21話 出発


僕は鬱々としていた。

病院のベッドの上で。


「やぁおはよう響! 今日もいい天気だな、うむ! いつもどおりに知性と美が輝いているな!」


イワンさんとマリアさんの、毎日のようなお見舞い……っていう名目の、ただ話したいだけなおやつタイム。


けどいつも思うけども、やっぱり外国の人の語彙って特殊だよね。


「ところで響! 今日は新しい店がオープンしたと聞き、朝一で並んで買ってきたぞ! 若者に人気だというスイーツを! 今日も皆で食べようではないか!」


ああうん、今日もお元気ですね……あと結構にミーハーですよね……。


ものすごい笑顔で近づいてきたマリアさんが枕元の机に紙でできた箱……たぶんケーキ系の柔らかいやつなんだろうな、それを自信満々で置いて僕を見てくる。


まるでおばあさんと孫だ。


僕はふたりのお孫さんとかじゃないんだけどなぁ……。

どう考えてもそんな扱いだよなぁ……。


最初っから僕のこと気にかけてたのって、もしかして猫かわいがりする孫が欲しかっただけなのかもなぁ……。


ほら、最初会ったときも「怖がらないでくれた」ってのが最大のポイントだったみたいだし。


「……なあ響。 嫌なら嫌だと、はっきり言っても構わんのだぞ? 最近のマリアは少々浮かれすぎているからな、びしっと言わねばならぬのだ」

「なにを言うイワン。 こんなにかわいい響の世話ができるのだぞ? それに響は嫌がっていない。 なぁ響?」


どっちももうちょっと距離を置いて貰えると僕とっても嬉しいかなって。


でも何回言っても聞かないから多分通じないんだよね。

おんなじ言語を使っていても。


「待つが良いマリア。 響は儂と今話し始めたのだ、しばしのあいだ待ってもらおうか? なにしろお前は話し始めるとなかなか終わらないからな、先に儂に譲るのが筋というものだろう?」


いつも通りにケンカするほど仲が良くなりそうだ。


僕は目を逸らして枕元の箱を開ける。

あ、美味しそう。


「おいおいイワンお爺さんや? 先ほど貴様の部下から泣きが入ったぞ? お前、今朝はなにやらの用事があったらしいじゃないか。 それを丸投げして私たちの会話に無理に合わせなくともいいのだよ? そのぶん私と響だけで盛り上がるからな。 なぁ響?」


あー、こういうときはブランデーか赤ワインが欲しいなー。


「はて、なんのことかのう? そもそもとして儂と響の会話に……それも、貴様のようにただべらべらと話しているのではなく、静かな会話という上品な時間に無粋は要らぬのだがのう」


この人たちってば素で怖いんだよなー。


「そのせいで貴様の代わりに私と私の響との時間がわずかでも取られたのだがね? それはどうしてくれようか? なぁ響?」


「お主はいつも、いっつもそばにいるではないか、儂の響のところに。 女同士ということを利用しおってからに……でも儂だって! 儂だって、たまには響とお前抜きで戯れたいもん!」


何がこの人たちをここまで駆り立てるんだろうねー。


「いい年した爺さんが、その話し方。 恥ずかしいとは思わんのか?」


でもマリアさん、あなたもイワンさんがいないときたまに「でちゅねー」とか言いますよね?


僕、そこまで幼く見える?


いや、肉体年齢的には……あと外国人的には幼く見えるんだろうけども。


「この糞爺が」

「……はて、可笑しな言葉が聞こえたのう……それは、お前からかの?」


そうして始まるふたりの威圧感と筋肉の応酬。


僕が「そろそろ止めて?」って言うまでのじゃれあいみたいなもの。

仲が良いほどにってやつなんだろうね、きっと。


それとも部下の人たちがいる前じゃできないから?

まぁどうでもいいけども。


ぎゃいぎゃいしているふたりを見上げながらもぐもぐする僕。


ちらちら僕を見ながらだし、多分この辺も僕を気に入っている理由なんだろう。


だって身長2メートル超えの筋肉だるまたちが傍でケンカしてるんだもん、なんか猫かわいがりされてるっていう立場じゃなきゃこうして安心してもぐもぐできないもんね。


廊下とかでの言い合いを止めたりすると、お付きの人とか護衛の人たちが僕のことすごい顔で見てくるし。


……そんな僕たち。


もう2月も半ばだ。


つい何日か前にお見舞いに来たあの子たちにチョコをもらっちゃったっていうのがあっても、僕はまだ居座っているんだ。


つまりこの入院はもう、1ヶ月半になるということで。


……さすがの僕でも毎日こうして話していればほだされる。

知人から友人に……この人たちの場合は家族みたいに感じるほどに。


でも、家の方もあらかた片付け終わって準備も整っているし……そろそろお別れしないとって思う。


こういうのっていつするのかってきっぱり決めないと……いつまでもこのままでいいやって思っちゃう悪いクセがあるってよく知ってるから。


この人たちとも「退院」でお別れ。

あの子たちとも「引っ越し」でお別れ。


あの家とも――あと1ヶ月で、お別れだ。





手元の画面の中。


ねこみみとポニーテールっていう目の前で座っているふたりがその中で歌って踊って間奏でアピールをして、もう1回おなじことを繰り返して……そういうのをちょっと見てたら数分間のライブっていうもののうちの1曲が終わった。


