第9話 霊能力者、霊力が何なのか知る。
「次は魔法について教えよう」
ギリアンの言葉に、頷く煌希と仁志。二人は尊敬のまなざしでギリアンを見ている。
「魔法には火、水、風、土、回復、空間、無、光の八種類の属性がある。火、水、風、土は文字通りそれを生み出し操る魔法。回復は怪我や病気を治す魔法。空間は行ったことのある場所に一瞬で行けたり、物を持ち運べる空間を作り出す魔法。無とは他の属性とは全く別の魔法のことを言う。光は勇者しか使えない特別な魔法。ここまではいいか?」
「はい」
煌希と仁志は頷く。
「この属性だが、自分に適正があるものしか魔法が使えない。その判別方法は、お二人が昨日やった水晶による判定だな。光る色で属性が分かり、光の強さで魔力の量が分かる。普通の人は多くて三属性しか使えない。すべての属性が使える勇者殿は規格外という事だな。しかも、魔力の量も規格外」
仁志は、「思っていた以上にチートなのか」と呟いた。
「この魔法だが、すべての人が使える訳じゃない。魔力がない者もいるから、スギムラ殿は落ち込むことはない」
「分かりました」
ギリアンの慰めに、煌希は真顔で応える。
「それじゃ、実演してみる」
ギリアンは誰もいない場所に手を突き出す。
「我の敵を焼き払え、ファイアーボール」
ギリアンの手の先にサッカーボールぐらいの大きさの火の玉が出現し、勢いよく前方に飛んでいく。火の玉は十メートル先にある岩にぶつかって爆ぜる。
それを、仁志は目をランランに輝かせて見ている。
煌希は、魔法を見て首を傾げる。これと同じものを、日本でトップクラスの霊能力がやっているのを見たことがあった。傷をふさいだり汚れを取るのは見たことないが、火の玉を飛ばすのは同じだった。ただ、霊能力者の場合は呪文なんてなかったが。
「これが、火の属性の初級魔法、ファイアーボールだ」
「質問! 初級ってことは、中級上級もあるんですか?」
仁志の言葉に、ギリアンは鷹揚に頷く。
「ある。正確には、初級、中級、上級、最上級の四種類がある。上に上がるほど魔力の消費量が上がり、制御も難しくなる。最上級の魔法となると、数件の家を一瞬で消し去ることが出来る」
「そんなに」
一瞬で家が消える所を想像したのか、仁志は息をのむ。
「これで驚くのは早い。勇者殿が使える光魔法には聖級があり、これは小さな村なら存在を消すことが出来る」
「光魔法ってそんなに凄いのか……」
「勇者殿には、魔王が現れるまでに聖級の魔法を完璧に制御してもらう」
「分かりました! 俺、やります!」
「うむ。さすが勇者殿!」
仁志の言葉に、ギリアンは満足げに頷く。
「さっそく魔法を使ってみましょう。魔法を制御する一番の方法は使うこと。スギムラ殿はどうしますか? 部屋に戻りますか? それともここで見学していきますか?」
「せっかくだから見ていきます」
先ほどギリアンが見せた魔法のことが気になり、煌希は言う。煌希は見学スペースに行き、置いてあるベンチに座る。すぐさまハナがアッポロのジュースを持ってくる。煌希は礼を言い、ジュースを受け取る。煌希は霊力を操作して仁志を見る。
修練所ではギリアンによるマンツーマンの指導が繰り広げられている。仁志は大きな声で呪文を叫び、出来ないことに首を傾げる。何度か大声で叫ぶ内に、火の玉が現れて飛んでいく。仁志は小躍りしながら奇声を上げて喜んでいる。
煌希は見た。仁志の体から白い靄が出て火の玉を創り出すのを。それは、霊能力者が霊力を使って超常現象を起こすのと同じだった。
魔力って霊力と同じなのか。と考えて、煌希は首を傾げる。煌希は水晶が光らなかった。霊力と魔力が同じ者なら水晶も光るはずだ。
あ! 霊力を閉じこめてたからか。
煌希は常日頃から幽霊を視ないように霊力を操作して体の置くに閉じこめている。それが原因で水晶が光らなかった。と考えれば説明がつく。
霊力=魔力については後でちゃんと確かめようと、煌希は思うと同時に、霊力を閉じこめておいて良かった! と思った。
そのおかげで魔王討伐に、しかも前線に送られなくて済んだのだから。
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