自由

私は死が怖かった

同時に私の生は軽かった

私にとって私はとてもとても軽かった


危ないことを多少はやった

『それで死ぬはずはない』という思い上がりが半分

『なにも考えていない』『どうなってもいいか』が残り半分


その軽さが,大地の重力から解放してくれているように感じていた

自由にどこへでもどこまでもどのようにでも行ける気がしていた


子をもち,失うことの恐怖を覚えた

そして自分が死ぬことで子の幸せが欠損してしまうことの心配が身の奥からじくじくと滲み出てきた

「私が居ないほうが幸せなのでは?」「私がいなくてもそれほど変わらないのでは?」を「私がいなくなると良くないこともあるのでは?」という強迫観念が少しずつ 少しずつ私を塗りつぶしていく

じわり,じわりと身体に重力を覚え,手に届くかと思われた空を遠く感じる


唐突に気がつく


自分を軽んじている人間は自由に飛び回ってはいけないのだと

自分を大事にし,その上でなお,自由でいられる人間でなければ,空をわたる資格はないのだと

重力を感じ,それを上回る飛翔力を持つことこそが,真の自由なのだと


無免許運転(無資格運転?)をしていた咎を許してもらえるのだろうか

今からでも遅くはないのだろうか

生まれたときからその資格はないのかもしれないけれど


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