大文字伝子が行く50-2改

クライングフリーマン

三都市迎撃作戦(後編)

 ======== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 ================

 大文字伝子・・・主人公。翻訳家。EITOアンバサダー。

 大文字学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。

 愛宕(白藤)みちる・・・愛宕の妻。巡査部長。

 物部一朗太・・・伝子の大学の翻訳部の副部長。モールで喫茶店を経営している。

 久保田(渡辺)あつこ警視・・・みちるの警察学校の同期。みちるより4つ年上。警部から昇格。

 橘なぎさ二佐・・・陸自隊員。叔父は副総監と小学校同級生。

 久保田嘉三管理官・・・久保田警部補の叔父。EITO前司令官。

 斉藤理事官・・・EITO理事官。

 金森和子一曹・・・空自からのEITO出向。

 増田はるか3等海尉・・・海自からのEITO出向。

 辰巳一郎・・・物部が経営する、喫茶店アテロゴの従業員。

 天童晃(ひかる)・・・かつて、公民館で伝子と対決した剣士の一人。

 矢田浩一郎・・・天童に同じ。

 松本悦司・・・天童に同じ。

 江角総子・・・伝子の従妹。大阪で探偵をやっている。時々、東京にも出没する。

 南部寅次郎・・・南部興信所所長。江角総子と事実婚(同棲)をしている。

 中津警部補・・・警視庁刑事。

 青山警部補・・・丸髷署生活安全課刑事。愛宕の相棒。

 中山ひかる・・・愛宕のお隣の高校生。推理が得意。

 青木新一・・・Linenを使いこなす高校生。

 中津健二・・・中津警部補(中津刑事)の弟。興信所を経営している。

 大町恵津子一曹・・・陸自からのEITO出向。

 田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。

 馬越友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。

 右門一尉・・・空自からのEITO出向。

 夏目房之助・・・市場リサーチの会社を経営。

 柴田管理官・・・警視庁管理官。

 ジョー・タウ・・・かつて1対1で伝子が倒した、敵側の用心棒。

 ジャック・タウ・・・かつて1対1で伝子が倒した、敵側の用心棒。

 利根川道明・・・元テレビ局コメンテーター。

 依田俊介・・・伝子の大学の翻訳部の後輩。高遠学と同学年。あだ名は「ヨーダ」。名付けたのは伝子。宅配便ドライバーをしている。

 福本英二・・・伝子の大学の翻訳部の後輩。高遠学と同学年。大学は中退して演劇の道に進む。

 南原龍之介・・・伝子の高校のコーラス部の後輩。高校の国語教師

 山城順・・・伝子の中学の後輩。愛宕と同窓生。

 服部源一郎・・・南原と同様、伝子の高校のコーラス部後輩。

 松下宗一郎・・・福本の元劇団仲間。

 本田幸之助・・・福本の元劇団仲間。

 豊田哲夫・・・福本の劇団仲間。

 福本(鈴木)祥子・・・福本の妻。福本の劇団の看板女優。

 小田慶子・・・やすらぎほのかホテル東京副支配人。依田と交際している。

 南原蘭・・・南原の妹。美容室に勤めている。

 草薙あきら・・・EITOの警察官チーム。特別事務官。ホワイトハッカーの異名を持つ。

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 天童邸からの帰り道。

 車の中の久保田警部補とあつこ。「うまく行ったわね。皆、おねえさまの魅力の賜物ね、まこちゃん。」「大文字さんには、人をリードする素質がある。だから、皆集まってくる。ねえ、あっちゃん。僕たちの子供の名前さ。大文字さんに付けて貰おうか。」「いいとも!」二人は爆笑した。

 同じく午前10時。利根川邸。

「ああ。あの時の。僕はもうテレビマンじゃない。しがないコラムニストだ。知ってるでしょ。」と、利根川は青山警部補に言った。

「元テレビマンを見込んでの話です。守秘義務を守って頂ければ、全てお話します。」青山警部補と愛宕は、いつかの非礼を詫びた上で、事情を話した。

「大変じゃないですか。そんなこと僕に話しても、お手伝いすること、あります?」

「実は、テレビマンにスパイがいると睨んでいるんです。利根川さんに『推理』して欲しいのは、どういう立場の人間なら、スパイになり得るかということと、観客避難をさせるとしたら、どういう手順がいいかということです。」「ううむ。」利根川は考え込んでしまった。

