第7話 霊能力者、レベルについて勉強する。
煌希は、ステータス、と念じる。
「出しました」
「俺も」
仁志に続き、煌希が言う。
「ステータスはその人の能力を表します。名前や性別はそのままですね。ところで、レベルはそちらの世界にありますか?」
「いえ、ないですね」
「そうか、勇者殿たちの世界にはレベルがないか。これらはイアン様の祝福だからないのも当たり前か。レベルというのは魔物か動物を殺すことで上がっていきます。レベルが上がるとその者の身体能力が上乗せされます。勇者殿のレベルはいくつですか?」
「1です」
仁志の言葉に、煌希は、おや? と思う。
煌希はレベルを見る。10と表示されている。
「勇者殿はそちらの世界では生き物を殺したことがないのですね」
「よく分かりますね」
「生き物を殺した者は、洗礼を受けた時レベルに反映されますからな」
「職業に就くか資格を取らないと基本は動物は殺したら駄目ですし、人は当然ですね。こちらの世界では生き物を殺したことがない人が多いと思いますね。あ、虫なんかは殺すことが多いですね」
「虫を殺してレベルを上げるとなると、最低でも一万匹以上殺さないとレベルが上がらないですな」
「一万……。レベルを上げるには動物や魔物を殺すしかないんですか?」
「基本はそうです。後は人を殺してもレベルは上がりますが、人殺しは奴隷に落とされますので、レベルの為に人を殺す人はいないでしょうな」
ギリアンの言葉に、煌希はレベルが10になっている事に心当たりがあった。煌希は日本で除霊をしてきた。その霊は人の霊だ。おそらく、それのおかげでレベルが10になってるのだろう。
「奴隷がいるんですか?」
「奴隷は犯罪奴隷と借金奴隷がいます。文字通りの意味ですな」
仁志は、「なるほど。奴隷ハーレムも出来るのか」と小さな声で呟いていた。
「レベルですが、我が国の騎士は最低でも10、騎士団長は50あります。レベルが上がれば身体能力が上乗せされますので、レベル差があればあるほど勝ち目がなくなりますな。ちょっと試して見ましょう。勇者殿、私と腕相撲をしてみましょう」
ギリアンは袖を捲り、骨と皮しかないような腕を露わにする。
仁志は筋肉がついている訳ではないが、男で十代。鍛えてなくてもそれなりに力はあるだろう。少なくとも、骨と皮しかない腕よりは力がある。
「え、でもその細さじゃ危ないんじゃ」
「大丈夫。やりましょう」
ギリアンは仁志の前で手を出し構える。仁志は眉をしかめながらもそれに応じる。
「スギムラ殿、合図を」
煌希は二人が構えたのを見て、始め、と合図をする。
仁志の腕に力が入る。
「なッ!」
仁志が驚きの声を上げる。
「勇者殿、本気を出してくだされ」
ギリアンの言葉に、仁志は体を傾ける。だが、ギリアンの腕はまったく動くことなく、仁志の力を受け止めている。仁志の体が徐々に沈むが、ギリアンの腕が傾くことはない。
「行きますよ」
ギリアンが言うと、勝負は一瞬でついた。何の抵抗も感じさせない動きで、仁志の手の甲を机に当てる。
仁志は勝負の結果が信じられないようで、目を見開きギリアンの手を見ている。
「私のレベルは22です。レベルが上がれば、私のような老人でも、若い者に余裕で勝てます。それほど、レベルによる身体能力の上乗せは凄まじいのです。分かってもらえましたか」
「分かった。凄いな、レベルが高いと。体重もかけたのにまったく動かなかった」
仁志はレベルによる力を見て、興奮したように声が弾んでいる。
「それじゃ、筋トレとか意味ないんですか?」
煌希の質問に、ギリアンは首を振る。
「意味はあります。トレーニングなどは身体能力そのものを上昇させ、レベルは元の身体能力に力を上乗せしているのです。ある程度レベルが上がると、レベルが上がりづらくなりますので、強くなりたい者はトレーニングは欠かさずしています。スキルや魔法を覚えてからですが、一週間の間に、勇者殿は最低でも5まで上げてもらいます。スギムラ殿はどうしますか?」
「俺も上げた方がいいんですか?」
「そんなことないですよ。騎士や冒険者以外でレベルを上げている者は少ないですから」
「何で? レベルを上げた方が楽に生活出来るでしょ?」
「勇者殿が言うように、レベルが上がれば楽に生活出来ます。が、レベルを上げるのは大変なんです。一番弱い魔物を倒すのに、レベル1だったら最低でも4人が必要です。4人でも、無傷では無理で、一歩間違えば死にます。そんな危険を冒すならレベルを上げないで生活をする者が多いです」
「もっと大人数で倒せばいいんじゃないんですか?」
「人数が増えるほど、レベルが上がりにくくなるんです。4人の場合、十匹は倒さないとレベルが上がりません。人数が多くなると必要な魔物が増えます。高レベル者と倒す方法もありますが、依頼料が高いので、何か理由がないとレベルを上げる人は少ないです」
ギリアンの言葉に、仁志は納得したように頷く。
「それじゃ、俺はレベルはこのままでいいです」
レベル10で、無理にレベルを上げる必要がないので、煌希は断る。
「分かりました。それじゃ、お昼を食べてスキルや魔法について教えます」
部屋の後ろにかけられている時計を見ると、針は十二時を過ぎていた。
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