第4話 質問大会
「好きな食べ物とかあるのか?」
僕は早朝に始まった散歩の帰り道、幽に声をかけた。
「えっ?急な質問だねーもしや、ウチに興味を持ってくれたとか〜?」
もし彼女が普通の人間だったら突然、好きな食べ物を聞くなんておかしくて困惑するに決まっている。もっとマシな質問があったかもしれない…今は自分の質問音痴を笑うしかなかった。
「う〜ん、そうだな…」
「ウチはそうめんが好き!」
彼女は僕のおかしな質問になんの疑問もなくはっきりと答えた。にしても、この年の女子はもっとゴチャゴチャしたものが好きだと思っていた。
「意外だな、僕も好きだ。」
冷たくて、喉越しが良い。夏バテをよく起こす僕にとってはありがたい存在だ。
「わかってくれるか、少年!」
なんだそのキャラは。もしかすると幽は見た目が少女、中身はおばあちゃんかもしれない。
「あのカリカリ感がたまらないよね〜」
カリカリ…揚げたりするのだろうか?
今度やってみよう。
「じゃあ、次ウチの番!」
気づけば勝手に会話の主導権を取られていた。
「そうだね〜なんで人の写真だけが撮れないの?」
コイツはいきなり核心をついてきた。狡猾なやつだ。いや、僕がおかしいだけか。普通は知りたい事を質問するのだから。だけど手が震えてしまうのはなんのきっかけもなく起こった事なんだ。
「それはノーコメント。僕にもわからない。」
僕は自分でも答えられない事に少し罪悪感を覚えた。
「そっかー残念!次、君の番。」
よかった。深堀りされずに済んだ。
なるほど、知りたい事を聞けばいいんだな。なら…
「幽はどうして死んだんだ?」
本当は遺影の事を聞きたかったがそこには触れないでおこう。
「ウチもノーコメント!忘れた〜」
人のこと言えないが肩透かしを食らった気分になった。
まぁ、コイツ場合、不思議の国のアリスのように蝶でも追いかけて穴に落ちてそうだな、と不謹慎に思った。
そういえば蝶でなくうさぎだったか。
そんなこんなで僕が始めた質問大会は続く。
「好きな色はなぁに?」
「「青色」」
「おー!また同じ!」
「好きな芸能人は?」
「あーウチ、テレビ観なかったんだよね〜」
結局、この質問大会は家に着くまで続いた。
「いいね!誰かと喋ったのは久しぶりだから嬉しいーー!」
僕もこんなくだらない会話をするのは久しぶりだった。
幽についてわかったのは僕と同じでそうめんと青色が好きなこと、後は犬派だってこと…
これは僕が悪いのか?
大事な事は何ひとつわからなかった気がする。
質問する練習をしよう、そう思った朝の6時だった。
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