第8話 夢

 僕はエアコンの聴いた部屋で昼寝をしていた。

 正直言って寝てるのが一番幸せだ。

 しかし、夜も早く寝てるから、昼寝してもすぐに目を覚ましてしまう。

 起きずにそのままゴロゴロしている。

 俗に言う惰眠を貪るというやつだ。

 大学行ってるし、もうやることはやった。

 十分だろうと思う。


「少年老い易く学成り難し…」なんて漢文で習ったけど、僕は寝てばかりいた。気が付いたらあっという間に老人になっていそうだ。


 惰眠の理由は人間関係のストレス。

 ありきたりだけど、寝てストレスを解消している。


 やっと受験が終わって大学に入ったら金持ってるやつばかりで、夏休みにバイトなんかせずに親の金で語学留学している。旅行行くのも自由自在。僕がどこにもいかないのを知っていて、わざと自慢してくる。


「いいなぁ」


 僕は仕送りはあるけど、それ以上のぜいたくはできない。

 こんな生活でも彼女がいたらいいんだけどなぁと思っていた。

 女の子は実家が金持ちで遊んでるやつの方を好む。貧乏でバイトしている僕みたいなのは最初から見えていない。人目を引くほどのイケメンじゃないし、話もつまらないからなおさらだ。


 もし、メイちゃんと仲良くなれたとしても、つまらないと言って振られるだけなんじゃないか。大体、僕は出身高校が県立の進学校だし、メイちゃんみたいにほとんど勉強してこなかったタイプの人と話が合わない気がした。ああいう子に似合うのはイケメンのバンドマンなんかだ。かわいい子はイケメンと付き合うと相場が決まっている。ロリータファッションの子の隣に普通の大学生がいるって言うのは、アイドルとファンが付き合うくらいに不自然だった。僕の妄想は次第に萎んで行った。やっぱり諦めてバイトしよう。笑いがこみ上げて来た。


 僕は「後で行くから」というのを、今の今まで本気で当てにしていた。

 あっちは覚えてもいないだろう。


 今日のバイト面接は仮病を使って断ったから、もう一回連絡してみようかな。


 あーあ。一日無駄にしちまった…。

 俺はため息をついた。

 そして寝返りを打った。


 「!!!」


 えええええええええええええ?

 ナニコレ⁉


 僕の隣に誰か寝てる!


 また驚きの光景が目に飛び込んで来た。

 目の前に女の子が寝てた。しかも、横向きで僕の方を見ていた。


 僕に心を許している証拠だった。


 僕は体を布団の端までずらして、離れたところからメイちゃんを観察することにした。昨日と同じようなキャミソールで、下はパンツだ。綿素材でちょっとくたびれた感じがするものを身に着けていた。服は高そうなのに、下着にこだわりはないタイプなんだな。


 ブラジャーはしてないみたいで、胸が垂れて乳首が浮き上がっていた。


 すごい!

 これが本物か…。

 僕は感動した。


 今日も髪がびしょびしょだ。


 でも、布団なんかどうでもいい。


 来てくれてありがとう!

 絶対にメイちゃんと仲良くなりたい。

 告白して彼女になってもらいたい。

 取りあえず友達からでいいから、連絡先を交換したい。

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