第14話 Tシャツを貸す
「お兄ちゃん、何か部屋着貸してもらえない?」
イオン君が胸にタオルを巻いて部屋に入って来た。しばし言葉を失った。エロかわいい。本人が狙って出てくるものではない、ナチュラルなエロさがそこにはあった。
髪がびしょびしょで床に垂れている。本当はすぐ飛んで行って足元を拭きたい。そう。我が家にはドライヤーがないのである。普通は買うもんだろうけど、僕は自然乾燥派だから持っていなかった。彼女が出来たら買おうと思っていたけど、イオン君がいつも来てくれるなら買ってもいいかなぁ…。しかし、ついつい見栄を張って高いのを買ってしまいそうだった。実家に連絡して、今使ってるのもらえないか聞いてみようかなぁ。
そして、肝心のイオン君だけど、やっぱり巨乳だった。足もぽっちゃりしていて、まさに女の子。僕は脚フェチじゃないけど、脚の形も色々だと思う。まず、男と女の足は違う。男は筋肉質だ。あとは、剃ってない限りは毛深い。イオン君はツルツルだった。
生まれつき女の子だったらよかったのになぁ…。世の中うまく行かないと心の中で嘆いていた。
「お兄ちゃんでばぁ!」
「あ、ああ。いいけど。でも、サイズでかいからな…だぶだぶだと思うけど」
「いいよ。Tシャツとか借りれたら嬉しい」
僕はクローゼットの中から、一番小さめのTシャツを出した。小さめと言ってもメンズのLLだと大きすぎると思った。
「ありがと」
イオン君は俺の黒いTシャツをワンピースみたいに着て出て来た。スポーツブランドのTシャツだけど、中年のおじさんが着ているようなデザインだった。
「お兄ちゃんのTシャツ…センス悪い」
「はっきり言うなよ」
「どうしてこれにしたの?」
「セールで一枚千円だったから」
「ファッションにお金かけないタイプなんだ」
「うん。服に金掛けるってもったいないからさ。夏休みはバイト行くだけだし」
「いつ出会いがあるかわからないじゃない!」
「それがさ、無いんだってー。お前はかわいいからさ、毎日出会いがあるかもしんないけど」
「そうね。大体、毎日ナンパされるよ」
「やっぱ、かわいい子ってそうなんだ」
「うん。仕方ないね」
「ついていったことある?」
「うーん。お金がない時はね」
「あ、そっか。そう言えば家なかったよな」
「うん。私、スマホも持ってるけど、人から借りてるやつだから気持ち悪くて」
「そうなんだ。それやだね。だって、どこに電話してるとか調べられるんじゃない?」
「うん」
「位置情報とか見れそうだし」
「うん。だから、電源切ってるんだ」
「そっか…」
僕たちはちょっとの間黙った。
二人とも床に座っていたから、男女だったらキスしそうな距離だった。
「あ、俺、シャワー浴びるの忘れてた」
僕は立ち上がった。イオン君とはそういう雰囲気になりたくなかった。男はやっぱり無理…。僕は自分の欲望にブレーキをかけていた。
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