耐えなくちゃ2話
お盆が明けてから、眠れない日が続いている。あの頃からの癖で深夜の一時二時に寝るのは変わらない。ただ、充分な睡眠は取れていたんだ。五時間も眠れていれば生活するのに支障はなかった。夏風邪で落ちた体力も戻ってきている。それが五時前後に中途覚醒し、三時に早まり、二度寝三度寝に染まり始めていた。日々の睡眠不足とフラッシュバックの疲れで吐き気がする。動きたくない、動けない。息が苦しい。夏風邪の咳を引きずってる…わけではないし、過呼吸じゃないような気もするけど、そうかもしれない。夏風邪前の息苦しさは、どうだったっけ…。たぶん小さくて乾いた咳はしてたと思うけど、比較的抑えられてたはず。それに生活に支障はなかったはずだ。いまは、抑えられない。背中が痛い。心臓の辺りも痛い。握り潰されるみたいだ。知ってる苦痛だけど、苦しい。あの頃は、抑えられたのに、いまは…。無理、息が苦しい。咳を隠せない。視界もおかしいし、フラフラする…。
けほっこほ、ひゅう、はぁ、こほこほ…
しのりんには気づかれても、両親には知られたくない。面倒だから。テスト勉強とかそんなの考えられる状況では…。でも、悟られないようにしなくちゃ。
「ことちゃん…?」
遠慮気味に聞こえる妹の声。本当はこんな姿なんて見せたくなかった。今更すぎる気もするけど…安心する。
「しの、り…」
咳が邪魔をして上手く呼べない。声も枯れている。
「そーだよ〜?」
ひゅっはぁ…こほ、けほ、けほけほけほ…
しのりんが背中に耳をつける。
「ん〜喘鳴ではないねぇ…。過呼吸かな?あと扇風機のせい?身体の痺れはある?」
痺れはない。咳のしすぎで背中と頭痛い。あと心臓のあたりも。
頑張って『ない』と伝えた。
「そっかそっか、シノにできることはあんまないからなぁ…」
そう言って背中をさすってくれる。
「息、吐くの意識して。たぶん過呼吸だからことちゃん」
発作だったらどうしよう。吸入器はあるけど使い方知らない。
「寒いのとか、乾いた空気だめだったよね?扇風機、向き変えるよ」
何から何までありがとう。ごめんね…。僕がこんなんじゃなければ、しのりんの手を煩わせずに済んだのに。
「ごめん、ね…」
「ん〜?大丈夫だよ?」
見返りを求めないその態度がありがたい反面、申し訳なさが増す。
「ぼくは、なにも、返せ、な…」
「無理して喋んない!ことちゃんはシノの傷診てくれるから返せてるよ?返すならね」
でもしのりん、きみの傷を見るのは年に数回だよ。僕なんてしょっちゅうじゃないか。釣り合わない。
「ママたちには内緒にするから苦しくなったらいつでもシノを呼んで。ひとりで苦しまないでね」
「ん…」
優しすぎるよ、しのりん。なんでそこまでするんだい?
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