第1話 出会い

 僕は人の写真を撮るのが嫌いだ。いつからか人にカメラを向けるといつも手が震えてしまう。

 嫌いといるよりも出来ないの方が合ってるのかもしれない。それでも写真を撮り続けてしまう。

 これが一種の使命として感じている自分がどこかに存在しているからだろう。

 そんな自分のせいで僕はまだ写真を撮り続けている。


 今日はたまたま見つけたアサガオに狙いを定めた。

 力強く体を支えるように伸びた茎、まるで血管のように葉脈が通った葉、自分はここにいると頭をヒョコっと出した花弁、その全体の魅力が写るを角度を探しシャッターを切った。

 花はいい。人と違ってカメラ目線なんてないし、そもそも目がないからな。


 その帰り、次はどこに行こうかと考えていると大きな入道雲が威張り散らしていた。ふと、カメラを向けシャッターを切る。

 撮った後気づいたが人が写り込んでいた。

 ショートカットの髪に白いワンピース姿の至ってどこにでもいそうな少女だった。

 しかし、おかしな事に写真に写る少女の体が浮いていたのである。

 いやいや。自分はオカルト系の話は信じないたちの人間のはずだ。


 念のため彼女に気付かれないようにもう一度写真を撮った。

 カシャ。

 もう一度言おう、おかしい。

 気のせいだと信じたが結果は変わらなかった。

 そもそも、ショートカットの幽霊なんているのか。そんな事を呑気に考えてじーっと彼女を見ているとバチッと目があった。

 彼女は僕に気づくと本当に幽霊か疑わしいほどいきいきと目を輝かせていた。

「ウチが見えるの!?!!!!」

 そこはありがちな反応だなとツッコミたくなる。

 だが正直、面倒くさそうだったから無視した。

 しかし、そんな僕を気にせず彼女は話を続ける。

「ちょっと!無視しないでよ!見えてるんでしょ!」

 幽霊が僕の視界にまじまじと入ってきた。

「あーッ!この写真ウチが写ってる!かわいい!」

 ちくしょう、見られた。

 どうして幽霊なのにこうもぐいぐい来るのか。

 こんなに来られたのは部活の勧誘以来だ。

 もう観念しよう、僕は口を開いた。

「あの、話しかけないでくれませんか?」

「ちょっと〜第一声がそれはないでしょ!でもでも!見えてるって事ね!やった!」

 ポジティブだな。

 今度は少し身構えて聞いてみる。

「一応聞くけど君、幽霊だよね?」

「うん!もちろんだよ〜」

 意外とあっさり答えられて驚いた。

 この幽霊はうるさくて、写真にはくっきり写るし、ノリが運動部の人だし…。

 体が透けて浮かんでいる事以外はただのうざい人間にしか見えない。

 今も僕の体を通り抜けて遊んでいる。

「まぁ。お互いふざけるのもこれぐらいで本題に入ろう。」

 こいつには僕がふざけて反応しないと思っているらしい。はあ…

「私の遺影を撮って欲しいの。」

 はあ?

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