 午後1時半。新幹線の車中。

「ここ、空いてますか?」と総子に声をかけてきた男性がいた。「ええ?帰りもウチにナンパ?」「ははは。お互い、とんぼ返りのようですね。デートは叶わなかったけど、せめて車中はおしゃべりしましょうよ。」

 午後4時。南部興信所。

「浮気の調査員が浮気してたんか。」「アホ。ウチは、眼の前のジジイが好きなんや。イケメンでも浮気なんかするかい!」

「それで、従姉にばれてるんやな。人手がいる、ってメールに書いてたな。」

「うん。敵は何らかのパニックを起こそうとする筈やから、何とか避難誘導の段取り付けてくれへんかって、言うてたわ。」

「それで、東栄映画の社長に頼んで、エキストラ20人手配して貰っといた。時間聞いてへんけど、イベントの9時まででええんか?」「いや、8時までに行って、紛れて欲しい、って。」「それ先に、言わんかい。連絡しておく。お前は準備して、先に会場入りしい。」

「所長。中津さんから電話入ってますけど。」と、調査員の佐藤が勢いよく入って来た。

「はあ?電話回せ。」電話は中津健二からだった。

「ああ、いつもお世話になります。はい。天童さん。はい。言うときます。」

 電話を切ると、南部は総子に「中津さんからな、天童さん言う人と現地で落ち合え、と。お前がメダル投げて助けた人やそうや。8時に待ってるって。」「了解。ほな。」

 総子はバタバタと出て行った。

 同じく午後4時。伝子のマンション。

「学。なぎさ達は?」「今出発しました。」

「新しいワンダーウーマン達は?」「EITOで準備中です。」「福本達は?」「道が混むかも知れないから、6時には現地入りするそうです。」

「ひかる君と青木君は?」「元々チケットを購入してあったそうです。青木君はLinenのオフ会を兼ねて集まることになっていたそうで、仲間共々協力する、と言っていました。8時には入場ですが、何かあったら連絡する、と言っていました。」「そうか。」

「渡さんから、連絡がありました。今回の前線部隊に参加するそうです。草薙さんはEITOベースで後方支援です。それと、理事官から、各地EITOのオスプレイは待機するが、アメリカ空軍の助っ人オスプレイも各地で待機するそうです。」

「ご苦労さん。」「まだ、あります。海自の仁礼海将から伝言です。増田は任せた。我々は、打ち合わせ通り、仙石諸島の警戒を強化する、と。それと、空自の前田空将から、金森を頼む、日本海沖で、ミサイルを警戒する、と。」

「気を引き締めないと、な。」と伝子が言うと、いつの間にか入って来た藤井が、おにぎりを差し出した。

「少し遅いおやつ。少し早い夕食。腹が減ってはイクサが出来ぬ、でしょ。」

 高遠は、お茶を用意した。3人がおにぎりを頬張っていると、EITO用のPCが起動した。理事官が画面に出た。

「イクサの前の・・・かな。大文字君。天童さんを乗せたオスプレイは大阪に出発した。天童さんと橘一佐を降ろした後は、大阪会場の『立売堀ホール』の上空で米軍のオスプレイと共に待機する。名古屋会場の『みゃーみゃープラザ』には、今、渡辺警視と白藤巡査部長、増田三等海尉、金森一等空曹、そして、剣士の二人が到着した。すぐ隣にホテルがあり、そこで着替えるそうだ。」

「東京勢もおおよそ準備は進行しています。利根川氏の根回しで、葡萄館の一室を借りています。」

「ああ。もう一つ追加情報だ。守備チームの指揮は愛宕警部補が採るが、丸髷署署長がサポートするそうだ。心強いね。」と、理事官は笑った。画面は消えた。

「今日も、台所から出発するの?」と藤井が尋ねると、「いえ。今日はバイクで向かいます。白バイ隊の護衛付きで。」と伝子は笑った。

「僕が頼み込んだんです。総指揮官が事故っちゃいけないし・・・。」「学は会場に向かう途中で狙撃されるんじゃないかって心配しているんです。」二人の会話に割り込んで来た人物がいた。

