第18話 異常な生活

 いつも通りバイトをして、駅前にあるディスカウント店でお菓子やレトルトを買った。調子に乗って色々カゴに入れていたら、あっという間に三千円を超えてしまった。


 これから二人分の食費がかかると考えたら、正直言ってほとんど貯金ができない。外食もしていたら、ギリギリの生活になってしまうだろう。当然、イオン君が洋服が欲しいと言っても買ってやれないから、もし、あの子がどうしても欲しい物があったら売春で稼がないといけないというのは変わらない。


 昨日の話だと住民票も移せないだろうし、できる仕事は限られてる。風俗とか夜の仕事だって未成年は雇わないだろう。そしたらずっと僕の家にいて…。うちを拠点に客の所に行くという展開になり、僕の部屋がデリヘルの待機所みたいになってしまう。


 僕の家に定住したとしても、イオン君が売春をやめることはないと思う。ロリ服は高いらしく、昨日着ていた服も総額で五万だと言っていた。売春二回分だ。もし、売春で一回三万もらえるなら僕もやりたいくらいだ。しかし、DTの僕に金を払ってくれるマダムを見つけるのは無理だろう。いや。大学生でもワンチャン行けるかもしれない。


 うちのアパートを拠点にして、二人のキャストが出張するというビジネスが頭に浮かんだ。何でも金になるな。無店舗型性風俗特殊営業の営業開始届出書というのを出せばいいんだ。今のアパートは事務所利用はダメだからばれたら追い出されるだろう。人数が増えなければバレないし…。いや、待てよ。そう言えばイオン君は未成年だった。そもそも、身分証を確認できていない時点でアウトだな。僕は有名大学に通っててもう成人してるから、全国ネットのニュースになるだろう。まともな就職はできないだろう。バカバカしくて僕は笑ってしまった。


 しかし、そんな馬鹿なことを言っていられるのは、今のうちだけだ。あいつ僕のスマホで客と連絡を取ってるのか…。最悪だ。せめて電話番号は使わないで欲しい。スマホを返して欲しいと言ったら、すんなり返してくれるだろうか。


 僕は重い足取りで家に帰った。アパートの外廊下を歩いていると、お隣さんの部屋からJポップが流れて来た。まるで、風俗店のハッスルタイム。メイクを落としたイオン君を知ってるだけあって、僕は萎えた。


 あのおじさん、よく金が続くなと思う。もしかして、作家という職業のために、未成年の男の娘との行為でインスピレーションを得ようとしてるんだろうか。しかし、三日も続けてやっていたら、すでに十万くらい払っているんだろうか。作家ってそんなに儲かるんだろうか。未成年であのルックスだったらもっと高くてもいいくらいだし、もしかしたら一回三万は安いのかもしれない。


 イオン君への気持ちは冷めつつあった。


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