第61話
「犯人の居場所がわかるんですか?」
周辺の匂いを
秋斗と希はどう説明すればいいかわからず、
秋斗と希、その後ろに原田と如月が続き、四人がサークル
「もしもし秋斗? 今暇?」
電話の相手はサークルの手伝いで大忙し中なはずの
「いや、今ちょうど依頼受けてる」
「えぇ~希と二人でやってる感じ?」
秋斗はスマホで話しながら隣の希を
「そ、だから俺らは今忙しい」
「な~んだ。せっかく今から男装女装コンテストに出るのに……」
「は?」
男装女装コンテスト?
いや、コンテスト自体は学園祭の企画でやるのを知っているが。
「出るのか? 春樹が?」
「うん! ばっちりメイクもして超美人になってるから二人にも見てほしかったんだけどな」
電話越しに肩を落とす春樹が目に浮かんだ。
春樹の女装か、ちょっと見てみたいかもしれない。
「じゃあ依頼終わったら集合するか?」
「え、やった! うわ、もう行かなきゃだからまたあとで。希にもよろしく言っといて!」
電話を終えると、希はすかさず「春樹、なにに出るの?」と小首を傾げた。
「女装コンだってさ」
希は数回瞬きをした。
「え、女装?」
「そ」
「うわー、どんな感じなんだろ。春樹顔可愛いからなぁ」
春樹の女装姿を想像しているのか、希は腕を組みながら空を見上げる。秋斗も同じように脳内で彼の女装姿を想像していると、ワンがピタッと立ち止まってこちらを振り返った。
たどりついたのはサークル棟二階。扉には『ロックバンドサークル』と書かれた貼り紙がしてあった。どうやら犯人は原田の記憶通り、バンドサークルの人だったらしい。
さすがに扉の前に突っ立って話すのは犯人に気づかれる可能性があるため、秋斗たちは一旦その場を離れ、踊り場に移動した。
「ロックバンドサークルの部屋に犯人がいるみたいです」
秋斗が小声で原田と如月に告げる。
「ここからどうする?」
希は秋斗に
「うーん、ファンを
秋斗が思いつきを言葉にすると、一番初めに如月が反応した。
「いいですね、それ。さっきステージで見て、お話したいです、みたいな感じかな」
「それだと、私が行くってことになる?」
如月の提案に原田は自分を指さしたが、希が首を振った。
「いえ、原田さんのことをハンドメイドサークルのブースで見てたとすると、警戒されるかもしれません」
「ああ……そっか、可能性はありますね……じゃあ……」
原田が顎に手を当て、希をじっと見つめた。秋斗と如月もそれにつられるように希を見る。
希は居心地悪そうにそっぽを向いたあと、観念したのか大きく息を吐き出した。
「……私が行きます」
本当はこんな役したくないだろう希は、秋斗の肩に力強く手を置き、目を細めた。
「なんかおごってよね」
「はいはい、わかってるよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます