6.お姉ちゃんと町中デート

//SE:町の活気のある音

//SE:隣で歩く音

//声、右から聞こえる形に


「わー、やっぱ、すごいねえ。人がいっぱいだ。昨日は町の様子は、馬車の中から見てただけだけど……こうして見てると、目が回っちゃいそう」


「ほらほら、弟くん、見て見て。あそこ、お菓子が売ってる。せっかくだし、食べる? ……いやでもさっきお昼食べたばっかだし、すぐに食べるのはよくないのかなぁ」


「あ、ほら、あっちにも……なんですか、弟くん。その何か言いたげな雰囲気は」


「だって、こういう町なんて滅多に来ないんだもん。仕方ないじゃん。昔はお父さんと一緒に行ったけど、それも着いていったくらいで自由に見て回れるってわけじゃなかったし」


「だから、これは仕方の無いことなのです」


「弟くんにお小遣いまでもらってるのは、なんだか複雑だけどさ……いらないとは言ってないからね。ただ、姉としての威厳というか」


「弟くんは、町中に家があるくらいだから、そりゃあ慣れてるのかもしれないけどさ。弟くんのくせに、生意気だよ。もう」


「それじゃ、罰として……弟くんは私に右腕を貸すように」


「迷子の防止です。こんな人が多い所にいるんだから、離れたらどこにいるかわからなくなっちゃうでしょう」


//声、より側で聞こえる形に


「よろしい。弟くんの腕は、私が貰いました。弟くんも、くれぐれも私から離れたりしないように」


//SE:歩く音


「……私達ってさ、こんなふうに並んで歩いてると、恋人みたいに見えたりするのかな」


「もっとも、私たちはふつーの姉弟なんだけどね。だから変な事は、考えないように」


「……別に、私もそう思われるのが嫌ってわけでもないから。そこも勘違いしないように」


「あ、弟くん、ちょっと待ってて」


//声、少し離れた場所から聞こえる形で


「すみませーん。これ、買いたいんですけどいいですかー?」


「はい、はい……はい。ありがとうございます」


//声、右の近くに戻る


「おまたせ。じゃあ、また腕、借りるからね」


「……あれ、露天で何買ってきたのか、見えてなかった? そっか……弟くんは、私が何を買ってきたと思う?」


「正解は……これ。耳かきです。弟くん、好きだったよね」


「村からここに来るときには持ってこれなかったし、買っちゃった。お家に帰ったら、お姉ちゃんの耳かき、してあげる」


「弟くんは待ち遠しくて早く帰りたくなっちゃったかもしれないけど……まだまだデートは始まったばっかりなんだから。お楽しみは、その後ということで」


「町中のエスコート、お願いね。弟くん」

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