第12話 ファミレス

 イオン君が男の子だと知って急に気楽になった。まるで、高校の後輩と一緒にいるような気がした。それにしても、目が大きくて、かわいいし、付き合えそうなくらいだった。男にしとくのはもったいない。思わず言いそうになったけど、イオン君は女の子なんだ。女の子が女の子の服を着るのは当たり前。


 しかし、テーブルの上では普通の顔をしていながら、本能では彼に欲情していた。それを認めないわけにいかない程、イオン君はエロかった。今はLGBTの人も珍しくないし、付き合ってもいいかもな…と、相手に断られる可能性があることなんか考えもせず、イオン君が望むなら「付き合ってやるか」くらいの奢った感情を持っていた。


「Youtuberとかいいんじゃない。マジで女の子にしか見えねえもん。佐藤かよって人いたじゃん?あの人みたいに有名になれるかもな」

「あ、佐藤かよさんかわいいよね。好き!」

 それから、イオン君の初恋の話とか、初エッチが学校の先生だったことも聞いた。

「え、中学の?」

「うん」

「それって犯罪じゃん?さすがに引くわ」

「うーん。でも、先生イケメンだったし」

「あ、そう」

 イケメンでもない僕はすぐに大人しくなった。

「いいなぁ。イケメンは何をしても許されるんだ。俺も大学に入学する前に整形しとくんだった」

「蓮君はイケメンだよ」イオン君は人を乗せるのがうまい。

「あ、そう。俺もイケメンに入れてくれる?」

「うん」

「よっしゃ。何か他に食いたいものある?」

 俺は冗談ぽく言った。さすがにもう食わないだろうと思っていた。

「うん。じゃあ、デザートもう一個食べていい?」

「いいよ」

 注文履歴の金額がどんどん増えていくのが気になったけど、イオン君の食べっぷりがよかったから僕は初めて人に奢る楽しさを知ったのだった。イオン君は座高が低いから、小玉メロンのような両胸がテーブルに乗っかっているのが気になって仕方がなかった。

「いい眺めだなぁ。やば汗かいて来た。そのボディを生かしてキャバクラで働けるんじゃない?」

「やだぁ!男って胸大きい子好きだよね」

「人に寄るけどなぁ…俺は大きい子好きかな」

「ふうん」

 そう言ってイオン君は自分の胸を持ち上げた。

「胸が大きいと色々大変なんだよ。肩凝るし」

「やっぱそうなんだ。重いの?」

「持ってみる?」

「いやぁ…ここでやったら変態だと思われるし…って、やばい、今触るところだった。お前、セクハラだって!」

 そうやって、僕たちは11時過ぎていた。僕はもともと友達があんまりいないせいもあって、久しぶりに人と喋れて楽しかった。

「そう言えば明日はバイトあるんだった。面倒くせーな。そろそろ帰ろっか」

 

 僕たちは店を出てそれからコンビニに寄った。


「好きな物買っていいよ」

「やった!いくらまで?」

「2000円」

「はーい」


 僕はイオン君が店の中を巡回している間、こっそりコンドームを買った。もしかして、そうなるかもしれないと思ったからだ。ゲイの人はお泊りイコール・セックスのイメージがあった。イオン君から誘って来たら断らないつもりでいた。むしろ初回に男の子で慣れておけば、実際本命彼女ができた時に余裕をかましていられるだろう。公衆の面前でもこんなに緊張してるんだから、二人っきりで向かい合ったら平常心でいられないくらいグダグダになってしまいそうだった。

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