だからご主人様……今日は奴隷ちゃん、帰りたくないな……

「はあ、ご主人様聞いて下さい」

「……」

「この間、新しくこの街にきた冒険者パーティがダンジョンの階層を更新したという話をしたじゃないですか?」

「……」

「街で買い物をしていたら偶然そのパーティとすれ違いまして、興味がなかったのですぐ立ち去ろうとしたのですが……」

「……」

「そのパーティのリーダーらしき男が何やら話しかけてきたのです」

「……」

「奴隷ちゃんは早く帰りたかったので、一言返して別れようとしたのですがその男、すっごくしつこいんですよ!」

「……」

「君にその首輪は相応しくないとか、今すぐこの街を離れるべきだとか、僕が奴隷から解放してあげるとか、訳の分からん戯言をほざいて行く手を阻んできたのです!」

「……」

「その時点で奴隷ちゃんはかなりピキっていたんですが、何よりムカついたのが……!!あの男なんて言ったと思いますか!?」

「……」

「”君は主人に騙されている”ですって!!」

「……」

「事もあろうにご主人様を引き合いに出して私の気を引こうとは……!!キーッ!今思い出しても腹が立ちます!!グシャグシャのミンチにして肥溜めと一緒に知らない畑の肥料にしてやりたいです!!」

「……」

「大体ご主人様になら騙されたいですよ!いたいけな奴隷ちゃんを騙してさっさと手篭めにして下さいよ!手のひらで転がして下さいよ!!」

「……」

「流石に一般人を相手にするのはマズいですから手は出しませんでしたが……はぁ、あの男次のダンジョン探索で小鬼にでも喰われて死なないかなぁ」

「……」

「もう、全くもって不愉快です!奴隷ちゃんはご機嫌ななめです!」

「……」

「だからご主人様……今日は奴隷ちゃん、帰りたくないな……」

「……」

「な、な〜んちゃって。もう、何言わせんですかこのご主人様は!ふぅ〜やれやれ……わっとと、躓いちゃいました」

「……」

「しかしあの男のせいで買い物に行くのも億劫ですよ!やたらめったに絡んできやがっていつか粉微塵にしてやります!」

「……」

「あっでもこの家は絶対にバレないので安心して下さいね!奴隷ちゃん特製のおまじないで許可がなければ認識する事すら出来ません!」

「……」

「あのストーカー男、家にまで押しかけてきそうな勢いでしたからね!ご主人様と奴隷ちゃんの愛の巣は絶対死守です!」

「……」

「あっそろそろお昼の準備をしないとですね!ご主人様今日は何がいいですか?」

「……」

「オーク肉のソテーとか!……む、塩胡椒が切れていますね……。チーズオムレツなんていいですね!……む、卵がない……。は、ハンバーグなら!ぎゅ、牛乳が昨日で最後でしたー!?」

「……」

「く、クソッたれあの冒険者め何処までも邪魔しやがりますね!」

「……」

「申し訳ございませんご主人様!急いで買い物に行きます!もし奴に出会った場合は先制的自衛権を行使しますので安心してください!必ず殺します!必殺です!」

「……」

「では行ってまいります!ご主人様と私の関係に口を挟むその愚行、地獄で後悔させてやるー!」

「……」


「………」


「…………ぁん、じぇりか」

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