第13話 霊能力者、冒険者ギルドで依頼を受ける。

 翌日、煌希は冒険者ギルドへやってきた。以前、街を案内された時に来たことがあるので、迷わず着いた。朝は混んでいるとハナに聞いていたので、時間をずらしている。


 建物は立派だった。三階建てで、剣と盾をモチーフにしたマークがドアの上に描かれている。中に入ると埃一つない程綺麗だ。入り口の横にはテーブルが五個あり休憩スペースになっていて、左の壁には依頼書が張られている、正面には三つ窓口があり、右には上への階段がある。


 煌希は窓口を見る。どれも女性だ。その中で、一番綺麗な人の所へと行く。


「すいません。ここに登録したいんですけど」


「新規の方ですね。身分証はお持ちですか?」


 猫耳の受付嬢が丁寧に言う。OLのような制服と眼鏡が似合っていて、知的な雰囲気を醸し出している。胸元になるネームプレートには、リアンと書かれている。


「商業ギルドのでいいですか?」


 煌希はポケットの財布から、名前だけが書かれている商業ギルドの会員カードを取り出す。財布は初日に買った物で、商業ギルドのカードは城を出るときに渡された物だ。このカードは身分証になると同時に、商業ギルドが行っている銀行を利用できるようになる。煌希の生活費はこの銀行に振り込まれる事になっている。


「大丈夫です。こちらのカードに冒険者ギルドの機能を追加しますので少々お待ちください」


 リアンはカードを持って奥へと行ってしまう。

 ん? こんな簡単に登録できるの?

 煌希が疑問に思っている間に、リアンは帰ってきた。


「追加できましたので、お返しいたします」


 煌希はリアンからカードを受け取る。カードを見ると、書かれている項目が増えていた。名前しかなかったのに、その下に、ランク、パーティー、依頼内容があった。ランクの部分には10と書かれているが、他は何も書かれていない。


「では、当ギルドについて説明させてもらいます」


 リアンは説明を始める。

 ランクとは冒険者の実力を現していて、10が一番下で、1が最高。パーティーは現在組んでいる人の名前が表示されるようだ。希望すれば、チーム名も記載されるようになるらしい。依頼内容は現在受注している仕事の内容が表示される。


 仕事を受ける場合は、貼られている依頼書をカードと一緒に受付に持って行けば受けられる。ただし、依頼書には受けることが出来る最低ランクが表示されているので、それより下の人は受けられないようだ。パーティーを組むと、そのメンバーの中で一番上の人のランクの依頼を受けられるようになる。


 ランクを一つ上げるには特定の依頼を受けるかギルド職員と戦って勝たないと上がれない。ただし、軍にいたなどの前歴がある人や腕に自信がある人はすぐに試験を受けて実力相応のランクになれる。


 依頼を三回連続で失敗すると一週間の強制労働をさせられる。街の掃除などらしい。


 あと、このギルドでは銀行への入金だけが出来る。報酬も直接口座に入れることが可能だ。


 このギルドについてだが、二階には冒険者向けのアイテムが売っていて、三階は基本立ち入り禁止になっている。


「説明は以上です。何かご質問はありますか?」


「特にないですね。何かあったら聞きに来ていいですか」


「いつでも大丈夫です。では登録は以上になります。今日はこのまま依頼をお受けになりますか?」


「ええ、そうしようと思っています」


「依頼はあちらに貼られていますので、受けたい物がありましたら紙をはがして受付まで持ってきてください」


 リアンは依頼書が貼られている壁を指差す。


「分かりました。ありがとうございます」


 煌希は礼を言って依頼書が貼られている壁に行く。ランク別に分けられているので、10ランクの依頼が貼られている所を見る。

 そこには街での仕事が書かれた物だけしか貼られていなかった。他のランクを見てみると、9以降は基本街の外での依頼が主だった。薬の材料の草を取ってくるものだとか動物を狩ってくるものが主だ。6から上は魔物討伐と護衛が主だった。


「何にしようかな」


 煌希は中身を見ていく。店番や荷物の移動などが主で、どれも二、三日後の仕事だった。他にも、料理のレシピを教えて欲しいとかオリジナルの物語を教えて欲しいとかがある。


「う~ん。何かいいのないかな。おッ」


 煌希は一枚の依頼書が目にとまる。


*   *    *

依頼主:コマリ不動産

ランク:10

報酬:100000→500000(報酬アップ)

期間:三日

依頼内容:屋敷での誰もいない場所からの原因不明の泣き声や悲鳴の原因排除。場所はギルドで要確認。報酬は原因排除後、一週間何もなかったら支払います。

*   *    *


「これは俺の得意分野じゃないか」


 この原因は百パーセント幽霊だ、と煌希は確信する。そして、日本で嫌と言うほどこの手の仕事はやっている。


「しかも報酬が凄いな」


 お金に困らない生活だが、お金はあればあるほどいい。日本で借金を背負っていた煌希にとって、お金の桁が増えるほど安心するものだ。


「決めた。これやろう」


 煌希は依頼書をはがして受付に持って行く。

 異世界初めての仕事は、日本と同じものだった。

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