第13話 お泊り

 イオン君はかわいい。すれ違う男たちがイオン君を見ている。取りあえず僕は彼氏だと思われているだろう。かわいい子を連れていて鼻が高かった。


「お前、可愛すぎるよ。今の人すっげー見てた」

 僕はふざけてそう言った。

「そう?気付かなかった」

「そのファッションってなんて言うの?」

「甘ロリ」

「あまろり?って何?」

「スイートロリイタ」

「ああ。なるほどね。かわいいよね。似合ってる」

「そお?すごく嬉しい!」

「シルバニアファミリーみたいだよな」

「何それ?そのたとえおかしいって!」イオン君は笑った。

「ごめん、いや、ほんと可愛い。マジで。普通に会ったらナンパしてると思う」

「もう!お兄ちゃん、そんなこと言って本当はDTなんでしょ?」

 イオン君が腕を組んで来た。胸が腕に当たって僕は悲鳴を上げた。

「やめろって!ダメだって!」

「お兄ちゃん、かわいい」

「かわいくないって!」

「おちんちん大きくなっちゃってる」

「外で大きい声で言うのやめろよ!」

 今晩、絶対やられる。僕は覚悟を決めた。実際は…逃げ出したかった。もし、イオン君が一方的にやってくれるんならいいや。


 コンドームは布団の下にでも隠して…コンドーム?いつ使うんだっけ?やっぱいらなくない?訳がわからなくなって来た。


 アパートに戻った時、お隣さんは部屋は真っ暗だった。おじさん、出かけてるんだ。こんな夜遅くに?そう言えば、僕が飲食のバイトから戻った時、いつも電気がついていたもんだ。ああいう人でも、友達くらいいるだろう。きっと飲みに出かけてるんだ。


 家に帰って玄関を開ける時は緊張した。

 かわいい男の娘と朝まで二人っきりだ。ノーブラ、パンツで寝るような子だからなぁ…。


 イオン君が厚底の靴を脱ぐと思ったより小柄だった。それがまたかわいい。

 150センチくらいしかない。


「ちっちゃいんだ」

「そうでもないよ」

「え、何センチ?」

「155くらいかな」

「低身長じゃん。クラスで一番前とかだろ?」

「もう、いじわる!」

 イオン君が僕の股間をさらっと撫でた。

「GTのくせに!」


 俺は思わずその手を払いのけてしまった。イオン君の手は女の子みたいに丸くて柔らかそうだった。


「先、風呂入っていいよ。レディファースト」

「はーい」


 そして、俺はキッチンにあった食器を洗った。あ、そうだ…布団を部屋に投げっぱなしにしてたんだ。エアコンもつけっぱなしだった。ギンギンに冷えていた。電気代が…。しかも、あんなに苦労してナンパに成功したと思ったら男だったなんて。笑うしかない。でも、かわいいからいいか…。これからは彼女じゃなくて、彼氏ができるかもしれない。人に言うのがちょっと恥ずかしいなぁ…。




 

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