4.お姉ちゃんとおとなり湯舟

//SE:カポーン

//SE:チャプチャプとした水音

//声、左から。少し距離がある形で


「あったかいなー……きもちいー……」


「あったかいお水って、どうしてこんなに気持ちいいんだろうねー」


「肩までまったり浸かって、ほかのことぜんぶ気にしなくていいーって感じ」


「お風呂も、泳げそうなくらい広いし……あ、勿論、そんなことしないよ? 私、子供じゃないもん」


「でもさ、頑張ったら村にいる人たち全員入れそうなくらいには、おっきいよねえ。それを私達だけで二人じめと考えると……ちょっとだけ、寂しいかも」


「まあ、弟くんと二人で入るのは、悪くないかな。昔も、弟くんと二人で入ってたし。こんなに広くは無いけど……ちっちゃな木桶に、二人で。狭いから、ぴたってくっついて入ってたよね」


「贅沢なのも、そりゃあいいけど。私はけっこう好きだったなー。弟くんは、恥ずかしがってたけどさ。覚えてない?」


「……そうだ。ね、そっち、行くね?」


//SE:チャプチャプとした水音が迫ってくる

//声、すぐ真横から聞こえる形で


「こんな感じで、肩と肩、ぴったりで。うん、落ち着くなー」


「あ、こっち見ちゃ駄目だからね」


「……うん。わかればよろしい」


//数秒、沈黙


「はぁ……」


「……あのね、私、弟くんが来るまですっごく心配してたんだよ」


「ううん、心配なんて言葉じゃ言い表せないくらいだったの。もう、死んじゃったんじゃないかなって、もう二度と会えないのかなって……そう思ったら、なんにもする気、湧かなくってさ」


「いま、こうして大きくなった弟くんと一緒にお風呂に入ってるの、変な感じ」


「なんだか……夢みたいだなって。そう思っちゃう。私にとって、とっても都合のいい夢。寝たら消えちゃうんじゃないかっていう、こわい夢」


「ね、弟くん……生きてて、ありがとね」


「それだけじゃなくって……私を一人にしないでくれて、ありがと」


「……うん、やっぱり、二人でお風呂に入ると、あったかいや」


「ずっとこうしていたいけど、流石にそれは無理だよね」


「だから……あともう少しだけ、このままでいさせて?」

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