 いつの間にか来ていた、大文字綾子だった。「はい。お守り。神頼みはしたくなかったし、伝子が戦場に向かうのは初めてじゃないけどね。」綾子もおにぎりを頬張った。

 午後6時。白バイ隊の『お迎え』が来た。

「お初にお目にかかります、大文字さん、高遠さん。早乙女隊長の後を継いで隊長をしています、工藤由香です。お迎えに上がりました。」

 伝子が3人の白バイ隊員と出ようとした時、高遠が『火打ち石』を打った。「行ってらっしゃい。」

「行ってきます。」珍しく涙を浮かべて伝子は出ていった。

「学さん。1000点の婿殿ね。」と綾子が言い、藤井が頷いた。

 午後7時。

 高速道路上で、伝子のバイクを狙ってくるバイクが3台あった。後方から近づいて来た工藤達は、あおり運転で緊急逮捕し、手錠をガードレールに括り付け、後方支援に任せて、会場に向かった。

 バイクを走らせながら、伝子は考えていた。東京会場では恐らく爆発物で脅して来るだろう。大阪会場ではどうだろう?また、名古屋会場では?大阪会場では、なぎさ、天童、そして、総子がいる。名古屋会場では、『妹たち』と矢田、松本がいる。東京会場では、伝子以外は新人だ。私が全ての指揮を執れればいいのだが、そうはいかない。運を天に任せるしかない。大阪と名古屋は彼らの判断に任せよう。

 午後8時。

 葡萄館近くの田んぼの陰で、伝子は女性用スーツに着替えた。白バイ隊が囲ってくれているので、誰にも見られない。伝子が着替え終わったら、工藤が「では、我々は守備チームに合流します。」と言い、白バイは闇に消えた。

 裏口の警備員に「協同メイクの応援要員です。」と身分証を見せた。「ご苦労様です。メイクさんの控え室はA-66です。突き当たり左です。」

 伝子はA-66に入る振りをして、実際は入らなかった。先に入っていた早乙女愛が伝子を待っていた。「私はワンダーウーマンにならなくていいんですか?」「ごめん。衣装が間に合わなくて。舞台袖で、EITOとの連絡係をして。」と言いながら、自分の着替えるメイク室に向かった。

 同じく午後8時。立売堀ホールの前。

 天童と総子は再会した。

「あの時はありがとう、お嬢さん。」「始まってから入る方がいいわね。」と挨拶を交わした二人の前に、ワンダーウーマン姿のなぎさがいた。「その通り。始まったら誰も気にも留めない。」

 同じく午後8時。みゃーみゃープラザ前。

「いいですか。剣士にせよ、ワンダーウーマンにせよ、目立つので、始まってから何食わぬ顔で堂々と入りましょう。」とあつこが言うと、「入館チェックは?」と矢田が言った。「こういうイベントって、始まったら受付はないも同じ。フリーパスなんですよ。」と、みちるが言った。

 午後9時。東京の会場。

 世紀のチャリティー募金番組が始まった。MC以下、赤いチャリティTシャツを着ている。芸能人をMCの大北が次々紹介している。大北が大阪会場を呼び出した。

「では、ここで、大阪会場の様子を見せて下さい。大阪会場の吉永さーん。」

 大阪会場には画像が繋がらず、大きなスクリーンには何も映っていなかった。

 大阪会場。

 チャリティスタッフの一人が、MCの吉永にナイフをあてがい、ステージに何十人もの黒い覆面を被った男達が登場した。

 会場内はパニックになり、観客は逃げ出した。東栄映画のエキストラ達が、会場スタッフを押しのけて、避難誘導を始めた。会場スタッフは何が起ったか分からず、呆然としている。吉永にナイフをあてがっていた男が叫んだ。「おい。お前ら。こいつの命が惜しくないのか?」

 会場袖で見ていた、なぎさが呟いた。「間抜けな犯人で良かった。天童さん、総子ちゃん。行くよ!」となぎさは声をかけた。

 東京会場。

 MCの大北が首を傾げている。「変ですねえ。繋がらないなんて。では、名古屋会場に繋いで貰いましょう。名古屋会場の竹下さーん。」スクリーンに名古屋会場は映らなかった。

 名古屋会場。

 MCの竹下が舞台中央に何故か白い布を被せたワゴンがあるのに気づき、白い布を取った。「きゃー。時限爆弾だわ。」と若い女の子が叫んだ。直ちに観客は我先にと逃げ出した。観客に紛れていた海自の自衛隊員は、速やかに避難誘導をした。

 ワンダーウーマン姿のあつことみちるは直ちに、確認に走った。「あまり時間がないわ。」と、あつこは言い、DDバッジを押した。二人で時限爆弾を運ぼうとした時、黒い覆面を被った男達がステージに上がってきた。「我々が処理します。」とワンダーウーマン姿の増田と金森が受け取り、走った。降りてきたオスプレイに近寄る二人を妨害しようとする男達にあつことみちるは敢然と立ち向かった。