「どうかな、響くん。 それ、おとといのなの」

「……えへへ、知り合いに観てもらうときって、やっぱり恥ずかしいですにゃ」


顔を上げたら栗色のポニーテールさんと目が合って、その隣を見ようとしたら……ぱっと背けられた。


ねこみみさんは恥ずかしがり屋さんだもんね。


ある日に「ちょっと会えますか?」って聞いたら「いいよ? 今?」って軽いノリで会ってくれたふたり。


……よくよく考えると今をときめくアイドルさんってやつだし政府の広報とかしてて結構忙しいのに良く会ってくれるなぁ。


まぁいいけど。


「……ところで。 おふたりに訊きたいことがあるんですけど」


「ん。 その感じ、まず間違いなく今井さんが『そういう雰囲気になったらすぐに連絡して!』ってうきうきしてた感じのことじゃないよね」


「はい、えっと……ねこみみ病が発病したとき。 自覚したら……今ってどうしているんでしょうか。 その、最近発病した人たちがです。 発症したらすぐに通報とかが入って、国とかから手紙が来たりお役人の人が来たりはしないんだとは思いますけど」


調べたけどなんだかそういうところについて詳しく書いてあるとこがなかったんだ。

だからこうして当事者たちの中でもよく知ってるだろうふたりにコンタクトを取っている。


「あ、響くんも気になります?」

「えぇ、一応は」


軽い感じ。

多分教えて良い内容なんだろう。


「お役所も手一杯だそうで。 なので基本はねこみみ病になった方かそのご家族、あるいはご友人からとかの連絡……つまりは自己申告ですね。 と言っても回線混み合ってるので、あと実際にお役所の方が訪問しないとわからないので結構待つことになっちゃうと思うけどね。 あれよ、お問い合わせダイヤルとかってすっごく待つでしょ?」


「でも直接お役所に行けば最優先で取り扱ってくれるみたいですにゃ」


「そうですか……なら、もうひとつ。 ねこみみ病になったことで日常生活に支障が出てきたりしたらどうするんでしょうか。 たとえば……学校とか会社とかで、見た目が変わったせいで他の人との関係が難しくなったり、受け入れてもらえなかったりしたら」


たとえば――前の僕から今の僕になったように。


どこにでもいる普通の背の普通の黒髪の普通の顔の男から、珍しい顔をした銀髪の幼女になるっていう変化があったとしたら。


「困ったことになった場合には本人か周囲の方からの連絡で係の人が駆け付けて手助けして。 さらに認められれば特例措置が発動するらしいですね」

「らしいですにゃ……特にケモノ化の場合だと」


特例措置。


なんだか物騒な響きだけど、逆に言えばそれで守られる側にとってはとっても頼りになりそう。


「たとえばですね、最悪お家にいられなくなる……なんてことが。 あ、ご家族の問題だけじゃなくって、その、ご近所さんとの問題とかで、ね? そうなったら本人だけでも一時的に保護してあげたり、ご家族ごといろいろと変えてお引っ越し、なーんて感じで……まぁドラマである『なんとか保護プログラム』みたいな感じだそうです」


「こほん、滅多にないことのはずなんですけどにゃ、困ったことに……変わった本人がそれを受け入れられなくって、いろいろあって、それで入院……メンタルのケアをするために、することもあるそうですにゃ?」





「……ふぅ」


家の大掃除をしていた僕はタオルで首すじを軽く拭う。


鏡には、体じゅうを動かし続けていたからか顔が赤くなっていて汗をかいていて、そのせいで髪の毛が顔とかにうざったいかんじに張り付いていて、まだ肩で息をしているっていう銀髪幼女が……ふらふらしていた。


