第67話

 クリスマス、大晦日おおみそか、正月と、あっという間に時間が経ち、一月の終わりには地獄の試験がやってきた。無事に試験も終わると、いよいよ春休みである。


 ──秋斗あきと春樹はるきのぞみはいつものように三人でお昼ごはんを食べていた。

「ねえねえ、佐伯さえきさんって四年だよね? もう卒業じゃん!」

 あわてたように話し出した春樹に、「そうだな」と秋斗はあっさり頷く。

「じゃあ探偵サークルももう終わりかー」

 空を見上げながら呟く秋斗に対し、春樹は目を見開き、秋斗に詰め寄った。

「なに言ってんの秋斗、俺ら三人が引き継ぎしないとダメだよ!」


 秋斗と希は顔を見合わせ、「ええ……」と目を細めた。希も秋斗同様、佐伯の卒業とともに探偵サークルもなくなると思っていたのだ。元々大学公認サークルではないし、秋斗たち三人では佐伯のようななんでも屋はつとまらない。


 そんな会話をしていると、探偵サークルのグループメッセージに噂の佐伯から連絡が入った。なんとも、オー・ハライ探偵事務所に来た依頼人をサークルで引き受けて欲しいと宗介そうすけから頼まれたのだそうだ。

 詳しい話を聞くため、秋斗たちはお昼ごはんを食べ終わったあと、宗介の探偵事務所に向かった。


 *


「急にごめんね」

 申し訳なさそうに眉を八の字にした宗介。彼の横には我らが探偵サークルの会長、佐伯がいた。そして彼女たちの正面には、学ラン姿の男の子がしかめっ面でソファに座っている。


 ……色がないから幽霊か。

 秋斗は幽霊の少年をながめてしまう。


 幽霊がえていない春樹だけがソファに腰をおろした。


「最近依頼が立て込んでてね……茉鈴まりんもちょうど卒業だし、最後のサークル活動として、この依頼受けてくれないかなって」

 そう話す宗介の横で、佐伯は学ラン姿の男の子をじっと見つめながら口を開いた。

「最後の依頼者が幽霊ねぇ」


 関心したように呟く佐伯の言葉に、春樹は目を輝かせた。

「依頼者が幽霊……! ってことは、ここにその依頼者さんいるんですか!?」

「うん、そこに座ってるよ。生前の両親に会いたいんだって」

「生前の両親……」

 秋斗は思わず言葉を繰り返した。幽霊の少年は中学生くらいに見えるが、死因はなんなのだろう。


 宗介が続きを話そうとするが、彼の別の依頼者が来てしまった。

 話すスペースがないため、後輩三人と依頼者の幽霊は佐伯に連れられ、事務所を出て近くの公園に向かった。

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