第58話
「依頼内容はなんだ? 手短に頼む」
「サークル仲間の財布が盗まれたんです……」
すると、佐伯は「なるほど」と
「少々お待ちを」
と、男性二人組に言い放ち、床に置いたリュックの中から長方形の木箱を取り出す。それを秋斗に投げ渡した。急に投げられた箱に驚きつつも、秋斗はしっかりとキャッチし、
箱の中には数枚のお
「
「え、は? これはどうすんですか?」
ムチャぶりはいつものことだが、幽霊案件でもないし、このお札は一体なにに使うのだろう。秋斗は思わず立ち上がって、箱を
佐伯は
「犯人の腹にそれを貼れ。そうすると、お
ポンポンと自分の腹を叩きながら、佐伯は「
お馴染みのあれ。
秋斗と希は遠い目をして苦笑した。お馴染みのあれ、とはきっと、夏休み前に試験問題を教えて欲しいと依頼してきた
佐伯は意外と用意
「まあ、やるしかないよな」
「だね」
なんだかんだ依頼をこなしてきている二人は顔を見合わせ、肩をすくめた。
ここではガヤガヤしていて話を聞くにきけない。
「詳しい話を教えてもらえますか?」
希が
「私、ハンドメイドサークルに入っていて、学園祭でもブースを出しているんです。財布を作った子がいたんですけど、販売しているものと色違いなんです、って話をお客さんにしていたら、近くにいた別のお客さんがその子の財布を見せて欲しいって言って……手にした途端、そのまま走って逃げたんです」
秋斗と希は考えるように同時に視線を下げた。秋斗が先に顔を上げる。
「それって何時ごろの話ですか?」
「十五分くらい前です」
スマホで時刻を確認しながら原田が
「あ、ちなみにそれって一般来場者ですか?」と希。
「いえ、リストバンドしていなかったので、在校生だと思います。それにたぶん……バンドサークルの人な気が……」
犯人の顔を思い出そうと頭をひねる原田。
この大学にはバンドサークルと一口にいっても様々な種類がある。洋楽を中心に演奏するサークル、ポップスを中心に演奏するサークル、オリジナルソングを作って
原田はたまたまそこのステージで見たドラムの男性と犯人が似ていたと話す。
秋斗はスマホで大学のサークル紹介ページを開いた。サークル会員数が
秋斗はスマホの画面を開いたまま、原田に
「外見の特徴とかって覚えてますか?」
彼女はうーんと首を
「グレーのフード付きパーカー着てました……えっと髪の毛は肩につかないくらいの黒髪」
「わかりました。じゃあ今度は被害者のところに行きましょうか」
――三人が立ち上がって休憩室を出ると、待っていましたと言わんばかりにおすわりをした犬の幽霊、ワンがいた。
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