あぁ、危ない危ない。


すぐに仕分けのために敷いてあるタオルの上に腰を下ろしてひと呼吸。

これだけ貧弱なんだから気をつけないとな。


この前のことを思い出しながら作業に没頭していたからつい今の僕はひ弱なんだって忘れちゃう。


「……ん」


顔を上げる。


そこにはごみ袋が10個くらいぎゅうぎゅう詰めになっている。

それだけ物を捨てることになった。


ほとんどが使っていないけどもったいないものばっかりだ。


捨てるのはヤだけど「じゃあ使うの? 何回も?」って聞かれたら「そんなことないけど……」って感じの。


家の中はほとんどそんなものばっかりだったな。


年末にするはずだった大掃除が……どうしても必要なもの以外をがんばって捨てるのが。


だって、こうして家の中をきれいにしておけば心置きなく僕はこの家を離れられるんだから。


魔法さん。


ねこみみ病。


若返りとかケモノ化。


最初の頃――同じような人が少なければ何ヶ月も拘束されるらしいって聞いておいたから。


――もし僕のこれが前例の無いもので「隠さなきゃ」ってことになって……僕が居なかったものにされちゃったとしても、叔父さんに迷惑をかけないようにしたいから。


「……………………………………」


怖い。


もちろん怖いよ。


でも……こうしないと、先に進めないのはこの1年で分かったから。


だから、そろそろ勇気を出すんだ。


――そんな感じで大掃除……身辺整理をしていたら、今日はもうその日。


家を出るって決めた日。


こういうのって決めるとあっという間だよね。

決めないとずるずる10年とかニートしちゃうけども。


僕は空っぽになった家の中を見る。


どうせもう使えないのと使えなくなるのと踏ん切りをつけるのとで靴箱やクローゼットは空っぽ。


玄関の外まで掃き掃除もしたし、これで誰かが家を尋ねてきても空き家だと思えるくらいにはなったはず。


居間や台所もウィークリーマンション程度には物を残したけども、それ以外にはなにもない感じにした。


台所だって調味料とか以外は処分したし、なにげに汚れとかを落とすのにいちばん苦労しただけあって見違えるようにきれいになっている。


これなら誰かが来てすぐに住んだって、食材さえ買ってくれば文句はないだろう。


うん。

これなら大丈夫なはず。


おかげですっきりしたし後戻りできない感じが漂ってくるし、これでよかったんだろう。


人によっては大学生になるときに家を出るんだ、それを考えたら僕のそれは遅すぎるくらいだもん、踏ん切りってのが必要なんだ。


この家で、父さんたちがいなくなってからも15年ものあいだ、ずーっと……ただ暇を潰すためだけに生きてきただけ。


でも、そんなのも今日でおしまい。

今日の夜にはきっと、ここじゃないどこかにいるんだ。


退院してから2週間。

外はすっかり暖かくなってきた。


……僕の持ち物は、リュックの中身と今着ているものと、後で着るもの。


それと、今までの記憶っていう僕自身の中にあるものだけ。


思い出。


こうして振り返ってみると「そんなに悪くもなかったな」って思える前の僕としての人生と、たったの1年にも満たない期間だったけど、でも、今の僕として生きた新しい人生。


ちょっとばかりおかしなことにはなっていたけど、でもきっと……こうならなければ決して体験することのできなかったなにかを手に入れることができたんだ。


だって、もし僕が前の僕のまま、男のままだったら多分今も……これまでの10年とおんなじ生活だっただろうから。


そろそろ僕もひとり立ちってのをしなきゃ。

普通の人は誰だってそうするんだから。


ちょっとだけ遅くなっちゃったけども、まだやり直せるだろうって。


僕はいつものように、そして最後かもしれないベッドからずり落ちるような降り方をして、これだけはっていうものを詰めたリュックを見て、もういちど中身を出して確認する。


いろんな書類……権利書とか口座関連とかハンコとか。


外に出るためのものは、揃っている。

これで大丈夫なんだ、きっと。


「………………………………」


わかっているんだ。


現代の社会でこんなことになって、国の保護を受ける。

酷いことはされない。


わかっていたんだ、大丈夫だっていうことは。

むしろその後のほうが大変だろうっていうことくらいは。


「……行こう」


そうして玄関まで来て靴を履いて。

鏡で髪の毛だけを軽く整えてから、僕は、手を伸ばして鍵を回す。


みんなにおわかれを言いに。





まずは喫茶店。


収録があるらしくって朝一でしか会えないっていうことだったから、こうしてまだほとんどお客さんがいない中、僕たちは会っている。


なんかつい最近会った気がするけど多分気のせい。


「……じゃあご病気でご入院っていうことで? いや、びっくりしたけどよく考えたらなんかそんな雰囲気ある気はしていたんだよ、響くんって」

「そうですか」


今朝はいつものポニーテールじゃなくて下ろしたままで、僕としてはこっちの方が年相応……中身に似合っているって感じる髪型になった岩本さん。


