第16話 お隣さん

「そう言えばさ…そういうファッションって田舎にいる時からしてた?」

「してない。普通に男のかっこしてたよ」

「じゃあさ、親が見てもイオン君だって気が付かないんじゃない?」

「だといいけどね」

「きっとわかんないよ」

「そうだね」

「いつから、東京来たの?」

「中学生の頃から」

「そうなんだ…大変だったんじゃない?」

「うん」

「大体どの辺にいたの?」

「二丁目かな」

「ああ。新宿二丁目」

「うん」

「ゲイの人が集まってそうだしね」

「うん」

「友達出来た?」

「うーん。あんまり」

「今、太客っている?」

「隣の人かな」

「あ、なるほどね。お隣さんってゲイだったの!?」

「ニューハーフ好きなんだよね」

「そうなんだ…」

「性転換するお金出してくれるって」

「そんな金あるんだ」

「うん」

「あの人って何やってんの?」

「ああ見えて有名な作家なんだよ」

「へえ!人は見かけによらないね。だから働いてないように見えたんだ」

「うん」

「何書いた人?」僕はお隣さんとお近づきになりたくなった。結局、ミーハーなんだと思う。

「うーん。詳しくはわからない。難しすぎてわかんなかった」

 もしかして、経済評論家とか投資家だろうか。

「そっかー。でも、作家ってすごいな。そうそう、なれるもんじゃないし…」

 僕たちは布団の中でもずっと喋っていて、いつの間にかイオン君は寝落ちしていた。スマホを見たら4時だった。僕もバイトのことを考えて寝ることにした。

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