 東京会場。

 困惑しているMCの大北の前に、舞台に上がっていたボランティアスタッフの一人が現れ、マイクを奪った。「無理無理。今、大阪会場も名古屋会場も我々の仲間が押さえ込んでいるんでね。」「押さえ込んでいる、とはどういうことかな?」4人のワンダーウーマン姿の女性の一人が尋ねた。

「じゃあ、実力を見せてやるよ。」200人以上の黒い覆面の男達がステージに上がってきた。「お前ら、全員人質だ。一人でも逆らうや・・・。」リーダーの男が言い終わらない内に、「今の内に逃げて下さい。係員の誘導に従って下さい。」と、早乙女愛が無線を通じてスピーカーに流した。

 逃げる観客の中で、「これ、イベントだから、みんな協力してください。」と青木と仲間達、ひかる、依田、福本、松下、本田、豊田、南原、服部、山城が言いながら誘導を始めた。

「くそう。やっちまえ。」とリーダーが言うと、地下室で着替え、別方向からやって来た、ワンダーウーマン姿の伝子が「やっつけられるのはお前らだよ。」と言った。

 舞台袖の陰で、早乙女は連絡した。「照明、お願いします。」

 ステージに向かって、田んぼ道の中から大きなスポットライトが幾つも点灯した。自動の機械を操縦していたのは、渡だった。

 観客を追う重装備の男達に伝子達はこしょう弾を投げた。そして、乱闘になった。

「大文字。借りを返しに来たぜ。」「大文字。借りを返しに来たぜ。」二人とも、かつて伝子と死闘をして負けた、中国人の兄弟だった。

「助かる、タウ兄弟。」兄の方は三節棍を持ち、弟はヌンチャクを持った。伝子はトンファーだった。三人は改めて三方に分かれて闘い始めた。

 会場のそばの田んぼ。双眼鏡で闘いを見守る人物がいた。その人物の肩をポンポンと叩いたのは青山警部補だった。

「やはり黒幕さんは、暗い所が好きなようですね。」

 愛宕が手錠をかけた。「警官隊の準備を。」と、青山は愛宕に指示した。

「では、話を伺いましょうか。プロデューサーの新井さん。あなたが今回の『死の商人』ですね。情報を流していた人物も特定しましたよ。」

 大阪会場。

 闘いながら、なぎさは総子に尋ねた。「その技、何処で覚えた?」「俺が教えたんや。」といつの間にかやって来た、南部が言った。「師匠。」と、天童が近づいて来た。

「師匠。これを。」二刀流で闘っていた天童はチタン合金製の木刀を南部に渡した。

 二人は、すぐに闘いに参戦した。最初に。なぎさと総子が投げた、こしょう弾のお陰で、敵の銃は発射不能となり、敵は棍棒で闘っていた。

 名古屋会場。

 こちらも、あつことみちるが投げた、こしょう弾の効力で、敵の銃は使用不能となり、敵は棍棒で闘っていた。

 オスプレイ機内。「解除成功。会場に戻って下さい。」と増田がパイロットに言った。

 東京会場。こちらの敵は何故か全員ナイフで闘っていた。後から来た敵の一人が、ステージに飛び込み、ある箱を開け、スイッチを押した。時限爆弾ではない。ミサイル誘導装置だ。その男は高笑いをした。

 伝子は鏡を男に向けた。男が怯んだ好きに、伝子はDDバッジを押し、長波ホイッスルを吹いた。

 東京会場から約100m離れた公園。長波ホイッスルをレシーバーで聞いた中津健二は、中津警部補に合図を送った。

 その合図を受けて、中津警部補は、ドローン操縦大会のMCとして、参加者に呼びかけた。「さあ。チャリティー会場に向けて、ドローンを飛ばして下さい。今、会場では特別企画イベントが進行中です。一番長く飛行出来た操縦者には賞金、賞品が出ます。」