サングラスと帽子のセットをしているし、服装も地味。


まぁここまでの格好をしているなんてのはきっと、これまでとは違って個室とかじゃない普通のチェーンの喫茶店だからだろう。


大変そうだな、有名人って。

好き勝手に出歩くことさえできなくなるんだから。


「ということは、しばらく……じゃないんだよね、当分のあいだ会えなくなるんですね?」


「はい。 そんなにかからないかもしれませんし、場合によっては年単位でかかるかもしれないんです」


今日はとっても残念だ。


なぜなら島子さんが……収録って言っていたし、予定があるからしょうがないんだろうけども……肝心のねこみみとしっぽが隠されてしまっているから。


しょんぼりだ。


僕はしょんぼりしている。


ねこみみは大きめの帽子……ベレー帽っていうのなんだっけ、その下で恥ずかしがっているときみたいにぺたんってしているんだろうけど、しっぽはどうしているんだろ。


少しダボダボ系なパーカーを羽織っているし、腰とかおなかに巻き付けたりして隠しているんだろうか。


本当に万能だね、パーカーって。

その気になればフードの中におみみもしまえそうだし。


「……あの、それで……」

「あー、ひかりさんですにゃ。 ごめんなさい、ときどきあーなっちゃうんですにゃ」


あいさつを済ませて島子さんと話していたら聞こえてきた、ブツブツ言っている感じの声。


よく聞き取れないけど、なにか良くないことがあったらしい。

なんだろう。


「……ひかりさーん? 言っちゃいますにゃー、いいんですかにゃー?」


……返事がない。


何かに相当なショックを受けている様子だ。


「よし、イヤだって言わなかったらそれは同意ということでいいですにゃ?」


それってなんか悪徳セールスっぽいけど良いんだろうか。


「じゃー言っちゃいますにゃ。 あのですにゃ、ひかりさんったら……本気じゃないのは当然ですけどにゃ、ひかりさんは響さんのこと、けっこーお気に入りでしてにゃ?」


お気に入り?

僕が?


何で?


「……ん? ち、ちょっとみさきちゃん!? なに言ってくれちゃってんの!?」


あ、戻って来た。


「ちゃーんと確認しましたにゃ! 『言っていいですかにゃー?』って。 ねっ、響さん?」


がばっと起き上がって詰め寄る岩本さんを軽くいなす島子さん。


「え? 私、いいって言ったっけ……それに、そんなに話してなんか」


「許可はちゃんと取りましたにゃ。 ウソついてないですにゃ。 ついてたらこんなに強気になれないですにゃ? にゃあ?」


どや顔っていうのを……島子さんがしているのは初めて見たけど、それを見て本当らしいって分かって気の抜けたような顔をしている岩本さん。


力関係が逆転している。


けど、こういうおふざけをして平気な辺り、この子たちも仲良いんだね。


日ごろのストレスを吐き出してふしゃーっとなっている猫島子さんと、少し顔が赤い、けど髪の毛を下ろしているせいでやっぱり違う印象を覚える岩本さん。


髪の毛を下ろすだけでここまでおとなっぽく……元の感じになるんだから、僕の好み的には普段からそうしていればいいのにって感じの岩本さん。


けどこうして下ろしていると肩まで完全に隠れるような、長くて少しくせっ毛のある栗色が新鮮だ。


「大体ですにゃ、響さんが……響さん、ごめんなさいですにゃ? 体が女の子なのは、まぁ、なんにも言いませんですにゃ。 響さんの心は男の子なので、そのへんはまったく問題ないんですにゃ」


「そ、そうでしょ!? だから響くんのこと言ったって!」


「最近は性別とかのことって見た目よりも中身っていう風潮ですし、私自身もそう思いますからそこは別にいいのですにゃ。 だけど、だけどですにゃ! トシを考えてくださいですにゃ! いくらねこみみ病で若返ったとはいえ中身は元のままなんですにゃよね? だからつまり、えっと……15くらい!? 15くらいも年下の、しかも中学生の男の子のことずっと話してるだなんてやべーですにゃ。 27と13ですにゃ! あ、これ倍を超えていますにゃあ!?」


「ごめん、僕って実は25だから歳の差はたったの2なんだ……」って言ったらどんな反応するんだろ。


「正直ドン引きしてましたにゃ、だって犯罪ですにゃよ? やべーですにゃ、やべーんですにゃ。 すっぱ抜かれたらおしまいですにゃ!」


ねこみみとしっぽが服の外からでも激しくもぞもぞって……たぶんこれ島子さんも興奮しすぎて今は芸能人だって隠しておかなきゃいけないってこと忘れかけているな。


髪の毛をばさっと広げながらこっちに振り向いてきた岩本さん、だらだら汗をかいていて顔も真っ赤だ。


ハンカチで拭くほどに汗が出ている。


「はぁ、まったく情けないですにゃ。 だって精神年齢27歳のオバあいたたたた!?」


午前の喫茶店だからこれだけ騒いでいても店員さんが来ないくらいにはお店はがらがらで、だから聞かれている心配もないからいいけど……女性って、女の子って、年齢に全然関係なく本気で恋愛っていうのが好きなんだな。


