第8話 霊能力者、スキルを覚える。
お昼は昨日の晩ご飯と同じ内容だった。違ったのは、お肉を目の前で焼いてくれたことだろう。煌希はハナに給仕されながらお昼を食べる。一緒に食べている仁志と共に、ギリアンに日本の事を話してお昼は終わった。
食後の短い休憩を挟み、ギリアンに連れられて行ったのは、城の敷地内にある修練所だった。二つの太陽に照らされながら、煌希は修練所を眺める。
一言で言えば空き地だった。サッカーが出来るほど大きい敷地は、半分は更地、もう半分は木や岩が適度にある。さらに、修練所には見学できるようにベンチがあるスペースもあった。
「それじゃ、まずはスキルについて説明しよう」
煌希と仁志は更地のスペースに立ち、目の前のギリアンの話しを聞く。煌希たちの後ろにはハナと仁志の専属というメイドが立っている。
「スキルとは、神が授けてくださる特別な力だ。スキルは主に二つに分けられる。特殊な力を使えるスキルと、能力の向上や補助をしてくれるものだ。スギムラ殿が持っている魔力操作は後者に入る。魔法が使える者にとっては非常に有用なスキルになる。このスキルを持っている者は少ないので、スギムラ殿はついているが、魔力がないのが惜しいな」
「魔力を持っていたら、どんな事が出来るんですか?」
「魔法を使用するときは魔力を消費するのだが、消費量が少なくなり、威力が上がる。スギムラ殿が魔力を持っていたら、魔王を倒すときは第一線で活躍できるほど優れたスキルだ」
ギリアンの言葉に、煌希は心の中で安堵する。
魔力なくて最高! でも何で仁志が悔しそうに見ているのか。
「今日二人に覚えてもらうのは三つのスキルだ。気配察知、危険察知、鑑定の三つだ。この三つはこの世界で生活している者なら必ず持っているスキルだ」
仁志が、「やっぱりスキルって言えば鑑定だよな」と小さく呟いた。
「あの、スキルってそんなに簡単に覚えられるもの何ですか?」
「この三つは簡単に覚えられる。だが、スキルによっては取得するのが難しかったり、取得の仕方が解明されていない物がある。魔力操作は未だ取得の仕方が解明されていないな」
「これって結構レアなんですね」
「それを持っている魔法使いであれば、無条件で軍の役職に就ける程、レアだ」
「そんな凄いですか」
煌希は、ギリアンの言葉に口をポカンと開ける。
「まあ、魔力がなければ無駄だがな。それじゃ、早速スキルを覚えてもらう」
ギリアンが言うと、ハナは持っている籠から日本では見たことのない果物を取り出し、ギリアンに渡す。ハナは元の位置に戻る。
「これはアッポロとオナンジという果物だ。緑色がアッポロ。青色がオナンジだ」
ギリアンが持っている果物を煌希たちに見せる。アッポロは皮が緑色で、大きさは拳大の大きさ。オナンジは青色で、日本のミカンぐらいの大きさだ。
「それじゃ、俺が上げた方の果物の名前を答えてくれ。十回連続で正解すると、鑑定のスキルが手に入る」
「そんな簡単に手に入るんですか?」
仁志が首を傾げる。煌希も仁志と同じ事を思っているのか、目に疑惑の色が浮かんでいる。
「論より証拠。やってみよう。まずは勇者殿」
ギリアンはアッポロを上に上げる。
「これは何の果物かな?」
「アッポロです」
ギリアンは手を下げて、今度はオナンジを上げる。上げては答えるということが十回繰り返された。
「それじゃ勇者殿。このアッポロを見て、鑑定、と念じてください」
「分かりました」
仁志はギリアンが持つアッポロを見つめる。すぐに目を見開く。
「! 凄い! 名前が表示されている!」
「無事にスキルを手に入れられた様ですな。次はスギムラ殿の番です」
ギリアンが果物を上げ、煌希が答えるというやり取りを十回繰り返す。
「それじゃ、スギムラ殿も、鑑定、と念じてみてください」
煌希は言われたとおり、オナンジを見つめて、鑑定、と念じる。すると、オナンジと重なるようにステータスと同じような画面が現れる。
* * *
名前:オナンジ
品質:良
* * *
「見えた! しかも品質まで分かるって凄いな!」
煌希は驚きのあまり声を上げる。
「この鑑定は自分が知らない物でも分かる優れたスキルだ。これは人や動物、魔物でも出来るが、その場合は名前しか分からない。次は気配察知を習得しよう」
ギリアンの言葉に、煌希と仁志は頷く。煌希たちの目には、先ほどまであった疑いの色がない。
「それじゃ、二人には隠れん坊をやってもらう」
煌希たちは木や岩がある場所に行く。ハナたちメイドの二人が隠れ、仁志と煌希が順番に鬼をやる。煌希は二人を見つけた時点で、周りに人がいるということが感覚的に分かるようになった。ステータスを見ると、スキルの欄に気配察知があった。
ギリアンが次に指示したのは、目を瞑った状態での白羽取りだ。ギリアンが木剣を振り下ろし、それを当たる前に煌希が手で挟む。上手く手で止められると、危険察知のスキルが手に入った。このスキルは、自分に対して危険があると分かるようになるものらしい。
こうして、一時間の間に、煌希と仁志は三つのスキルを手に入れた。
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