽霊になっていた。
混乱していた中分かったことは、自分の事は誰も見ることが出来ないし、館から出ることも出来ないということだった。
幽霊という存在は在るとされていたが、誰も存在を証明できた人はいない。私も、幽霊を証明しようとしたが、証明のしようがなかった。
それなのに、私が幽霊になるなんて! 今まさに幽霊は証明された!
発表できないのが悲しい。
それから三百年、私の幽霊ライフは続いた。それで分かったことは、話す相手がいないと独り言が多くなると言うことだ。思考だだ漏れだ。
時々、館に住人がやってくる。暇な私はその人たちを観察していた。私が造った家で楽しそうにしている人を見ると、嬉しくなる。
色々な人がやってきて、死ぬまで暮らした。不思議なことに、誰も幽霊にならなかった。
ちぇ、幽霊友達が出来るかもと思ったのに。
そんな幽霊生活が三百年続いた。つい最近、新たに住人がやってきた。いつも通り観察をしていた私は、見てしまった。
キッチンで絡み合う二人を。
悲鳴を上げた。
意味が分からない! 理解できない!
何で男同士で!
頭が混乱して一晩中叫び続けた。
そして、自分が生きていた時の事を思い出した。思えば、研究ばかりで恋人が出来たことなかった。友達も一人しかいなかった。それを思い出したせいで、私は泣いてしまった。
男ですら彼氏がいるのに! 何で私は独りだったのか!
男二人は館から去っていった。
入れ替わりに男が一人やってきた。その男は館に一晩泊まって去っていった。
何をしに来たのか?
少しすると、あの男二人がやってくる。決まって絡み合う。
その度、私は悲鳴を上げて、生きていたことの事を思い出して泣いた。
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