ほっぺを掴んでいる岩本さんと猫ぱんちを出して応戦している島子さんをみて、そう思う。


「――そのへんでよろしいですかー? おふたりともー?」


「!?」


「ひぇっ!?」

「にゃあ!?」


僕も声が出そうになったけど、さっきからぼーっとふたりを見ていただけだったから喉で止められてよかった。


お腹の中がぎゅってなる感じの女の人が怒っている系統の声。


その主は悪魔、じゃなくって今井さん。


……苦手意識が抜けないでいてもしょうがないよね……うん。


「外出時には、それも予定があるときにはどんなときでも連絡が取れるようにって、いっつもあれほど言っていますよねー? 特にひかりさんはなーにをやっているんですかー? この前にも大変だったの、もー忘れたんですー??」


「え、えぇっとね? ちおりちゃん、違うの」


今井さんの下の名前。


……そうだよね、岩本さんの方が年上だもんね……今は若くなってるけども。


今井ちおり。

通称悪魔さん。


「おふたりは立場が立場なんですから気をつけてくださいって何度も何度も言ってきましたよねー? 今は護衛の方も増やしてもらっていますしなんとかなるはずではありますけどー?」

「そ、そうですにゃちおりさん! だから、ちょっとスマホから意識が外れていたくらいで……」


ないとは思うけどこっちに飛んでこないようにって、ちらちらこっちを見てくるふたりと目を合わさないようにして。


「さて、響さんは通報もとい岩本さんたちがここに居ると教えてくださってありがとうございましたぁ!」


やめて、告げ口したって言わないで。


「……いえ、連絡が取れないということでしたし……萩村さんも心配していましたから……」


一応正当な理由を主張してみるけどもねこみみ病ペアは放心したような目で見てくる。


やめて、見ないで。


「…………………………じー」

「…………………………じー」


ふたりから凝視されている。


「…………………………ふいっ」


僕はそっと目を逸らした。


「おふたりともぉー、車で待機していても全然来てくれませんしぃー、連絡も何回もしたお電話にも気がついていないみたいで困っていたんですよぉー。 GPSと事前の相談とでおおよその位置はわかっていたんですけどね、けど緊急時以外は政府の護衛の方にも連絡つきませんし……」