 操縦者達は、こぞって、自慢の腕をみせるべくドローンを操縦した。

 東京会場。、ドローンが多数飛来し、上空を旋回し始めた。

 仙石諸島。護衛艦。仁礼海将が艦長に命じた。「挨拶をしてやれ。」

 数分後。護衛艦から花火が上がった。島に実効支配をしようとしていた、那珂国の艦隊は引き上げて行った。

 青森。青函トンネル付近。函館の南方を通り過ぎようとしているオトロシアの船に向かって、50機の零戦風戦闘機が並んだ。オトロシアの船はゆっくりと引き返して行った。

 防衛省。政務官執務室。副総監が部下を連れて訪れた。

「奥村政務官。国家反逆罪で逮捕します。出光警視。」公安の出光は、ゆっくりと、奥村に手錠をかけた。

 名古屋会場。

 あつことみちるの元に増田と金森が帰ってきた。「お待たせしました、隊長。」4人のワンダーウーマンは、それぞれの武器で、コンビネーションで闘った。

 大阪会場。「お嬢ちゃん。メダルなくても、腕がいいから闘えるじゃないか。」と天童が言った。「おおきに。旦那の仕込みがいいからな。」「誰のことや?」「知らん。」二人の会話に、「師匠の妻が師匠の弟子か。面白い。」とまた天童は感心した。

「いつの間にか、東栄映画のエキストラさんも大掃除に手伝ってくれているわ。」となぎさが言った。

 東京会場。伝子の足元に、1個のカプセルが投げ込まれた。伝子は遠目に、筒井の顔を見た気がした。カプセルを開けると、紫の布が入っていた。伝子はミサイル誘導装置にその布をかけた。早乙女はEITOに連絡した。「遮蔽装置が間に合いました。」

 ドローンは次々にどこかへと消えて行った。

 時刻は午後11時になっていた。

 大町達が伝子の元にやって来た。「隊長。終わりました。」

 ステージに倒れている者達は、愛宕の指揮の下、警官隊が逮捕連行して行った。

 久保田管理官がやって来た。「大阪会場も名古屋会場も『せん滅』した、と連絡が入ったよ。こいつらもお役御免だ。」と側にいるジョー・タウとジャック・タウを指した。

「大文字は『ぎきょうだい』が多いな。俺らも、『ぎきょうだい』にしてくれよ。」とジョーが言った。「断る。女子限定だ。ただ、お前らは友人だ。」

 笑いながら、兄弟は久保田管理官と去って行った。

 MCの大北と利根川がやって来た。「後は適当に誤魔化しておきます。任せて下さい。」

「無理を言って申し訳なかった。ありがとう、利根川さん。」伝子達ワンダーウーマンは、利根川がプロデューサーに無断で借りた、地下のメイク室に移動した。

「私だ。」と伝子がノックしながら言うと、慶子、祥子、蘭が出てきた。

「終わったの?先輩。」「ああ。終わった。」蘭が伝子に抱きついた。「良かった。」

 自衛隊4人は、それぞれ手分けして、蘭達を送って帰った。伝子は早乙女にバイクの運転を任せ、帰宅した。到着して、「早乙女さんはどうするの?」と伝子が言うと、「あ。」と早乙女が口を押さえた。「今度返して。」と伝子は言った。

 翌日。午後2時。伝子のマンション。南部と総子がやってきた。いつものメンバーは既に来ていた。

「紹介しよう、みんな。従妹の江角総子だ。ガラガラ仮面でもある。」「ちゃうちゃう、伝子ねえちゃん。ヒョウ柄仮面や。」「どうでもええやないか。南部興信所所長で、夫の南部寅次郎です。よろしくお願いします。お前も頭下げるんや。」

「江角総子、本名、南部総子です。籍入れてへんけど。」

「まだ18歳やから、こいつがハタチになったら、正式に結婚しようって決めて、待ってますねん。」

 二人の会話を聞いていた伝子が首を傾げた。

「18歳?南部さん、結婚待たなくていいですよ。総子は24歳ですから。」と、伝子は南部に言った。

「調べなかったんですか?興信所所長なのに。」と依田が言った。

「準備!!」と伝子は言った。女子は奥の部屋に行った。伝子が総子の耳を掴んで、奥の部屋に向かった。高遠がなぎさを呼び止めた。「一佐。これを。よろしくお願いします。」「ありがとう、高遠さん。」高遠は「手当セット」を渡したのだった。

「恒例の、お仕置きです。南部さん。今日、総子ちゃんはここに泊まって貰いましょう。経験者によると、結構きついらしいですから。」

「了解した。高遠さん、これからもよろしくお願いします。病院に行って、中津所長に会ってから、新幹線で帰ります。大文字さんによろしくお伝え下さい。」

 奥の部屋では、総子がわめいていた。南部は帰って行った。

「俺たちも帰るか。」男子達は、物部の提案通り、帰って行った。

 高遠は、ヘッドホンを耳に着け、洗濯物の片付けを始めた。

 騒動は長く続いた。

 ―完―

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