耐えなくちゃ4話

 痛い。苦しい…。誰か、いない…?

 外は三十度あるのにカーディガンなしでは寒いレベルでクーラーが入っている。そんな学校を出るために足を動かしてるんだけど。九月なのにこんな暑いとかありえないし、推薦希望者は連日のお呼び出しだし、クーラー効きすぎて息苦しいし、油断したら吐きそうなくらい咳き込むのわかってるし、咳抑えてるせいで心臓の辺り痛いし、最悪。倒れていいかな?いいよね?視界おかしいんだけど?なんか、白い。ギラギラしてる。よく前見えないけど、まだ学校。だって寒い…。都合よくしのりんいたりしないかな?…ないな、あの子も学校qあるわけだし、あ〜でもほんとクラクラする。校舎の外に出てしまえばどこで倒れていようとまぁいいよな…。

「っつ…」

 陽射しが眩しい。カーディガンが黒いせいで余計熱が…?点字ブロックを頼りに駅まで向かう。ねぇ、ほんと誰かいない?倒れたいし、もうしんどい。そんなことを考えて重い足を動かしていると聞き慣れた音が近づいてきた。駅の音。建物の安心感。抑えていたものがどっと溢れるような感覚。壁に手をついて水を飲む。水筒を鞄に落として進もうとしたら足を動かしたらバランスを崩した。

「ぁっ…」

 これはダメだ。ガチで倒れるやつ。せめて膝でもつけたら、でもそんな…。

「おいっ…⁈」

 怖いっ…!嫌だ、ごめんなさい…!

 あれ、痛く、ない…。えっと…?

「ん…」

 「えっと、大丈夫ですか?大声出してごめんなさい」

 この人、誰…?もしかして助けてくれた?

 頷いて返す。声はうまく出せない。彼には悪いけど寄りかからせてもらう。

「立てます?あ、俺、魁人。五木魁人いつきかいとです。青木学院の三年」

 同じ学校の…?申し訳なくて、壁まで移動して彼は目の前にしゃがむ。

「琴葉…同じ学校の、三ね…」

 咳が言葉を遮る。

「知ってる。きみ、いつも同じ格好だから。…無理して喋んないで」

 力なく頷く。

「ごめん、な…」

「だから喋るな」

 謝るのを制止された。咳き込んで背中が壁と離れた瞬間、ごつごつした彼の大きな手が背中にふれる。そしてさすってくれた。安心したら呼吸がしやすくなった。視界を遮るものもいつの間にか消えて。

「えっと、ありがとうございます…も、大丈夫です…助けてくれて、ありがとうございました…」

「大丈夫には見えないと言うか…」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

僕がいた証 夜桜夕凪 @Yamamoto_yozakura

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る