話しながらだんだんと僕に迫ってくる今井さん。

少しずつおしりを後ろにズリズリしていくのに、どんどんと近づかれる。


うん、これは懐かしい感じの今井さん。


もう怒っていたときのことは忘れよう。

うん、忘れる。


髪の毛を後ろで縛っている彼女はそろそろ僕の顔に前髪がかかってきそうだっていうところまで近づいて……上から迫ってきて、目をのぞき込まれる。


かがりみたいな近づき方。

女の子って上からが好きだよね……。


「でもー、あいかわらずに響さんって……いえ、なんだか以前お会いしたときよりもずっとずっと輝いていますね……! 輝かしいオーラを感じますっ」

「そうですか」


「どうですか? 最近心変わりとかされませんでしたか? ほら、こうして現役アイドルであるこのおふたりともこうして会っていらっしゃいますし、ひょっとしたら」


「いえ、それとはこれっぽっちも関係のないお話を聞いただけです」


「そこをなんとか?」

「なりませんね」


「しかし私の勘によるとですね……可能性、以前よりもだいぶ高まっているのでこれはもう押したらいけそうな……響さん、ちょっとまたライブ映像でも」


「――今井さん?」

「わわっ!? ……はー、萩村さん、脅かさないでくださいよ――……」


お化粧の塗り具合がはっきりと見える位置まで近づかれてしまっていた今井さんがぐっと離れて立ち上がり、後ろにいた……相変わらずの大きさだね……萩村さんへ振り向く。


「今井さん……以前にも話し合いましたよね……? 覚えていますよね、響さんからのアプローチがない限りはどうするのか」


もっと言ってあげて、この人しつこいから。


多分押しに弱い子とかってこういう人に連れたかれちゃうんだろうなってくらいだから。


「わかっていますよぅ、今のはかんたんなご挨拶だけで」


ようやくに諦めてくれたらしい今井さんが離れて、代わりに萩村さんがしゃがみ込んで話してくる。


この前もそうだったけども……子役さんとかのお世話とかもしているのかな。

子供の相手になれている印象……僕は子供じゃないけどね。


背も高くてガタイもよくって少し顔もごつごつしてるからこそ圧迫感を減らそうとしているんだろう。


「クリスマス……の頃以来なので、もう3ヶ月近く前になりますか。 あのときに手を貸していただいたっきりで忙しさでお礼もできず」

「いえ。 お礼ならあのときにもごちそうしてもらいましたから」


二言三言話して、ついでに今来た今井さんと萩村さんにも簡単に、しばらく会えないっていうのを……詳しいことは岩本さんたちから聞いてくださいって伝えて。


それを聞いた今井さんが近づいてきそうになったけど、萩村さんに止めてもらって。


優秀なボディガードだ。


お別れの雰囲気。


僕はゆっくりと体をズラしてイスから滑り降り、ちゃんと着地。


「やだ、今のかわいい……!」

「こら、男の子相手ですにゃ」


足元を見ていた顔を上げると、いかついけどいちばんまともで話しやすい萩村さんとやっぱり近づいてほしくない今井さん、今日はねこみみさえ見せてもらえなかった島子さんとポニーテールがふわふわしている岩本さんが、僕を見下ろしていた。


……あぁ、大人と高校生と高校生になった人に囲まれると、ここまで圧迫感が。

改めて今の僕の小ささを実感する。


「それじゃあ響くんっ」


いつのまにかお会計の紙をレジに持って行っている今井さんの後ろ姿を見ていたら、岩本さんが上からのぞき込んできていて。


「ご病気、よくなったら連絡くださいねっ! ……聞いた感じだと結構かかる大変なものみたいですけど、きっとよくなるって信じていますっ。 何年後でもいいのでまたこうやって元気な顔を見ることができたら、私、とっても嬉しいですっ」


「ですにゃあ。 がんばってください……いえ、上手く行くことをお祈りしていますにゃ」


島子さんもまたかがんできていて服のあいだからちらっとしっぽが見えて、僕はちょっと満足した。


「ちょ、ちょちょちょちょっと待ってください響さん響さん!?」


良い感じのお別れって思ったのを早速にぶち壊す今井さん。


「響さんがご病気ってどういうことですか! なんでおふたりは知っているみたいなんですか! なんでそれを話してくれなかったんですかあとなんだか今呼び方も変だったような気のせいでしょうか!」


躁鬱激しいね……きっと地だよね、これって。


「ほらほら、急ぐんですよねー? 話せる部分だけはお話ししますから行きましょ、今井さん」


息継ぎもせずに話し始めようとした今井さんを遮るように、岩本さんと島子さんが息をそろえて腕を組んで彼女をホールド。


どうやらみんなにとっての今井さんってそういう認識らしい。

うん、これからもがんばってみんなで制御して?


「ち、ちょっとふたりとも!?」


「さー急ぐわよー」

「急ぎますにゃー」


「もう! 響さん、それではまたお会いしましょう! ご連絡は、ご連絡が来るの、いつまでも待っていますからね――!!」

「そうですか」


あ、最後の会話なのにいつもみたいに適当な返事しちゃった……けどまぁいいや。


とうとうドアの外まで引きずられて行った今井さんをぼーっと見ていたら萩村さんと目が合う。


「それでは私も失礼します……ご快復、祈っていますね」


やっぱり男相手は良いね、楽だから。


けどまぁ、あの人たちはみんないい人だったな。

ひとりを除けば。





「今まで大変お世話になりました。 イワンさん、マリアさん」


退院するときのこと。

半月ほど前のこと。


「もう約束の1ヶ月が経っているし、体もずっと安定しているし、反動……魔法さんのなにかが現れていないでしょ」って説得し続けてようやくに解放された、その日のこと。


「教えていただいたこと。 よく考えて、これから結論を出そうと思います……わぷ」


目の前が真っ暗になる。

顔が、体が、包まれる。


押される。

苦しい。


……これまでもよくあった、マリアさんからのハグ。


胸もでかすぎると大変だよね……かがりの将来が非常に心配だ。


だってブラジャーって意外と硬いもんだからこうして顔に押し付けられると痛いんだもん。


あの子もマリアさんと同じように無意識にするからなぁ……。


けど、これも愛情表現なんだろうって我慢している。

僕は偉い。


けども……結局お金も払わせてくれなかったし、こっそり渡そうとしてもダメだったし。


「うむ、響が元気になってくれてなによりだよ」


そういえばこの期間、お互いに呼び捨ての仲になった……僕からは無理だったから向こうからだけだけども。


おかげで中庭とかで話しかけて来る他の患者さんとかからは「優しいおじいちゃんとおばあちゃんねー」って言われる。


ごめんなさい、僕の祖父母も両親も天の彼方なんです。


「君の反動も完全に収まったと思って良く、さらにはそのあいだにたくさん話すことができて私たちは満足だ。 それに、私たちがしたことを君が気にすることはないさ。 同じような変異や変質……もっとも、君の場合は特殊だろうがね……それに悩む同志……じゃないな、仲間を見つけたとしたら、どんなことがあろうとも全力で手助けする。 当然のことなのだよ」


