耐えなくちゃ3話
定期試験が終わって推薦の話が学校で行われた。評定平均や公募推薦、指定校推薦の説明。推薦願の書き方、提出期限。親が指定校推薦を希望してるとはいえ、家の安全が保証されない限りは進学しないと言っていたのを忘れたのかな。それとも、覚えていて安全だと思っているのかな。そもそも、こんな死にたがりに何百万何千万などと無駄ではないか?今更か?それでも指定校推薦は学校の代表だ。生きていけるかわからない死にたがりが代表なんて、学校側も不憫なことよ。希望者が僕しかいない点も、自発性のない生徒が送りこまれることも。メンタルがボロボロで体調も万全とは言えない日々。こんな僕ではお荷物だろうに。推薦願を出さなければ当然、推薦はされない。受験勉強もまともにしていないやつが今更始めたとて九月の一桁。時間は充分にある、とは言えないが、絶対入学は避けられる。
そうだ、いつも僕はこうなんだ。これがやりたい!とやりたいことが動く理由じゃない。嫌なことを避けて、最悪な状況を避けられる選択をする。やりたいことなんて思いつかない。実際にあるかどうかはわからないが出てこない。行きたい場所、やりたい遊び、ほしいもの…。パッと出てこない。もし、大学に行けるなら。もし、自由にお小遣いが使えたなら。もし、誰も文句を言わないなら。もし、着たい服が着られるなら。仮定しないと進まない。これをバカバカしいと嗤えるなら、やりたいことをやりたいと言えて、やらせてもらえる環境だったってこと。恵まれていると思うよ、僕はね。僕みたいに、やりたいと希望を伝えただけで一蹴されることもあるんだよ。お前には無理だ、世間はそんなに甘くないってね。それでいて本心ではなく、渋々取った選択を自分の意思でって言ってくるんだ。『願わず、抗わず、従っていた方が傷つかない』そう思うのも自然なことだ。それが年単位で続くとあれが欲しかった、したかったと感情が爆発することもあれば、欲しいものややりたいことがわからないって状況にもなり得る。それが進路選択にいま、大打撃を与えている。今日食べる朝ごはんとかはまた明日って取り返しがつく。でも進路選択は人生の大事だ。大きい金額が動く。『これで良い、なんでも良いや』では近い将来後悔する。身をもって一度は経験してることなんだ。二度と同じ轍は踏まない。踏みたくない。こういうことは『やりたい』以外でGoを出してはいけない。仕方なくの選択だった。親の希望だから。やめる理由がないから。全部だめだ。自分で選んだでしょ、と言われるのも一つだが、後悔しないために自分の意志が必要だ。実際に選択結果が影響するのは僕自身なんだから、自分がした選択だと言い切れなくては他者に選択の責任を押し付けかねん。いや、ほぼ確実に責任を押し付けるだろう。
「いや、だ…逃げたい……。消えたい…」
時間がたりない。やりたいことをやりたいと言う勇気がない。やりたいことなんてわからない。必要なものが欲しいと言うも躊躇うのに、でも言わなきゃ。『大学には行きたくない』。外部が選択するよう圧をかけても、選択した結果の責任は誰も負ってくれない。圧力をかけた本人ですら、僕の選択だと言うんだ。だから、選択しないことを選択する。『チョコケーキとどら焼き、どっちかしか食べられません。どっちが欲しいですか?』に対して、『どっちもいらないです』と返すような感覚かな。それで良いと思うんだ。死にたくなってまで学びたいことなんてないんだしね。
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