第5話 決意

 正直言って、頭の中は逃げ出したいという気持ちでいっぱいだった。見た目が普通の子とか、ちょっとブスな子だったらそこまで緊張しなかったと思うけど、あの子はかわいすぎた。まるでアイドルが家まで押しかけて来て、半裸で添い寝してくれてるようなものだ。握手するのも手が震えるのに、まさか…。すべてをすっ飛ばしていきなり本番なんて、童貞がAVに出るようなもんだ。


「じゃあ、次はそっちに行こうかな」

 あの子の顔と声が何度も脳内にリプライされる。

 カールしている髪が風に揺れている。

 何度思い出しても、かわいすぎる。

 テレビに出てるアイドルより絶対かわいい。


 次行くから待ててってことだな。

 間違いない!


 トイレを出た瞬間に僕の決意は固まった。女の子にタオルケットを掛けてあげて、目を覚ますのを待つ。そして、目を覚ましたら、取り敢えずは普通に接しておこう。それが好感度を上げるコツだ。もてないくせに偉そうだけど、僕は普段女子からは好かれても嫌われてもいない。優しくしていれば、隣の偉そうな中年の無職男に比べて、普通の大学生の方の良さを再発見するに違いない。変に取り繕うよりも、成り行きに従うことにする。売春してるような子だから、初心でかわいいと思ってもらえるかもしれないじゃないか!


 恥ずかしいがおいしすぎる。

 僕の胸は期待で膨らんだ。

 もう、全身が充血し興奮ではち切れそうだった!


 さあ、このドアの向こうに、Dカップアイドルが寝てる…。

 どうしよう、おっぱい出してたら…。

 僕は部屋に入るまでに、廊下で呼吸を整えた。


 どうしよう…。

 部屋に入ったら布団の上に座ってるかもしれない。


 普通、起きるよな。

 徹夜してたら別だけど、昼寝なんてそんなに長時間できるもんじゃない。


 僕はどのくらい廊下にいたかわからない。

 どんなに考えても、落ち着けと言い聞かせても、落ち着けるもんじゃない。

 

 だめだ!

 やっぱりできない。


 その瞬間、僕は思い切りドアを開けた。


 おい、いい加減起きろよ!

 人んちで勝手に寝るんじゃない!

 

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