相変わらず微妙なアクセントとか語彙の違い、あとはこの人たちの事情ってやつで分からない会話もあったりする。


けどスルーして良いっぽいからそうし続けて3月だ。


「響」


今日は少し透けた感じの眼帯をしていて、そんなに違和感のないイワンさんが僕を見下ろしてくる。


「この国も……いや、先進国を始めとした多くの地域で、世界はようやく私たちの知る『これのほんの一部』について『ねこみみ病』などというものとして認めるようになった。 ようやく……現代に入ってずいぶん経ってからようやくに認められつつあり、人権も保障されるようになってきたと言えよう」


もうすっかり慣れて、どアップで目覚ましに見せられてもそこまではびっくりしなくなってきたイワンさんの顔を見る。


「しかしだな。 君もよく承知だろうが、人類が……これだけ暇さえあれば互いを攻撃し、暇がなくなれば人を数としてしか見ない殺し合いもする……そんな人類というものが『彼らとは違う我々』というものを、そう簡単に受け入れられるとは到底思えないのだよ」


そういう話になりそうになるたびに「僕怖いのは苦手なので」で回避はしてきた。


けど、このふたりは「初期のころにねこみみ病としていろんな国で『保護』された人たち」についてのヤな過去を知ってるらしい。


「くれぐれも。 今一度しつこくとも言わせてもらうが、奴らのところには行かぬように。 これは私たちからの、大切な忠告だ。 そこまでの反動を起こすのだ、仮にそれが権力のある者たち、それも己の利益にしか興味のない輩に目をつけられたなら格好の実験材料とされ……ただ生きているだけ、そんな運命にもなりかねん。 くれぐれも気をつけるようにな」


そう、諭すように言われる。

入院中に何回も聞いたようなこと。


国家とか組織って言うものがいかに残酷か。

システムの中では人なんてただの部品でしかないって。


だけど僕は決めたんだ。


「……な、なぁ響」

「なんでしょうか」


まだ続くらしい。


けど、またこの……孫をあやすような声。


……またぁ?


「なぁ、そのな? もちっと儂らのところにおることはできないだろうか? のう? だって儂ら、響のことがすっごく気に入っちゃったんだもんっ」


「これでさよならです」

「そこをなんとか、響」


「それで入院もただの検査から伸びましたよね」

「それはだね、君を助けようと……」


「無理は承知なのだが、どうかいまいちど頼む! 私のことを婆さんと! そして、いずれは法的にも……」


「だからお断りします」


この人たちに対するためにはとにかくばっさりとが1番。


「そんなことを言ったらおふたりのお孫さんがかわいそうですし……こんなこと、万が一にでも聞かれたら怒られますよ?」


「あやつらはかわいげがないのだ! もっと孫らしい響がいいんだもんっ」


「もんっ」じゃないよ、いい歳して……。



◇◇◇◇◇



「あ、いたいた。 おーい、響さーん!」

「お待たせ……ふぅ、しまし、たぁ……」


駅前。

そこには元・巫女ペアのりさとさよが居た。


今日も動きやすそうなショートパンツっていう短パンの一種を着こなしているりさと、長い髪の毛に合った丈のロングスカートを履いているさよ。


このふたり、見事なまでに服装まで反対向きなんだけど、気がつけば一緒にいることが多い。


友人関係って不思議だよね、似たもの同士と真逆がくっつきやすいから。


「よかったわ、急いで来たから間に合った……ふぅ」


息が荒そうっていうよりは体が運動についていけないときの僕とおんなじような感じだし、大丈夫って言ってるから本当に体は大丈夫だって信じる。


今日のお別れ。


みんな予定があるんだし、無理しなくてもいいって言ったのにね。

お別れなら病院でとっくにしたんだし。


でも、きっと最後に会えるタイミングで会いたいんだよね。


今ならその気持ち、僕も分かる気がする。


「お迎えはまだなの?」

「うん」

「……よかったです。 このあと空港へ向かわれるんでした……よね? 時間とか……」


空港とか本当は嘘っぱち。


だけど、嘘ではあるけど場合によっては本当になるかもしれない。

そんなものだからウソにもならないかもしれなくって、だからそんなに心は痛まない。


お迎えがあるっていうのも本当だし、その時間を時間内に合わせるために決めているっていうのもある。


「走ってきたから暑いわねー」


ふぁさっと髪の毛を持ち上げるりさりんと、さりげなくスカートをひらひらとさせているさよ。


髪の毛をぱさってしてうなじがひんやりするのも、スカートをばさばさするとすーすーしてふとももが冷たくなって気持ちいいのも分かるー。


そうなっちゃった、元・男の僕。


いつ戻るのかは全然分からないけども。


りさりんが……身長差からちょっとだけ屈むようにしてくれないと会話ができないから屈んでくる。


ごめんね……僕ちっちゃいからね……中学生って言い張ってる小学校低学年なミニマムボディだからね……。


「響さん、お元気で。 で、元気になって帰ってきてくれると私、嬉しいわ! 今度はみんなで一緒に、5人そろっての旅行とか! ……えっと、私たちは良いんだからつまりは問題ないってことだし? 響さんさえイヤじゃなければ、こっ……今度こそお泊まりとかもしましょう? みんな大賛成なんだしっ」


お泊まりってワードで顔が赤くなる初心なりさりん。


「私たちみんな、響さん自身が男の子でもイヤじゃないし。 まぁ何度も言ったからわかってるとは思うけど、念のためによ? 仲良くなったこの5人そろって電車とかバスで日帰りで遊びに行くのとか、誰かのお家でみんなで……あ、それは病室でやったわね。 とにかく、まだしたことないこといっぱいあるから!」


りさりんは意外と恥ずかしがり屋さん。


だからこうしていつものクセがさらにマシマシになって、早口でばーっと伝えて来る。


けど、それは嬉しいこと。


そんなりさりんを見ていたらくいくいって肩のあたりをつままれていて、振り向くとさよが近づいていた。


……風が吹くたびに、前髪が長すぎるせいで隠れがちな目が見える。


うつむき加減な、眼鏡越しの目が。


「……響さん」

「うん」


「また一緒に、本の感想とかお勧めの紹介とか……お話し、しましょう」

「うん」


「私、待っています。 ……もちろん学校のお友だちやゆりかさんやかがりさんと……するのも楽しいんですけど。 えっと、なんといいますか、その……響さんとだと、似たような本と照らし合わせたりしての考察とか、そういうもので……えっと、読んだあとも楽しむことができて、楽しかったんです。 ……また新刊を一緒に読んで、感想とか言い合ったり……しましょう」


無理にりさりんに合わせる必要もないのに、それでもがんばって気持ちをひと息に……出会ったころからすれば相当に聞き取りやすくなったさよの声を聞いた。


息継ぎがこれでも足りなかったのか、それとも緊張しすぎたのか酸欠になってよろめいて、あわててりさりんに抱きかかえられるのを見て……この子からも大切な友人って思ってもらえてるんだな。


そう思って僕はがんばって、顔の表情を変えないようにした。


杉若りさと友池さよ。


どちらも平均的な中学2年生の身長……りさは少し高くてさよは少し低いけどそれでも僕からしてみれば大きくって、いつもどおりに上を向きながら、少し見下ろされながら、春休みのことや新学期のことなんかを聞く。


「次会ったらこうしたいね」って未来のことなら、いくらでも明るくできるよね。


……そうして時間が迫ってくると、僕よりもふたりのほうが焦ってきたのが目に見えてわかる。


ゆりかとかがりはまだ来ていないけど……なにか用事があるんだろう。

「絶対見送りに来る」って言ってたし。


でもお別れはもう済ませてる。

だったら良いよね。


「……ふたりとも、今日はありがとう。 時間はかかるかも知れないけど、それがいつまでかかるかも分からないんだけど、でもまたいつか、必ず会いに来るよ」


スマホを両手に……さっきまで笑ってた顔が焦りでいっぱいになっているふたりに言う。


「いっそのこと何年も経ってしまって、みんなが大人になってしまっていたとしても。 それならそれで……そのときにはお酒の席ででも思い出話とかを聞かせてくれると嬉しいかな」


岩本さんも言っていたけど、相対的な精神年齢ならきっと近くなるんだ。


「……もう、さらっとそう言うんだから。 やっぱり響さんって男の子なのね」

「はわ……」


僕もちょっと感傷的になってるみたい。


「それにしても……なーにやってるのよ、ゆりかったら……かがりさんに振り回されてるだけだと思うけど……。 いや、逆もありえる?」


「うーん、どうだろう。 ゆりかはこういうときはしっかりしているはずだから」

「……下条さん、気分が乗るとなにも聞こえません、から……」


みんなの共通認識が光る。


「『先行ってて、すぐに追いつくから!』って言うから、アイツがそう言ったから私たちだけで急いで来たのに、このままじゃあの子たちの方が響さんにお別れ言えないじゃない!」


あの子、とうとう最後まで……何回か来てくれたお見舞いでも結局いっつもだーっと話すのが止まらなかったり、思いつきでそのまま出て行っちゃったりしていたからなぁ……。


「……大丈夫だよ、ふたりとも。 あのふたりにも病室で……帰るときにはいつもお別れを言われていたし、僕からも言っているんだ。 さよとりさからもしてもらっていたようにね。 だから僕は行くよ。 今日は来てくれて、ありがとう」


「……えぇっ! 『またね』、響さんっ」

「……『また』いつか……お会いしましょう、響さん」


「うん。 『またね』、ふたりとも」

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